先日、製造業を営む45歳の経営者の方(以下、モデルケースとしてご紹介します)から相談を受けました。年商1.5億円、法人税の負担が年々重くなり、「株や投信は持っているが、もう一手打ちたい」というのがきっかけでした。不動産は未経験。ただ、民泊投資の利回りが高いという話を耳にして、気になっていたそうです。
「稼働率は何%で計算していますか?」——この一言で会話が止まった
その方が最初に持ってきたのは、ネットで見た「想定利回り15〜20%」という数字でした。私が最初に聞いたのは、「その数字、稼働率は何%で計算していますか?」という一点だけです。
少し間があって、「そこまで確認していなかった」という答えが返ってきました。民泊投資の利回りは、稼働率の前提次第で大きく上下します。年間365日のうち何日埋まるかで、収益はまるで別物になる。ここを曖昧にしたまま「高利回り」だけを見て動くのが、経営判断に慣れた方でも陥りやすい落とし穴です。
実は私自身、以前に別の案件で稼働率の前提確認を後回しにしてしまい、試算と実態のギャップに気づくのが遅れた経験があります。だからこそ、ここを最初に聞くようにしています。
稼働率60%と80%では、手元に残る金額がどれだけ違うか
簡単な試算を一緒にやってみました。あくまでモデルケースであり、立地・仕様・運営方法によって数字は変わります。
前提条件(モデルケース)
初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く、仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。ここでは仮に1,200万円で試算。1泊単価15,000円、年間管理費・清掃費等は売上の30%と想定しています。
稼働率60%の場合
年間売上:15,000円×365日×60%=約328万円。管理コスト差引後の収益は約230万円。初期投資1,200万円に対する実質利回りは概ね19%前後(モデルケース)。
稼働率80%の場合
年間売上:15,000円×365日×80%=約438万円。管理コスト差引後の収益は約307万円。実質利回りは概ね25%前後(モデルケース)。ただし稼働率80%を安定して維持するには、立地選定と運営クオリティの両方が問われます。
「60%でもアパートより高いんですね」という反応が返ってきました。数字としてはその通りです。ただ私が伝えたかったのは、前提を一つ変えると答えが別物になる、という感覚を持ってほしいということでした。
税引き後にいくら残るか——経営者が本当に気にしていた問い
この方が本当に気にしていたのは、利回りの数字そのものより「税引き後にいくら残るか」でした。トレーラーハウスは木造2×4構造で法定耐用年数が短く、減価償却を活用した所得圧縮効果が生じるケースがあります。法人税負担が重い経営者にとっては、この効果が実質的なリターンに上乗せされる場合も想定されます。
ただし、税務上の効果は個人・法人それぞれの状況や税理士の判断によって大きく異なります。「節税になる」と断言するのは私の立場ではありません。経営者であれば、顧問税理士と一緒に減価償却のシミュレーションをしてみるのが現実的な次の一手だと思います。
「すぐ撤退できる」が、不動産未経験の経営者に刺さった理由
最終的にこの方が最も関心を持ったのは、利回りでも減価償却でもなく、「出口」の話でした。建物を移設できるという性質上、土地との関係が一般的な固定資産とは異なります。撤退や移設の選択肢があること、土地を所有しなくてもスタートできるケースがあること——これが、不動産未経験の方にとって心理的なハードルを下げたようです。
「コミットの深さが違う」という感覚は、意思決定のスピードを重視する経営者に響きやすいと感じています。もちろん投資にはリスクが伴い、すべてが想定通りになるとは言えません。ただ、出口の選択肢が複数あることは、戦略の幅を広げる要素になり得ます。
最後に渡した宿題は、一つだけ
「まず立地候補を一か所だけ絞り、その周辺のAirbnb稼働データを自分で調べてみてください」——これだけお伝えしました。利回りの高さを信じる前に、稼働率の根拠を自分で確認する習慣を持つこと。これが、経営者が民泊投資を検討する際の最初の一歩だと考えています。PACOでもAirbnb評価4.8の運用実績をもとにしたデータ提供を行っていますが、あくまで参考材料のひとつです。最終的な判断は、顧問税理士・専門家との相談を経てしていただくことを前提にしています。
よくある質問
民泊投資の利回りは、アパート投資と比べて本当に高いのですか?
モデルケースでは、民泊投資の想定利回りがアパート投資を上回るケースがあります。ただし、稼働率・立地・運営コストの前提次第で数字は大きく変わります。「高利回り」の根拠となっている稼働率の設定が現実的かどうかを、まず確認することをおすすめします。
法人で民泊投資を行うことはできますか?
法人名義での取り組みを検討されているケースもあります。ただし、民泊営業の許認可要件・法人税務上の扱い・減価償却の適用方法は個々の状況によって異なります。詳細は税理士や専門家にご確認ください。このブログは情報提供を目的としており、投資勧誘を意図するものではありません。
不動産投資が未経験でも始められますか?
未経験の方がゼロから始められるケースはあります。ただし、立地選定・運営管理・法令対応(住宅宿泊事業法など)には一定の知識と準備が必要です。運営代行サービスを活用するケースも多いですが、「任せられる範囲」と「自分で判断すべき範囲」を最初に整理しておくことが、後のトラブルを防ぐうえで重要です。