相続で受け継いだ土地を持て余している——そんな相談を、55歳前後の地主の方からいただくことが増えています。固定資産税だけが毎年出ていき、「何かしなければ」と思いつつも動けない。その焦りと慎重さが混在した感覚は、私自身も以前、知人の土地活用に同席して痛感しました。今回は、民泊投資の利回りをめぐる実際の検討プロセスを、モデルケースを交えてお話しします。

「土地はある、でも動けない」——その理由がはっきりした日

先日、知人の田中さん(仮名・56歳)からご相談を受けました。以下は個人が特定されないよう内容を一部変更したモデルケースです。田中さんは父親から引き継いだ郊外の土地を持ち、月2万円ほどの地代収入はあるものの、固定資産税がそれをほぼ食いつぶしている状況でした。

「アパートも考えたけど、融資が通るか分からないし、空室リスクが怖い。民泊というのが利回りいいと聞いたけど、実際どうなの?」——そんな問いかけでした。「民泊投資の利回り」という言葉だけが先行してしまっているケースは非常に多い。私がまずやったのは、数字を語る前に前提条件を一緒に整理することでした。

「利回り10〜20%」という数字が、なぜ人によってこんなに違うのか

民泊投資の利回りとして10〜20%(想定・モデルケース)という数字が語られることがあります。ただしこれは、稼働率・客単価・諸経費・立地条件がすべて好条件に揃った場合の試算であることが多く、エリア差や運営力による個人差は非常に大きい。実は私も当初、こうした数字を額面どおりに受け取ってしまい、稼働率の前提を確認し忘れたまま試算を組んだことがあります。後から閑散期の数字を当てはめると、収支がまるで変わってしまいました。

田中さんの土地は、最寄り駅から車で20分、ただし観光資源のある中山間地に位置していました。このようなケースで核心になるのは「年間を通じた稼働率が何%見込めるか」という一点です。繁忙期だけ埋まっても、オフシーズンに稼働率が30%を切れば、年間収支は一気に圧迫されます。

トレーラーハウスという選択が、なぜ慎重派の地主に響いたのか

田中さんが最終的に興味を持ったのが、木造2×4構造のトレーラーハウスを使った民泊投資でした。理由は大きく2つあります。ひとつは「建物を建てていない」という解釈から、固定資産税の課税対象に含まれないケースがあること(自治体判断によるため要確認)。もうひとつは、撤退のしやすさです。

アパートを建てれば解体に数百万円かかり、ローンも20〜30年続きます。一方でトレーラーハウスは移設・撤去の選択肢があり、土地活用の失敗リスクを一定程度コントロールしやすい構造になっています。「やってみて、だめなら引ける」という感覚が、慎重派の田中さんには響いたようでした。

試算を一緒に組んでみた——出てきた数字と、残った疑問

モデルケースの前提条件:トレーラーハウス1台、初期投資は概ね990万〜1,500万円のレンジ(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動)。Airbnb等での運用を想定し、客単価2万円/泊、年間稼働率55%で試算した場合、年間売上は概ね400万円前後。清掃費・プラットフォーム手数料・固定費等を差し引くと、手残りは年間150〜250万円程度になるケースもあります。ただし前提が変わればこの数字は大きく動きます。

田中さんが「これはいけるかもしれない」と感じた一方で、残った疑問は「繁忙期と閑散期の波をどう平準化するか」でした。Airbnb運営をサポートする事業者と組む選択肢もありますが、事業者間の実力差は当然あります。Airbnb評価4.8という実績を持つ事業者が存在する一方で、どの事業者を選ぶかは数字だけでなく運営体制も含めて慎重に見極める必要があります。

「今すぐ動く」より「動く準備を整える」が先

田中さんへの私のアドバイスは、「まず自治体に土地の建築・設置規制を確認し、稼働率の根拠となる観光需要データを調べてみてください」というものでした。利回りの数字は、その後に初めて意味を持ちます。固定資産税を「コストの垂れ流し」から「収益を動かす動機」に変えるための選択肢として、民泊投資はあり得ます。ただしそれは、土地の特性・立地・資金計画と丁寧に照らし合わせた上での話です。焦らず、でも止まらずに。

よくある質問

郊外の遊休地でも、民泊投資で収益を出せるケースはありますか?

立地によって大きく異なります。都市部でなくても、観光資源や自然環境があるエリアでは一定の集客が見込まれるケースがあります。重要なのは「年間を通じた稼働率の見通し」を先に検討することで、繁忙期だけの試算に引きずられないよう注意が必要です。エリアごとの観光需要データを確認することが出発点になります。

トレーラーハウスの初期費用はどのくらいを想定すればいいですか?

物件の仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって幅があります。モデルケースとして1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されることが多いですが、これはあくまで参考値であり、条件次第で変動します。複数の事業者から見積もりを取って比較することをおすすめします。

相続税対策として民泊投資を検討する場合、何に注意すべきですか?

土地に収益性のある設備等を設置することで、相続税評価額が変わる可能性があります。ただし、トレーラーハウスの取り扱いは税務上・法律上の解釈が自治体や税務署によって異なるケースがあります。必ず税理士・行政書士などの専門家に個別の状況を相談した上でご判断ください。本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘・税務アドバイスではありません。