区分マンションもアパートも、ある程度安定してきた。次は規模拡大か、別アセットか——そんな岐路に立つ方ほど、「土地活用」という選択肢が急に気になり始めることがあります。ただ、数字に厳しい投資家ほど「利回りの定義がアセットごとにバラバラすぎて、比較しづらい」と感じているのではないでしょうか。今回はその比較軸を整理します。

「表面利回り8%」と「分配金利回り4%」は、そもそも別の計算式を使っている

改めて確認させてください。アパート・マンションの「表面利回り」は年間家賃収入÷物件価格。REITの「分配金利回り」は運用後の分配金÷投資口価格。定期預金の「金利」は元本に対する利息率。計算構造が異なるため、数字だけ並べて「どれが高い」と判断するのは危うい比較です。

たとえば表面利回り8%のアパートでも、空室・修繕・管理費を差し引いた実質利回りが4〜5%に落ちるケースは珍しくありません。比較するなら「実質手残り」ベースに揃えることが先決です。この前提を踏まえた上で、各アセットを並べてみます。

余談ですが、筆者が以前モデルケースの試算をアセット横断で並べようとしたとき、「表面利回り」「実質利回り」「税引き後CF」「自己資金利回り」の4種類が混在していることに気づかず、一度まったく的外れな比較表を作ってしまいました。定義を揃えるだけで、見えてくる景色はかなり変わります。

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実質手残りベースで4アセットを横に並べると

アパート・区分マンション:実質4〜6%、ただし修繕コストは年々重くなる

既にお持ちの方はご承知の通り、築浅で管理状態の良い物件は実質利回り4〜6%程度が現実的なラインです(モデルケース)。融資が引きやすく、担保評価も出やすい点は強みです。一方、建物の経年劣化に伴う修繕コストと金利上昇リスクは年々無視しにくくなっており、複数棟になると管理コストの逓増も体感しやすくなります。

REIT:分配金利回り3〜5%、節税効果は構造上ほぼ見込めない

国内REITの分配金利回りは概ね3〜5%程度(2024年時点の市場水準)。1口数万円から分散でき、流動性は高い。ただし価格変動リスクがあり、実物資産特有の減価償却による節税効果は期待できません。給与所得との損益通算でコストを圧縮する、という使い方は構造上難しいアセットです。

定期預金・現金保有:0.1〜0.3%台、インフレ調整後はマイナスになるケースも

2024年以降、メガバンクの定期金利も若干上昇していますが、それでも0.1〜0.3%台。インフレ率を加味すれば実質リターンがマイナスになるケースがあります。一定額を待機資金として置く意味はありますが、積極的な資産形成の手段としては機能しにくいのが現状です。

トレーラーハウスを使った土地活用:想定10〜20%、ただし前提条件の確認が最重要

木造2×4構造のトレーラーハウスをAirbnb等で運用するPACOのモデルケースでは、想定利回り10〜20%という数字が提示されることがあります。ただしこれは立地・稼働率・運営コスト次第で大きく変わるため、あくまで試算上の参考値です。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって上下します。

Airbnb評価4.8を維持している運用事例も存在しますが、観光需要のある立地かどうか、運営を自分でやるか委託するかで手残りは相当変わります。「高利回り」の数字は、前提条件を丁寧に確認してから判断してください。

向いている人のタイプが、アセットごとにまったく違う

REITは「手間をかけずに分散したいが、不動産に間接的に関わりたい」人向け。アパート・区分は「融資レバレッジを使いつつ安定キャッシュフローを積みたい」人向け。土地活用(宿泊運用型)は「使われていない土地をオペレーションで稼がせたい、一定の管理工数を受け入れられる」人向けです。

既にアパートを1棟持っている40〜50代の方から相談を受けるケースでは、「追加融資の余力がどれだけ残っているか」が次の判断を大きく左右します。融資枠を別アセットに振り向けるのか、同じアパートで積み増すのか——ここは利回りだけでなく、金融機関との関係性や担保評価の話でもあります。

出口を比べると、流動性の差は思った以上に効いてくる

REITと株式は市場で売却できるため流動性は最高水準。アパートは買い手がいれば売却できますが、数ヶ月〜1年以上かかるケースもあります。トレーラーハウスは「移動できる」という特性上、最悪の場合は撤去・移設という形で損切りラインが引ける点が他の不動産と異なります。ただし中古市場は形成途上で、売却によるキャピタルゲインを前提にした計画は立てにくい構造です。

「入口の利回り」だけでなく「出口の選択肢がいくつあるか」を並べると、各アセットの特性がよりクリアに見えてきます。

次の一手を決める前に、まず「利回りの定義」を揃えてみる

表面利回りと実質利回り、税引き前と税引き後、レバレッジあり・なし——これを揃えるだけで、「思ったより既存のアパートが優秀だった」と気づくこともあれば、「別アセットに分散する根拠が数字で出てきた」となることもあります。焦って動くより、試算を丁寧に並べる作業を先にやることをお勧めします。PACOの個別相談では、モデルケースの数字を一緒に確認することも可能です。

よくある質問

土地活用の利回りとアパート経営の利回りは、単純に比較できますか?

計算の前提が異なるため、単純比較には注意が必要です。アパートの利回りは建物価格ベースで計算されることが多く、土地活用(トレーラーハウス等)の場合は設置費用ベースになります。税引き後の実質手残りベースに揃えてから比較するのが適切です。減価償却の取り方や運用コストの含め方によっても数字は変わります。

すでにアパートを持っている場合、追加融資は通りやすいですか?

既存物件の収益状況や担保評価、金融機関との取引実績によって大きく異なります。既存借入の返済比率が高い状態では追加融資の審査が厳しくなる傾向があります。トレーラーハウス投資の場合、動産担保としての評価となるため、通常の不動産担保融資とは審査の枠組み自体が異なるケースがあります。複数の金融機関に事前相談することをお勧めします。

トレーラーハウス投資は出口戦略が弱いと聞きますが、実際はどうですか?

中古トレーラーハウスの流通市場は現時点では成熟していないため、売却によるキャピタルゲインを前提にした計画は立てにくいのが正直なところです。一方で「移設・撤去できる」という特性は、立地を変えて再活用したり、土地オーナーとの契約終了時にリスクを一定限定できるという面があります。出口は「売却益」より「撤退コストの低さ」で評価するアセットだと捉えると、比較の枠組み自体が変わることがあります。