区分2戸とアパート1棟。数字をきちんと管理してここまで来た方が、次の一手で立ち止まるのは自然なことだと思います。「さらに同じアセットを積み増すのか、別の選択肢で分散するのか」——この問いに利回りだけで答えを出すのは、少し危ういかもしれません。実際、私自身も一度、表面利回りだけを見て地方区分の追加を検討し、実質利回りと税引後キャッシュフローを試算し直したら「ほぼ横ばい」だったという経験があります。今回は、主な選択肢を横に並べて、それぞれの向き不向きを整理してみます。
「利回り〇〇%」は、そもそも同じ土俵で比べられているか
比較記事によく出てくる「利回り〇〇%」という数字は、定義がバラバラなことがほとんどです。表面利回りなのか実質利回りなのか、税引前なのか税引後なのか、レバレッジをかけた後の話なのか。同じ「8%」という数字でも、前提条件が違えば意味がまったく変わります。比較を始める前に、この軸を揃えることが先決です。
以下の整理では「手元に残るキャッシュフロー」と「元本リスクの性質」を軸に据えています。完全な公平性は難しいですが、少なくともミスリードは避けたいと考えています。
既存アセットを積み増すと、何が変わるのか
区分マンションをもう1〜2戸——融資評価の「使い方」に注意
管理の流れも把握済みで、銀行との交渉も実績がある分、経路は読みやすい選択肢です。ただし、区分を2戸すでに持っている場合、同種のアセットを積み上げることで次の融資条件が変わるケースがあります。都市部の新築区分は表面3〜5%台が多く、管理費・修繕積立金・固定資産税を引くと収支が薄くなりやすいのが現実です。「実質利回りで2%台に落ちた」という相談は、40代の給与所得者の方から複数受けています。
アパートをもう1棟——エリア集中リスクをどう見るか
スケールメリットが出やすく、管理会社との交渉力も上がります。一方で、同一エリアへの集中は地域の需給変動をダイレクトに受けます。地方の築古物件を割安に取得できれば実質利回り8〜10%台を狙えるモデルケースもありますが、出口価格の読みにくさは覚悟が必要です。
株・REIT・定期預金は、何が得意で何が苦手か
REIT——手間ゼロの代わりに、レバレッジと節税は使えない
流動性が高く、少額から分散できます。分配利回りは3〜5%台が中心です。ただし、不動産特有のレバレッジ効果や減価償却を使った所得圧縮は基本的に使えません。2020年3月には主要REITが一時30〜40%程度下落した局面もあり、相場の影響を受けやすい点は把握しておく必要があります。管理の手間を省きたいニーズには合いますが、キャッシュフローを積極的に改善したい局面には向きにくいです。
株式・インデックス投資——節税効果は期待しにくい
長期では資産形成の主力になり得ます。ただし短期〜中期のキャッシュフローを作るという観点では、配当利回り3〜4%程度の銘柄を選ばないと「売らないと使えない」資産になります。減価償却を使った所得圧縮効果は期待できないため、年収800万円前後で節税効果を意識するなら、株式は別の位置づけで組み合わせる方が整理しやすいでしょう。
定期預金・現金保有——「動ける状態」を保つこと自体に意味がある
2024〜2025年の金利上昇局面でメガバンクの定期預金も0.1〜0.2%台には上がってきましたが、実質的なリターンとしては依然として低水準です。ただし不動産投資家として次の物件取得機会を掴む上で、「いつでも動ける現金を持っておく」ことは合理的な選択です。全額を運用に回すより、意図的に一定の現金比率を保つ方がリスク管理として機能するケースがあります。
「土地活用×トレーラーハウス」は、どのアセットに近いのか
遊休地や低稼働地にトレーラーハウスを設置し、Airbnb等で運用するモデルは、既存の区分・アパートとは性質が異なります。初期投資額は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変わりますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(モデルケースであり、条件により上下します)。
稼働率が一定水準を維持できた場合、想定利回りが10〜20%台になるモデルケースも報告されていますが、個人差・立地差が大きく、保証されるものではありません。PACOの木造2×4構造モデルではAirbnbの評価4.8台の運用実績も出ていますが、立地や運用体制によって再現性は変わります。また、建物の減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されるため、年収800万円前後の給与所得との組み合わせで検討されるケースもあります。
一方で、観光需要に依存しやすい立地では空室リスクが高まること、運用に一定の手間がかかること、アパートと比べて融資スキームが標準化されていないことは、正直に伝えておきます。
次の一手、どうやって絞り込むか
「利回りが高いものを選ぶ」という発想だけでは、アセット比較は終わりません。現在の融資余力、節税ニーズ、手間に割ける時間、出口のイメージ——この4つを先に整理してから各アセットに当てはめると、候補は自然と絞られてきます。
手をつけやすいのは、「今持っているアパートと区分の収支を1枚の表に整理し直すこと」です。現状の実質利回りと税引後キャッシュフローを再確認するだけで、次の比較軸が見えてきます。新しいアセットに飛びつく前にこのステップを踏む方が、結果的に判断が速くなります。
よくある質問
トレーラーハウス投資は、アパートと比べて融資が組みにくいのでしょうか?
現状では、アパートのように銀行融資が標準化されているわけではなく、スキームは案件ごとに異なります。自己資金を厚めに用意するケース、事業融資として組むケースなど対応方法はいくつかありますが、アパートローンほど「型通り」にはいきません。融資可能かどうかは個別の資産状況と金融機関の方針によって異なります。
年収800万円のサラリーマンが節税目的でトレーラーハウスを検討する場合、注意点はありますか?
木造建物の減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されますが、その効果は耐用年数・取得価格・個人の所得構成によって変わります。また、減価償却が終わった後の税負担の変化も事前に試算しておく必要があります。税理士との事前相談を経てから判断することをおすすめします。
観光需要がない地方でも成立するのでしょうか?
Airbnb等の短期宿泊需要が乏しいエリアでは、長期滞在や法人需要(工事関係者の宿泊など)を狙ったモデルに切り替えるケースもあります。ただし、エリアの需要特性を事前に調査せずに設置すると、想定稼働率を大きく下回るリスクがあります。立地の見極めは、このアセット選択における最重要変数のひとつです。