「もう1棟増やすか、別のアセットを試すか、正直どっちが正解かわからなくて」——先日、相談を受けた38歳・年収約800万円の方(以下、田中さん・モデルケース)からそんな言葉が出ました。区分マンションを2戸、アパートを1棟すでに持ち、利回りや出口を数字で確認するタイプの投資家です。そういう方こそ、「民泊投資」という選択肢を既存ポートフォリオと並べて比較してみる意味がある、と筆者は考えています。

「利回りが高そう」より先に、収益の波形を確認する

田中さんが最初に口にしたのは「民泊って利回りいいんですよね?」という問いでした。想定利回り10〜20%という数字が出てくることはあります。ただしこれは、稼働率・客単価・コスト構造がそろった場合のモデルケースであり、立地や運用体制によって結果は相当ばらつきます。

それよりも先に確認してほしいのは「収入の波をどう見るか」です。区分マンションやアパートは月次賃料が比較的安定しています。対して民泊は、季節・曜日・近隣イベントによって稼働率が大きく上下します。既存ポートフォリオが「安定収入型」であれば、民泊を加えると年間収益の総量は増えても、月次キャッシュフローの予測精度は下がるケースがあります。

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アパートの空室リスクと民泊の稼働リスク——どちらを先に潰すべきか

田中さんのアパートは地方郊外に立地しており、「将来の空室率が不安」とのことでした。この状況で民泊が補完的に機能するかどうかは、「どこに置くか」に大きく左右されます。アウトドアスポットや温泉地の近隣エリアでは、都市部の賃貸需要とは異なる観光需要の軸が働くため、空室リスクの性質そのものが違います。

ここで筆者自身が実際に運用しているのが、トレーラーハウスを使った民泊です。設置場所の柔軟性があり、「観光需要の強いエリアの空き地に置く」というアプローチが取りやすい点が、土地ごと購入するアパートとは異なるリスクの取り方になります。ただし、筆者が最初の1棟で実感したのは「空き地の確保交渉が想定より時間を食う」という点で、設置完了まで3〜4カ月かかったケースもありました。スケジュールには余裕を持って動くことをお勧めします。

「撤退できる設計」が、数字に厳しい投資家ほど刺さる理由

田中さんが特に反応したのが「移設・撤去ができる」という点でした。アパートは一度建てたら立地リスクを背負い続けます。木造2×4構造のトレーラーハウスは、条件次第で移設が可能であり、「撤去して売却・転用」というルートが出口の選択肢に加わります。

もちろん移設には費用と手間がかかりますし、立地環境によってはスムーズに動かせないこともあります。それでも「完全に動かせないRC造アパートと比べてどちらが出口を作りやすいか」という問いは、ポートフォリオ設計の観点から一度立ててみる価値があります。

試算を正直に開くと、「派手ではないが使える数字」が見えてくる

田中さんと確認した試算の前提は次の通りです。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、今回は1,200万円を想定。稼働率60%・客単価1泊15,000円・年間稼働330日で計算すると、年間売上は約297万円。プラットフォーム手数料(約15%)・清掃費・消耗品費・管理費を差し引いた手残りは、年間約150〜180万円程度というイメージです(あくまでモデルケース)。

「想定より現実的な数字ですね」というのが田中さんの第一声でした。派手な利回りではないものの、既存アパートとは異なる需要軸でキャッシュを生む構造として、ポートフォリオに1台加える意味は検討できます。なお、減価償却を活用した所得圧縮効果が見込まれるケースもありますが、税務の詳細は必ず税理士に確認してください。

「もう1棟増やす」より「軸を1本ずらす」発想が有効なタイミングがある

アパートをもう1棟増やすこと自体は悪くありません。ただ、同じアセットクラスを積み重ねると、金利上昇・空室増・地域経済の変化といったショックが来たとき、複数の棟が同時に影響を受けるリスクが重なります。

民泊投資は観光需要・短期需要という別の軸を持っています。完璧な分散にはなりませんが、「同じ土俵でないものを1つ加える」という発想として、まず自分のポートフォリオの収支全体を書き出し、「民泊が1台加わったら月次・年次で何が変わるか」を比較するところから始めてみてください。

よくある質問

既存の不動産ローンがある状態で、トレーラーハウスの融資は通りやすいですか?

既存の借入残債・年収・金融機関の方針によって大きく変わります。アパートローン等の残債が多い場合は審査が慎重になるケースがあり、自己資金を一定割合用意してのスタートになることも少なくありません。複数の金融機関に事前打診することをお勧めします。PACOでは過去の取り組み事例をもとに、金融機関との交渉の進め方についてもご相談に応じています。

Airbnbの運用は自分でやらないといけないですか?

チェックイン対応・清掃・レビュー返信などの日常業務は、管理会社や運用代行サービスへの委託が可能です。PACO Stayのような運用サポートを活用することで、本業を持つ投資家でも管理の手間を抑えながら運用しているケースはあります。ただし代行費用がかかるため、試算には必ず運用コストを含めて計算してください。代行費用の目安は売上の15〜25%程度になるケースが多く、手残りに直接影響します。

立地選びで失敗しないために、最初に何を確認すればいいですか?

筆者が最初の1棟で痛感したのは「観光需要の持続性」の確認不足でした。季節イベントの集客だけに依存した立地では、閑散期の稼働率が想定の半分以下になることがあります。確認すべきは、年間を通じた集客の波・競合施設の数・アクセス動線の3点です。加えて、住宅宿泊事業法による年間180日の営業日数上限と、地方自治体ごとの条例による上乗せ規制の有無も事前調査が必須です。