iDeCoとNISAを続けながら「これだけでは老後2,000万円に届かないかもしれない」という感覚、じわじわ出てきていませんか。筆者もかつて証券口座の画面を眺めながら同じことを考え、不動産系の土地活用を調べ始めた時期がありました。ただ、先に「数字の読み方」を整理しておかないと、後から「思っていたのと違う」という話になりやすい。今回はその前提を一緒に確認します。
「利回り10〜20%」と「手元に残る額」の間には、相当な距離がある
不動産投資の広告でよく目にする「想定利回り10〜20%」は、ほとんどの場合、年間賃料収入を初期投資額で割った表面利回りです。ここから管理費・修繕費・保険料・固定資産税を引いた実質利回りは、数ポイント低くなるのが一般的です。
アパート経営であれば、空室率10〜15%を前提に試算するのが現実的とされています。広告では満室想定の数字が並びやすいので、自分で「空室ありバージョン」に引き直す癖をつけておくと後悔が減ります。筆者が仲介の仕事を始めた当初、この作業を怠って「計算が合わない」と感じた案件を何件か経験しました。地味ですが、これが一番大切な作業です。
年収550万円・会社員の場合、数字はどう動くか
具体的なイメージを持ってもらうために、モデルケースの試算を示します。あくまで一例であり、稼働率・立地・借入条件によって上下幅はかなり変わります。
前提条件(モデルケース)
・年収:550万円(給与所得)、独身
・物件:トレーラーハウス1台(初期投資1,200万円と仮定。実際は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により概ね990万〜1,500万円のレンジで変動します)
・運用:Airbnb等の宿泊事業、年間稼働率60%、1泊平均8,000円、6〜8名定員を想定
・融資:700万円借入、金利2.5%・15年返済
年間キャッシュフローのざっくり内訳
年間売上(8,000円×稼働日数219日):約175万円
管理・清掃・プラットフォーム手数料(売上の25〜30%を想定):約45〜52万円
返済額(元利合計):約68万円
固定費・雑費(保険・駐車料等):約10〜15万円
手残り(税引前):約40〜52万円程度
表面利回りで計算すると年間売上175万円÷初期投資1,200万円で約14.6%ですが、諸費用と返済を引いた実質的な手残りベースでは3〜4%台に落ち着くことが想定されます。「10〜20%」という数字と「手元に残るお金」の間には、これだけの距離があります。
節税効果は「もう一本の柱」だが、計算ミスには要注意
年収550万円の会社員の場合、所得税・住民税の実効税率は概ね20〜25%程度です。木造2×4構造のトレーラーハウスは耐用年数が比較的短く設定されるケースがあり、初期に大きな減価償却費を計上できると、給与所得との損益通算による所得圧縮効果が見込まれます。ただし税務署への申告と個人の状況に応じた判断が必要なため、仕組みの概要を理解したうえで税理士に確認する順番が重要です。
筆者自身、最初の確定申告で減価償却の計算を誤り、修正申告を出した経験があります。「節税になると聞いた」だけで突っ走ると、こういうことが起きます。節税効果を収支計画の前提に組み込む前に、必ず専門家に数字を確認してもらってください。
「移設できる」と「稼げる場所に移せる」は別の話
土地活用の中でトレーラーハウスが注目される理由の一つは、建築基準法上の建物に該当しないケースがあることで、土地契約終了時に移設・撤去が比較的しやすい点です。アパートは建物が土地に固定されますが、トレーラーハウスはその点で柔軟性があるケースが多い。移設コストや接続工事のやり直しは発生しますが、「出口がある程度見える」ことは投資判断の材料になります。
PACOの運用事例ではAirbnb評価4.8を維持している物件もあり、宿泊需要が見込める立地ではこの構造が活きてきます。ただし、立地の見極めを誤ると稼働率が大きく落ちるリスクもあります。移設の柔軟性は「リスクをゼロにする手段」ではなく、「出口の選択肢が一つ増える」程度に捉えておくのが現実的です。
次の一歩:今回の計算式を「自分の数字」に置き換えてみる
今回示した試算はモデルケースです。年収・税率・借入額・稼働率がそれぞれ変わると、手残りの数字は大きく動きます。まず自分の年収・借入可能額・候補エリアの宿泊単価を調べ、上記の計算式に当てはめてみてください。「手残りが薄すぎる」と感じたなら、それはそれで正しい判断です。土地活用は向いている人と向いていない状況がある。自分の数字で検証することが、最初の一歩になります。
よくある質問
土地を持っていなくてもトレーラーハウス投資はできますか?
賃借した土地にトレーラーハウスを設置して運用するケースは存在します。ただし土地の賃料が発生するぶん収支に影響が出るため、月々の地代コストを含めた試算が必要です。賃借条件・期間・解約条項の確認は特に重要で、この点を曖昧にしたまま進めると後から収支が合わなくなるケースがあります。
年収550万円の会社員でも融資は通りますか?
融資審査は金融機関・物件・申込者の属性によって異なります。会社員の安定収入は評価されやすい面がある一方、住宅ローンや他の借入がすでにある場合は総量規制の影響を受けることがあります。事前に複数の金融機関に打診し、条件を比較するのが現実的な進め方です。借入条件によっては自己資金を抑えてスタートできるケースも想定されますが、金利や返済期間の違いが手残りに直結するため、複数パターンで試算しておくことをおすすめします。
稼働率60%という前提は現実的ですか?
稼働率は立地・季節・競合物件数・プラットフォームの露出度によって大きく変わります。観光需要のある地方エリアや近隣に宿泊施設が少ない場所では60%を超えるケースもある一方、競合が多い市街地や需要の薄いエリアでは30〜40%台になることもあります。運用開始前に近隣の宿泊施設の稼働状況と単価帯を調べておくことが、試算精度を上げる基本作業です。