iDeCoとNISAは動かし始めた。でも、それだけでは老後2,000万円には届かない気がする——そんな感覚を持つ方は少なくありません。民泊投資の利回りをネットで調べると「10〜20%」という数字が並びますが、その前提まで書いてある記事はほとんどありません。今回は試算の「中身」を一緒に開いてみます。
「利回り」は分母が何かで、同じ物件でも3〜5ポイント変わる
民泊投資の利回りを語るとき、まず確認すべきは「表面利回り」と「実質利回り」の違いです。表面利回りは年間の客室収入を初期投資額で割ったもので、コストを一切引いていないため数字だけ見ると高く見えます。
実質利回りはプラットフォーム手数料・清掃費・保険などを差し引いた手取りベースで計算します。同じ物件でも両者は3〜5ポイント以上開くことがあります。「利回り15%」の資料を受け取ったら、まず「表面か実質か」を確認する習慣をつけておくと、判断の精度が上がります。
前提を明示した試算を、一度丁寧に組んでみる
以下はあくまでモデルケースです。物件仕様・立地・運営状況によって実際の数字は大きく異なります。参考値として読んでください。
前提条件
初期投資:1,200万円(木造2×4構造のトレーラーハウス1台、付帯工事・初期備品込み)/1泊単価:15,000円/稼働率:65%(年間237泊)/ローン:なし(フルキャッシュ想定)
年間収支の内訳(モデルケース)
年間売上:15,000円 × 237泊 = 約356万円。Airbnbのホスト手数料3%を引くと約345万円。清掃費(1回3,500円 × 237回)で約83万円、消耗品・アメニティで年間約15万円、プラットフォーム年間費・保険等で約12万円。合計コスト約110万円を差し引いた手残りは年間約235万円となります。
初期投資1,200万円に対して年間235万円の手残りなら、実質利回りは約19.6%という計算です。ただしこれは稼働率65%・フルキャッシュ・清掃を外注した場合のモデルにすぎません。稼働率が50%まで下がると売上は約274万円に落ち、手残りは約164万円、利回りは約13.7%に縮みます。稼働率1ポイントの変動がいかに効くか、数字で見ると実感できます。
減価償却で課税所得を圧縮できるか——「事業性の認定」が先決
年収550万円の会社員が事業として民泊を運営する場合、物件の減価償却費を所得と損益通算できるケースがあります(税務上の扱いは個人の状況や申告方法によって異なるため、必ず税理士に確認してください)。
木造トレーラーハウスは耐用年数4年の動産として扱われる場合があり、初期投資の大部分を短期間で償却できる可能性があります。モデルケースで1,200万円の物件を4年定額償却すると年間300万円の経費計上となり、給与所得と合算した課税所得を圧縮する効果が想定されます。ただし、給与所得との損益通算が認められるかどうかは事業性の認定次第です。節税効果を前提に計画を組む前に、税理士との相談を必ず先に行ってください。
「いい数字」が出たときこそ、崩れるシナリオを先に想像する
筆者が2棟目を始める前、「稼働率70%」で試算を組みました。ところが最初の3か月は40%台で推移し、軌道に乗るまで半年近くかかりました。レビューが積み上がってAirbnb内での露出が安定するまで、稼働率は想定より低くなりがちです。これは見落としていた盲点でした。
先の試算でいえば、稼働率40%の場合、年間売上は約219万円、手残りは約109万円、実質利回りは約9.1%となります。「最悪の前半期」を乗り越えられるキャッシュバッファがあるかどうかが、民泊投資を続けられるかの分水嶺です。利回りの上限より、下限のシナリオを先に計算しておくことをお勧めします。
次の一歩は、試算を「自分の条件」に置き換えること
PACOでは木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した民泊投資(PACO INVEST+PACO Stay)を紹介していますが、初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって異なり、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(あくまでモデルケースであり、個別の条件によって上下します)。
「自分の場合、稼働率○%・単価○円なら手残りはいくらか」を自分の数字で試算してみる——それが民泊投資を検討する上での、最初の具体的な一歩です。数字を動かしてみるだけでも、漠然とした不安はかなり整理されます。焦らず、まず一枚の試算表を作ってみてください。
よくある質問
稼働率65%というのは、現実的な数字ですか?
立地・価格設定・レビュー評価によって大きく変わります。Airbnbでは評価4.5以上の物件が検索上位に表示されやすく、口コミが積み上がった物件では60〜70%台の稼働率を維持しているケースも報告されています。ただし開業初期の3〜6か月は40〜50%台から始まることも多く、あくまでモデルケースとして捉えてください。
会社員のまま民泊投資を始めることはできますか?
住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出を行えば、会社員でも副業として民泊運営が可能なケースがあります。ただし、勤務先の副業規定の確認と確定申告の準備が必要です。清掃や対応を代行業者に委託することで、本業との両立を図っている投資家も多くいます。
トレーラーハウスが「動産」として扱われるとはどういう意味ですか?
一般的な建物は不動産として登記され、木造の法定耐用年数は22年です。一方、トレーラーハウスは車輪付きの移動可能な構造物として「動産」に分類されることがあり、その場合の耐用年数は4年と短くなります。短期間での減価償却が想定される一方、税務上の扱いは個別の仕様や接続方法によって異なります。導入前に必ず税理士に確認してください。