「もう一棟アパートを買うのが正直しんどくて、でも何もしないのも怖い」——先日、そんな相談を知人のBさん(38歳・年収800万円)から受けました。区分マンション2戸とアパート1棟を保有する、いわゆる中堅投資家です。数字への感度が高いぶん、次の一手を慎重に測りあぐねていました。以下はBさんの事例をもとにしたモデルケースです。実際の投資判断には個人差があります。

「全部が長期賃貸、全部が固定資産」——この構造に最初に引っかかった

Bさんの保有資産を聞いて、最初に気になったのは「全部が固定資産、全部が長期賃貸」という構造でした。稼働率がブレにくい半面、賃料単価を上げる手が少ない。サラリーマン投資家として融資余力も残り少なく、次のアパートを取得するとなれば自己資金の出し方を相当考える必要があります。

そこでBさんが調べ始めたのが、Airbnb投資、いわゆる民泊投資の領域でした。「利回りの幅が大きすぎて信用できない」と最初は懐疑的でしたが、自分で数字を置いてみることにしたそうです。

稼働率と単価、どちらが「読みやすい」か——Bさんが気づいた非対称性

Bさんが最初に警戒したのは稼働率の変動でした。長期賃貸なら月額賃料はほぼ固定ですが、民泊は曜日・季節・競合物件で大きくブレます。これは正直、その通りです。私自身も過去に稼働率を楽観的に置きすぎて試算をやり直した経験があります。「60%で回る想定が、初年度は実質45%だった」——そういうズレは珍しくありません。

ただ、逆に「コントロールしやすい」側面もあります。Bさんが注目したのは1泊単価の設定自由度です。長期賃貸では賃料は周辺相場に縛られますが、民泊は体験価値・レビュー評価・シーズン設定によって単価を引き上げる余地があります。Airbnbで評価4.8台を維持している物件では、同エリアのビジネスホテルより高い単価でも予約が入るケースが想定されます。

前提を明示した試算(モデルケース)

Bさんと一緒に置いた試算の前提はこうです。「初期投資1,100万円(仕様・立地・付帯工事込みのモデルケース)、1泊単価15,000円、年間稼働率60%」。この条件で試算すると年間売上は約328万円。運営管理費・光熱費・OTA手数料などの諸経費を粗く40〜45%と見ると、手取りは概ね180〜200万円のレンジです。表面利回りに換算すると16〜18%台になりますが、あくまでモデルケースです。稼働率が50%に落ちれば数字は当然変わります。

なお初期投資については、「1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)」とお伝えしたうえで、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下することも併せて説明しました。Bさんの反応は「これは初期値の置き方で全然変わるな」——その通りです。

「撤退できる」という選択肢が、数字に厳しい人ほど刺さる理由

Bさんが最終的に興味を持ったのは、利回りの数字よりも「出口の設計」でした。木造2×4構造のトレーラーハウスを使った民泊物件は、固定資産として土地に定着しない設計のため、立地が合わなければ移設・転用という選択肢が生まれます。アパートなら建て替えや売却しか出口がないところを、「動かす」という発想があること自体、ポートフォリオ上のリスクの質が違うとBさんは言っていました。

融資評価を気にするBさんにとっては、「次の不動産ローン審査に影響しにくいアセット」であることも判断材料のひとつだったようです。もちろん投資判断は個人の財務状況・融資残高・リスク許容度によって異なります。

Bさんが「買う前提で動かない」と決めた、最初の一歩

Bさんはすぐには動きませんでした。まず自分の融資余力と自己資金の上限を銀行に確認し、並行して民泊適法エリアの地図を調べた。それだけです。「物件の話はあとでいい」という順序の置き方は、数字に厳しい投資家らしいと思いました。

Airbnb投資を次の一手に置くかどうかは、利回りの数字だけで決まるものではないはずです。既存ポートフォリオとの組み合わせ、自己資金の使い方、運営に割ける時間——その整理が先です。Bさんの話を聞きながら、改めてそう感じました。

よくある質問

既存の不動産投資と民泊投資を組み合わせるとき、融資への影響は?

トレーラーハウス型の民泊物件は、建築物としての登記が不要なケースがあり、金融機関の不動産担保融資とは異なる資金調達スキームになる場合があります。ただし金融機関の評価は個別の状況により大きく異なります。既存のアパートローン残高や年収倍率の審査に影響が出るケースもあるため、専門家や金融機関への事前確認を強くお勧めします。

稼働率60%という前提は、現実的ですか?

立地・運営品質・競合状況によって幅があります。温泉地・観光地周辺や交通アクセスの良い地方都市では60〜70%台を維持するケースも想定される一方、競合過多のエリアや季節変動の大きい立地では40〜50%台になることもあります。試算では保守・中立・楽観の複数シナリオで感度を確認することをお勧めします。

運営管理は自分でやらないといけないですか?

PACO Stayのような運営管理サービスを利用することで、清掃・チェックイン対応・レビュー管理などをアウトソースする選択肢があります。サラリーマン投資家の場合、管理委託費は手取り収益を圧縮しますが、本業との両立コストとして試算に織り込むのが現実的です。費用感は委託先・物件規模によって異なります。