区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきた方が「次の一手」を考えるとき、真っ先に迷うのが「同じアセットを増やすか、別の選択肢に分散するか」という問いではないでしょうか。融資枠の圧迫や減価償却の残年数が気になり始めたタイミングで、土地活用の利回りを他の選択肢と横に並べてみると、意外と見えていなかった判断基準が浮かびあがってきます。

「利回り」の定義は、選択肢ごとにそもそもズレている

利回りという言葉は誰もが使いますが、その中身はアセットごとにかなり異なります。株式やREITでいう利回りは市場価格に連動する表面的な数字であり、不動産の表面利回りは空室や修繕コストを除いた計算です。「数字が大きい方がよい」という結論に飛びつく前に、前提条件を揃えることが複数アセットを持つ投資家の出発点になります。筆者自身、アパート1棟目の取得時に表面利回り9%という数字に引きずられ、実質利回りを計算し直したら5.8%だったという経験があります。比較の土台を間違えると、判断の方向ごとズレます。

選択肢ごとの「向き不向き」を横に並べると

定期預金・現金保有

金利が多少動いても、実質利回りがインフレ率を下回る状況は続いています。手元流動性を確保したい資金に置くのは合理的ですが、それ以外の資金をここに置き続けることの機会損失は、数字に厳しい方ほど気になるはずです。

上場REIT(J-REIT)

分配金利回りは概ね3〜5%程度のレンジが多く、流動性の高さは強みです。ただし市場価格は金利動向や景気に連動して動くため、実物資産を持っている感覚とは別物です。ポートフォリオの流動性部分として組み合わせる使い方には合理性があります。

アパート追加取得

既に1棟持っている方が2棟目を狙う場合、融資条件が厳しくなるケースは珍しくありません。金融機関の属性評価が変わったり、担保余力の問題が出たりします。表面利回り8〜10%で取得できたとしても、空室・管理費・修繕積立を引くと実質利回りが5〜6%台に落ち着くケースも多い。規模拡大のセオリーは理解しつつ、「同じリスク構造を積み増す」という点は意識しておく必要があります。

土地活用(トレーラーハウス等)

所有地や購入した郊外の土地に、トレーラーハウスを設置して宿泊施設や賃貸として運用するモデルがあります。モデルケースでは想定利回り10〜20%で試算されることもありますが、立地・稼働率・運営体制によって実態は大きく変わります。数字だけで判断するのではなく、後述する「出口コスト」の構造がアパートと異なる点も含めて個別案件を精査することが必要です。

「出口」の読みやすさ、という比較軸

10〜15年後の出口をどう設計するかは、次の投資を考える上で無視できない論点です。アパートは建物の減価と修繕費の積み上がりが出口価格に直撃します。一方でトレーラーハウスは、構造上「撤去・移設が可能」という特性があるため、土地を返す際のコスト構造がアパート解体と比較して相対的に読みやすいケースがあるとされています。ただしこれも立地・法的整理・設備内容によって異なるため、一概に有利とは言えません。

「分散」の目的を、もう一度言語化してみる

「分散」はリスク低減のためとも使われますが、「融資枠・減価償却・収益源泉を分散する」という意味でも機能します。たとえばPACOの木造2×4構造のトレーラーハウスは、短期間での減価償却が可能とされており、年収800万円のサラリーマン投資家にとっては所得圧縮効果が生まれるケースが想定されます。ただし減価償却の効果は既存アパートの残年数や個人の税務状況によって変わるため、税理士に試算を依頼してから動くのが現実的な順番です。

次の一手を決める前に、一つだけやること

比較軸を整理した上でまず提案したいのは、「今の融資残高と減価償却の残年数を、一枚の紙に書き出す」という作業です。どのアセットが今のポートフォリオに欠けているのかは、現状の数字を可視化してはじめて見えてきます。利回りの高低より先に手元の構造を把握することが、次の判断を急がせないための一歩です。土地活用を検討するにしても、その確認を終えた後の話で十分です。

よくある質問

アパートとトレーラーハウス投資、初期費用の規模感はどれくらい違いますか?

アパートは立地・規模によって数千万〜数億円と幅があります。トレーラーハウス投資は、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。一概に「どちらが安い」とは言えず、条件を揃えた上で個別に試算することが必要です。

利回り10〜20%という数字は、どのくらい信頼できますか?

想定利回り10〜20%はモデルケースの試算であり、稼働率・運営コスト・季節変動・立地によって実績は大きく変わります。高稼働が続く前提で成立する数字であることが多く、保守的に試算する場合は稼働率60〜70%程度のシナリオで手元キャッシュフローを確認することをおすすめします。最終的な判断は専門家への確認と、ご自身の精査が前提です。

既にアパートを持っている場合、融資は通りにくくなりますか?

一般論として、借入残高が増えると金融機関の審査基準が変わるケースがあります。ただしトレーラーハウス投資の場合、「動産」として扱われるか「不動産」として扱われるかが金融機関によって異なり、アパートローンとは別の融資スキームで検討できるケースもあります。具体的な融資条件は金融機関ごとに異なるため、複数行に相談しながら確認することが現実的です。