株式も投資信託も持っている。それでも「何かが足りない」と感じる経営者の方から相談を受けることがあります。年収1,800万円前後になると、税負担の重さと資産の集中リスクが同時に気になり始めるタイミングがあるからです。正直に言うと、私自身も最初は「利回りが高ければそれでいい」という視点で比較表を作ってしまい、後から税引き後の手残りを計算し直して数字の印象がガラッと変わった経験があります。民泊投資の利回り数字だけに飛びつく前に、他の選択肢と並べて冷静に見比べてみましょう。
そもそも「利回り」の計算ベースが、商品ごとにまったく違う
比較を始める前に確認したいのが、利回りの計算ベースです。定期預金の「0.3%」とREITの「4〜5%」、アパート経営の「表面利回り8%」、そして民泊投資の「想定利回り10〜20%(モデルケース)」——これらは数字の土台がまったく異なります。
定期預金は元本確保・税引き前の数字。REITは市場価格に連動する分配利回り。アパートの表面利回りは空室・管理費を引く前の粗利。民泊の利回りは稼働率・季節変動・運営コストをどう置くかで大きくブレます。「高い数字」を見せられたときほど、何を分母・分子にしているかを確認する癖が必要です。
現金・定期預金・REITは何が得意で、何が苦手か
現金と定期預金の強みは流動性と即応性です。ただし実質利回りはインフレ率に負け続けるリスクがあります。年収1,800万円の方が数千万円を0.3%の定期預金に寝かせておくのは、機会損失として捉える視点も必要かもしれません。
REITは不動産に間接的に投資できる手軽さがありますが、株式市場と連動して価格が動くため、既に株式を持っているポートフォリオでは分散効果が限定的になるケースがあります。利回りは4〜5%程度(市況によって変動)で一定の安定感はあるものの、減価償却を使った所得圧縮という発想は構造上持ち込みにくい点が、高税率層には物足りなく映ることがあります。
アパート経営と民泊投資、「見えにくいコスト」はどちらが多いか
アパート経営は長期賃貸という安定感がある反面、築年数による家賃下落、空室期間の長期化、大規模修繕のタイミングなど、キャッシュフローが読みにくくなる局面があります。融資審査・物件選定・管理会社選びと、不動産未経験の方にとっては入口の学習コストが高めです。
一方、民泊投資(トレーラーハウス活用型)は稼働率によって収入が大きく変動します。「観光地近郊の立地、稼働率65%、1泊平均1.5万円」という条件でシミュレーションされるケースでは、想定利回りが10〜17%程度になることもありますが、あくまでモデルケースです。稼働率が50%を下回れば、この数字は大きく下振れします。
PACOが採用する木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース/物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動します)という点も、アパート一棟と比べると初期投資の刻み方が異なります。また撤去・移設が可能な構造のため、「出口の柔軟性」を評価して選ばれることがあります。
「税と利回り」を同時に考えると、手残りの計算がひっくり返ることがある
年収1,800万円の経営者の場合、所得税・住民税の限界税率は50%超になることがあります。この水準では、表面利回りよりも「税引き後の手残り」と「所得圧縮効果」の合算で投資を評価する視点が有効になるケースがあります。
たとえば減価償却費が年間100万円発生すれば、それだけで課税所得が圧縮され、税率50%の方であれば実質50万円相当の節税効果が生じる計算になります(ただし効果は個人の税務状況・事業形態によって異なるため、必ず税理士との確認を推奨します)。既存の金融資産だけでは得にくい「減価償却による所得圧縮」という発想が、民泊投資を検討する経営者層に刺さる理由の一つです。
結局、どこから検討を始めるのが現実的か
どの手段にも一長一短があります。REITは手軽だが節税効果は薄い。アパートは規模拡大できるが管理負荷が高い。定期預金はインフレに弱い。民泊投資は利回りポテンシャルがある反面、稼働率次第でブレが大きい——という整理になります。
まず整理したいのは「どの課題を最優先するか」です。節税が最優先なのか、キャッシュフローの分散なのか、将来の相続対策なのか。その答えによって最適な手段は変わります。民泊投資に関心があるなら、具体的な立地・仕様込みで1棟のシミュレーションを見ることが判断の起点になるでしょう。過剰な期待を持たず、稼働率40%という最悪シナリオで手残りがどうなるかを先に確認する——それが経営者らしいアプローチだと思っています。
よくある質問
民泊投資の利回りはアパート経営と比べて本当に高いのですか?
一概にはいえません。民泊はモデルケースで想定利回り10〜17%程度と試算されることがありますが、稼働率・立地・運営体制によって大きく変動します。アパートの表面利回り6〜8%と比べると高く見えますが、民泊には稼働変動リスクが内包されている点をセットで評価する必要があります。どちらが「高い」かではなく、自分のリスク許容度と運営への関与度で選ぶものだと考えています。
法人を持っている経営者の場合、個人と法人どちらで投資するのが有利ですか?
税理士との相談なしには断言できません。個人で取得すれば減価償却による所得圧縮効果が想定されますが、高い税率が適用される側面もあります。法人で取得すれば法人税率での課税になりますが、役員報酬設計や出口戦略が変わってきます。既に法人を持っている方が法人スキームを検討するケースは多いようですが、個々の状況によって異なるため専門家への確認が不可欠です。
不動産投資が初めてでも、民泊投資から始めることはできますか?
始めること自体は可能なケースがあります。ただし、賃貸経営よりも運営の変動要素が多く(稼働率管理、レビュー対応、清掃手配など)、学習コストは覚悟が必要です。PACO Stayのような運用サポートを活用することでオペレーション負荷を軽減しながら始める方もいますが、いずれにせよ稼働率40〜50%という厳しめのシナリオで収支を試算してから判断することを強くお勧めします。