iDeCoとNISAは始めた。でも、もう一段の手を打ちたい——そう感じている30代前半の方から、最近こんな質問をよく受けます。「土地活用って、都心に土地がないと意味ないですよね?」。私自身、取材を始めた当初は同じ前提で考えていました。ところが数字を追っていくうちに、その前提が利回り計算を最初から狂わせていることに気づきました。
「都市部の土地=高利回り」という式が成り立たない理由
「立地が命」という言葉は正しい。でも、それは賃貸マンションやオフィスビルの文脈での話です。利回りは「収益÷初期投資」ですから、分母が膨らめば数字は下がります。坪単価200万円の都心に建物を建てれば、地方の同条件の物件と比べて初期投資は容易に1.5〜2倍以上になるケースがあります。同じ月次売上25万円を想定しても、分母が違えば利回りは別物です。
「都市部=高利回り」という式は、取得コストを無視したときだけ成り立ちます。
観光地近郊の遊休地が、なぜ都心物件を上回ることがあるのか
たとえば、週末・連休に観光客が集中するエリアの遊休地。坪単価は都心の10分の1以下でも、宿泊需要の稼働率が60〜70%台で推移するケースがあります(立地・季節・運営方法により大きく変動します)。初期投資を抑えた分、分母が小さい。だから同じ売上でも利回りが出やすい構造になります。
PACOが展開する木造2×4構造のトレーラーハウスをAirbnb等で運用するモデルは、この「分母の小ささ」を活かした設計です。ただし、観光需要は季節偏差が大きく、オフシーズンの稼働率が想定を下回るリスクは常に織り込んでおく必要があります。私が取材した北関東のケースでは、冬場の稼働率が夏の半分以下になった年もありました。
「利回り10〜20%」の広告を見たら、まず前提を3つ確認する
土地活用の広告でよく目にする「想定利回り10〜20%(モデルケース)」。この数字自体を疑う前に、「何を前提にした計算か」を確認する習慣をつけてください。確認すべき前提は最低でも三つあります。①稼働率は何%を想定しているか、②初期費用に付帯工事・諸費用は含まれているか、③運営コスト(清掃・プラットフォーム手数料等)は引いてあるか。
モデルケースの一例を示すと:初期投資1,200万円(物件仕様・付帯工事込み)、月次売上25万円、諸経費控除後の手残りが月10万円の場合、年間120万円÷1,200万円=想定利回り10%という計算になります。ただしこれは稼働率や運営力が一定水準を維持した場合の試算であり、個人の状況・立地・運営体制によって上下します。
節税と組み合わせると「実質的な手残り」はどう変わるか
年収550万円の会社員の場合、所得税・住民税の実効税率はおおよそ30%前後になることがあります。トレーラーハウスのような減価償却資産を保有すると、帳簿上の損失を給与所得と損益通算できるケースがあり、キャッシュフローが変わらないまま税負担が下がる効果が想定されることがあります。ただし適用条件は個人の状況によって異なるため、税理士への確認は必須です。
利回りの数字だけでなく、税引き後の手残りで比較する——これが都市部・地方を問わず、土地活用を検討するうえで外せない視点です。
「撤退できるか」を、始める前に確認しておく理由
多くの方が後回しにしがちなのが出口戦略です。アパートを建てた場合、解体費用は建物規模によっては数百万円単位になることがあり、土地の用途変更にも時間がかかります。トレーラーハウスは「移動可能な構造物」として扱われるため、撤退・移設の選択肢が比較的柔軟なケースがあります。これはあくまで相対的な話であり、移設コストや再設置先の確保が別途必要になる点は見落とさないでください。
初期投資については、PACO INVESTのモデルでは1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって上下します。融資条件によっては自己資金を抑えたスタートが選択肢に入ることもありますが、借入比率が上がれば元利返済がキャッシュフローを圧迫するリスクも同時に高まります。
「都市か地方か」より先に決めるべきこと
iDeCoとNISAの次を考えるとき、「何が一番いいか」を探す前に、「自分の状況に照らして何と比べるか」を決めることが先です。リスク許容度、資金の出し方、現在の税負担——この三つを整理しないまま利回りの数字を比較しても、判断の土台が揃っていません。
具体的な一歩として、まず「自分の現在の実効税率を計算してみる」ことをお勧めします。源泉徴収票と確定申告書があれば15分もかかりません。そこから逆算すると、節税を組み合わせた土地活用の検討が一気に具体的になります。
よくある質問
地方の土地でも、都市部と比べて見劣りしない利回りは出せますか?
観光需要のある地方エリアでは、取得コストが低い分、想定利回りが都市部を上回るケースがあります。ただし、アクセス条件や季節需要の偏りによって稼働率が大きく変動するため、現地調査と複数シナリオでの収支シミュレーションが前提になります。「利回りが出やすい構造」と「安定して利回りが出る」は別の話です。
年収550万円の会社員でも融資を受けられますか?
融資の可否は金融機関の審査基準・物件評価・個人の信用情報など複数の要素で決まります。会社員としての安定収入は審査上プラスに評価されることがありますが、一概に「受けられる」とは言えません。複数の金融機関に条件を確認し、借入比率がキャッシュフローに与える影響も合わせてシミュレーションすることをお勧めします。
トレーラーハウスの固定資産税は、アパートとどう違うのですか?
トレーラーハウスは構造や設置状況によって「建物」として認定されないケースがあり、固定資産税の扱いが通常の建物と異なる場合があります。ただし、判断基準は自治体や個別の設置状況によって異なります。管轄の市区町村と税理士への事前確認を、契約前のステップとして必ず組み込んでください。