iDeCoとNISAは始めたけれど、「これだけじゃ足りない気がする」と感じている方は少なくないと思います。中古アパート投資という言葉は耳にしたことがあっても、株やREITと何が違うのか、自分に向いているのかどうか、整理できないまま時間が経っている——そういうケースが多い印象です。今回は優劣をつけるのではなく、それぞれの向き不向きを並べて考えてみます。
「利回り何%」という数字、資産クラスによって中身がまるで違う
定期預金は元本保証の代わりに現在0.1〜0.3%前後。株は配当利回りだけ見ると2〜4%程度のものが多いですが、値上がり益(キャピタルゲイン)が収益の主役という性格があります。REITは不動産賃料を証券化したもので、分配金利回りは3〜5%程度が目安になることが多いです。
中古アパートは物件や立地によって幅がありますが、表面利回り8〜12%という数字が市場に出回っているのは事実です。ただ、私がはじめてこの数字を見たとき、管理費・固定資産税・修繕積立を引いた「ネット利回り」ではないことに気づかず、収支計算を楽観的に見積もりすぎた経験があります。表面利回りからネット利回りへの乖離は物件によって2〜4ポイント前後生じるケースもあるため、「8%」という数字はあくまで出発点として捉えてください。
自分でコントロールできるか、できないか——これが最も本質的な違い
株やREITは、市場全体が下落すれば自分の意思ではどうにもなりません。一方、中古アパートは「家賃を見直す」「リフォームして入居率を上げる」「管理会社を変える」といった手を打つ余地があります。関わり方を自分で選べる点が、不動産投資の大きな特徴です。
ただしそれは裏返すと、「何もしなくていい」わけではないということでもあります。空室リスク・修繕リスク・金利上昇リスクは実在します。REITのようにプロに運用を委ねる手軽さとは対極にある、という認識が必要です。手間をかける代わりに、自分でリターンに介入できる余地を得る——そういう取引だと理解しておくと、後から「こんなはずじゃなかった」が減ると思っています。
不動産だけ税の仕組みが違う——「減価償却」は数字で理解すると腑に落ちる
株の配当や売却益は分離課税(約20%)でシンプルですが、不動産所得は給与所得と合算される総合課税です。一見不利に聞こえますが、「減価償却」という仕組みが効いてきます。
たとえばモデルケースとして、年収550万円の会社員が築25年の木造アパートを2,000万円で購入した場合を想定します。木造の法定耐用年数は22年のため、築25年の中古物件は残存耐用年数が短く、建物部分を短期間で費用計上できるケースがあります。帳簿上は赤字になっても実際の現金は出ていかないため、給与所得と損益通算することで所得税・住民税が軽減される可能性があります。ただし効果の大きさは物件の築年数・構造・購入価格によって大きく変わるため、必ず税理士への確認を先に行うことをお勧めします。
中古アパートに向いている人、向いていない人
合いやすいのはこういう志向の方
節税と副収入の両方を同時に追いたい方。管理会社とのやり取りや月次収支の確認に多少関わることを苦にしない方。融資レバレッジを使った資産形成に興味がある方。相談を受けた30代前半の会社員の方の多くは、こうした複数の目的が重なったときに中古アパートを選択肢として真剣に検討し始める印象があります。
合いにくいのはこういう志向の方
元本を絶対に減らしたくない方。手間をかけずに放置したい方。3〜5年以内に利益を確定したい方。こういった方には、REITや投資信託のほうが性格的に合っているケースが多いと思います。どちらが「正解」ではなく、自分のライフスタイルや許容できるリスクとの相性の問題です。
不動産の中でもさらに選択肢が分かれる——中古アパートとトレーラーハウスの違い
不動産投資の中でも、新築アパート・中古アパート・区分マンション・トレーラーハウス活用など、形態によって性格がかなり異なります。中古アパートは新築より初期コストを抑えられる反面、築年数によっては修繕費が想定外にかさむリスクがあります。
最近では木造2×4構造のトレーラーハウスを宿泊施設として活用する選択肢も出てきました。初期投資の目安は990万円〜のモデルケースもあり、固定資産税や建築確認が不要になる場合もあることから、中古アパートとはコスト構造が異なります。Airbnbなどを通じた民泊運用との相性が良い一方、立地と稼働率管理が収益を大きく左右するため、「安く始められる=リスクが低い」とは必ずしもなりません。自分の資金規模・地域・関わり方に合わせて比較することに意味があります。
「どの軸を優先するか」を一つ決めると、選ぶべき手段が見えてくる
節税効果を重視するのか、手間の少なさを重視するのか、インフレ耐性を重視するのか——この優先順位を一つ決めるだけで、選ぶべき手段はかなり絞られます。利回りの数字だけで比べようとすると、判断を誤りやすいと感じています。
中古アパート投資はすべての人に向くわけではありませんが、「節税」と「実物資産による副収入」を両立したい30代の会社員にとっては、真剣に検討する価値のある選択肢のひとつです。まずは不動産投資専門の税理士や、信頼できる情報源からの資料収集が最初の一歩になるのではないでしょうか。
よくある質問
中古アパート投資は住宅ローンを組む前でも始められますか?
融資の組み方や金融機関の審査方針によって異なりますが、投資用ローンの借入総額が増えることで、将来の住宅ローン審査が厳しくなるケースがあります。「投資用ローンを先に組んだら、住宅購入時に希望額を借りられなかった」という事例は実際に報告されています。住宅取得との優先順位も含めて、FPや金融機関に事前に相談することをお勧めします。
年収550万円でも融資は通りますか?
年収だけで判断されるわけではなく、勤務先・勤続年数・自己資金比率・物件の収益性など、複数の要素が総合的に審査されます。年収550万円でも融資が通るケースはありますが、物件の担保評価や自己資金の割合によって条件が大きく変わります。まずは複数の金融機関の条件を比較することが現実的な第一歩です。
中古アパートとREITは何が一番違うのですか?
最も大きな違いは「流動性」と「コントロール性」です。REITは株式市場でいつでも売買できる流動性の高さが強みですが、個別物件の運営に関与することはできません。中古アパートは売却に数ヶ月単位の時間がかかる一方、家賃設定や管理方針など運営に自分の判断を反映できます。「手軽さを取るかコントロールを取るか」という性格の違いだと理解すると、比較しやすくなります。