区分マンション2戸とアパート1棟。ある程度のポートフォリオを積み上げた方が、次の一手として民泊投資を検討するケースが増えています。ただ、「利回りが高そう」という第一印象と、実際に運営を始めてからの現実にはギャップがあります。先日、相談を受けた30代後半の方(以下「Kさん」。モデルケース)との話が、そのギャップを改めて整理する機会になりました。

「不動産投資はわかる。でも、民泊の"運営"が数字にならない」

Kさんは38歳、年収800万円のサラリーマンで、既に不動産を複数保有しています。「トレーラーハウスでのAirbnb運営に興味があるんだけど、どう評価すればいい?」という相談でした。

最初から利回りの数字ではなく「前提条件を整理したい」という入り方で、さすがだと思いました。アパートと比べたときに、何が同じで、何が違うのか。そこから話を始めることにしました。

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アパートの利回りと民泊の利回りは、計算式の段階から別物

Kさんが最初に指摘したのは「利回りの計算式が違う」という点でした。アパートであれば月額賃料×12ヶ月で年間収入がほぼ確定しますが、Airbnbの場合は稼働率・単価・季節変動が複雑に絡んでくる。「想定利回り10〜20%(モデルケース)という数字を見たけど、前提が甘いと机上の空論になる」とKさんは言いました。

まったくその通りです。私自身が運用する2棟でも、夏と冬の稼働率には10〜15ポイント程度の差が出ることがあります(個人の運用事例であり、立地・仕様によって異なります)。「年間平均」でならすと実態が見えにくくなるので、閑散期の最悪月に手残りがどうなるかを先に試算することを勧めています。

正直に言うと、私も民泊を始めた当初、夏の稼働率をベースに年間収支を組んでしまい、冬の数字を見て青くなった経験があります。感度分析は、やって当然ではなく、やらないと痛い目を見るものだと身をもって知りました。

「撤退できるか」を、Kさんは収益率より先に聞いてきた

収支の話がひと段落したあと、Kさんが「売れなくなったらどうなるの?」と聞いてきました。区分マンションもアパートも最終的には売却で出口を取ってきた方にとって、出口が読めない投資は選択肢に入らない、というわけです。

トレーラーハウスは車両として移動・転用できる点が一般建築物とは異なります。立地が合わなければ移動してリトライできる性質は、固定資産的な不動産にはない柔軟性です。ただし実際の移動コストや再設置条件によって変わる部分があるので、「必ず撤退できる」とは言い切れません。「選択肢のひとつが残りやすい」という表現が正確なところです。

減価償却の話になったとき、Kさんの質問の解像度が上がった

年収800万円のKさんは、所得税・住民税の実効税率がそれなりに高い層です。「減価償却はどう取れるの?」という質問が来たのは当然の流れでした。木造2×4構造のトレーラーハウスは耐用年数が短く設定されるケースがあり、初期に減価償却を集中させやすい構造になっています。これにより、所得圧縮効果が生じるケースが想定されます。

ただし、税理士を交えて個別に設計すべき話です。「節税になる」と断言するのではなく、「この仕組みが使えるかどうか、専門家に確認する価値はある」という言い方をKさんにもしました。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下しますので、試算は個別に行う必要があります。

最終的にKさんに伝えたのは、数字より先に問うべきこと

「数字に厳しいKさんが民泊に向いているかどうかは、むしろ運営に関われる体制を作れるかどうかだと思います」と正直に話しました。Airbnb民泊で評価を維持するには、レビュー管理・清掃の質・ゲスト対応の細かな積み重ねが必要で、管理を任せられる仕組みがあるかどうかが大前提になります。

PACO Stayのような運営代行の枠組みを使えば、投資家が直接オペレーションに関わらない体制は作れます。ただ、代行コストは売上から差し引かれます(一般的に売上の15〜30%程度が手数料となるケースが多い)。その後の手残りを試算してから判断してほしい、と伝えました。Kさんは「もう少し具体的な数字を出してから動く」と言って帰っていきました。それが正しい順番だと思います。

まとめ:「感度分析を自分で作れるか」が、動くかどうかの分岐点

既存の不動産投資家がAirbnb民泊を検討するとき、最初にすべきことは感度分析です。稼働率が想定より10%落ちたらどうなるか。単価が2割下がったら手残りはいくらか。その試算を自分で組み立てられるようになってから商品の選定に入っても、遅くはありません。Kさんのように数字に向き合える方は、その過程で「本当に動くべきか」の判断が自然と見えてくるはずです。

よくある質問

運営を代行に任せた場合、手残りはどの程度変わりますか?

運営代行を利用する場合、売上の15〜30%程度が管理手数料として差し引かれるケースが多いとされています(代行会社やサービス内容によって異なります)。試算の段階で管理コストを引いた後の手残りを必ず確認しておくことをお勧めします。「代行ありの利回り」と「代行なしの利回り」を分けて計算しておくと、判断が明確になります。

トレーラーハウスをAirbnbで運用する場合、立地はどう選べばいいですか?

観光需要があるエリア、またはアウトドア・自然体験のニーズが高いエリアと相性がよいケースが多いとされています。都市部の区分マンションとは異なり、「最寄り駅からのアクセス」よりも「その体験を求めているゲストが検索するか」という観点が重要になります。競合物件の稼働率・単価をAirbnb上で事前にリサーチするのが現実的な第一歩です。

既存のアパートと掛け持ちで運用することは現実的ですか?

運営代行を活用すれば、物理的な掛け持ちは可能なケースがあります。ただし、税務上の管理(減価償却の計上、事業区分の整理など)は保有資産が増えるほど複雑になる傾向があります。Kさんのように既存のアパートを保有しているケースでは、税理士との連携を先に整えてから新規投資に進む順番が現実的だと考えています。