「NISAもiDeCoも始めたけど、なんか足りない気がするんですよね」——先日、32歳の会社員・Tさん(モデルケース、ご本人特定につながる情報は変更しています)からそんな相談を受けました。老後2,000万円問題を意識してから1年。積み立て投資は始めたものの、毎月の入金額を見るたびに「これで本当に間に合うのか」という不安が拭えないと言います。土地活用という選択肢が浮かんだのは、その会話の途中でした。
毎年6万円だけ払い続けている土地、思い当たりませんか?
Tさんの手元には、祖父から相続した地方の土地が30坪あります。住んでいる東京からは電車で2時間。毎年届く固定資産税の通知を払うだけで、特に何もしていない状態でした。「売るには惜しいし、建物を建てるには資金が足りない。駐車場は近くに競合が多い」——こういう宙ぶらりんな土地、実は珍しくありません。
Tさんの場合、年間の税負担は約6万円。10年続ければ60万円です。建物を建てたわけでも、賃料を得たわけでもない60万円。15年ほど不動産の現場にいた私でも、遊休地の相談ほど「もったいない」と感じる案件はなく、かつ「どうするのが正解か」を即答しにくい案件もありません。最初の相談では、私自身も「まず立地を調べないと何とも言えない」と伝えるだけで終わりました。
「キャンピングカーみたいなやつですか」——トレーラーハウスへの第一印象
Tさんにトレーラーハウスの話を最初にしたとき、正直ピンときていない表情でした。「キャンピングカーみたいなやつですか」と。私自身も最初はまったく同じ反応でした。ただ、木造2×4構造で建てられたPACOのトレーラーハウスは、キャンプ用のそれとは別物です。構造がしっかりしているぶん宿泊用途での満足度も上がりやすく、Airbnb上での評価が4.8を超えている運用実績もあると聞いたのが、私が興味を持ったきっかけでした。
Tさんが特に反応したのは「移動できる」という点です。建築物として土地に定着させないため、原状回復が比較的しやすい。「うまくいかなかったらどうするんですか」という問いへの答えとして、これは心理的なハードルをかなり下げてくれました。
試算してみたら、「置けばすぐ稼げる」ほど単純ではなかった
ここは正直に書きます。Tさんと一緒に簡単な試算をしてみたんですが、思っていたより変数が多い。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって大きく上下します。「990万円から始められる」という数字だけ見て動くと、後から工事費や設備費が積み上がって想定外になりやすい点は、私自身が最初の試算で見落としていた部分です。
Tさんの土地は電車で2時間の地方立地。まず確認すべきは「そこに観光・宿泊需要があるか」でした。周辺に観光スポットがあり、繁忙期を含めて月間稼働率60〜65%が見込める立地と仮定した場合、宿泊単価と稼働率の組み合わせによって月次収益は大きく変わります。「想定利回り10〜20%(モデルケース)」という数字を目にすることがありますが、経費・季節変動・融資返済を加味すると、ケースによって実態はかなり異なります。楽観シナリオと保守シナリオを両方並べてみることが、判断の最低ラインだと思っています。
節税効果は「おまけ」として考えてほしい理由
Tさんが年収550万円という水準だったこともあり、減価償却を活用した所得圧縮効果の話もしました。木造構造物として耐用年数が短く設定されるケースでは、初期に大きく経費計上できる可能性があります。ただし「節税のために投資する」ではなく、「事業として成り立つ投資をしたら、税の面でも恩恵があった」という順番で考えてほしいとお伝えしました。税効果だけを目的にした判断は、事業の実態とズレが生じやすくなります。
Tさんが「今すぐやります」と言わなかった、それで良かったと思う理由
相談の最後、Tさんは「もう少し立地のことを調べてみます」と言って帰りました。土地活用は、焦って動くと判断が雑になります。特に初めて不動産系の投資に踏み出すなら、「その立地で宿泊需要があるか」「融資が組めるか」「自分が管理に関われるか」を一つずつ確認する時間は惜しむべきではありません。
NISAやiDeCoとの違いは、自分が意思決定に関わる余地が大きいことです。裏返せば、調べた分だけ判断の質が上がります。Tさんのように「土地はある、でも何をすべきか分からない」という状況なら、まず周辺のAirbnb掲載物件の稼働状況と宿泊単価を確認することから始めてみてください。それだけで、選択肢が「放置」から「検討」に変わります。
Tさんのケースから整理できた、土地活用の問いの順番
遊休地を持っていること自体は、スタート地点として悪くありません。ただ「土地があるから投資できる」と「その土地で事業が成り立つか」は、別の問いです。Tさんのケースから整理できたのは、土地活用の入口は「何を置くか」ではなく「その土地で誰が何を求めているか」を先に考えることだ、ということです。焦らず、でも放置しすぎず。まず自分の土地の周辺観光需要を調べることから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
地方の土地でも宿泊事業は成り立ちますか?
立地によります。都市部から1〜2時間圏内で、観光スポットや自然環境が近い土地であれば、週末需要を取り込めるケースがあります。一方で競合が少ない分、初期の認知獲得に時間がかかることもあります。まず周辺のAirbnb掲載物件の稼働状況や宿泊単価を確認することが、判断の出発点になります。
初期投資の資金が手元にない場合、融資は使えますか?
融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートも想定されますが、金融機関ごとにトレーラーハウスへの融資スタンスは異なり、担保評価の考え方も一般的な建物と異なる場合があります。複数の金融機関に相談し、条件を比較することをお勧めします。あくまで個別の状況次第です。
会社員のまま副業として運営できますか?
運営形態によります。Airbnbなどの宿泊プラットフォームを使いつつ、清掃・鍵の受け渡しを外部委託する形であれば、日常的な現地対応なしで運営しているケースもあります。ただし、勤務先の副業規定の確認と、収入が増えた場合の確定申告は必要です。事前に就業規則を確認した上で検討してください。