「株も投信も持っている。でも、毎年の税負担がしんどくて」——今年の春ごろ、知人の経営者からこんな相談を受けました。不動産は未経験でも、次の手を真剣に探している。そういった方に最初に伝えるべきは、利回りの数字ではなく、「その数字が自分の税率で見たときにどう変わるか」という視点です。
「利回り10〜20%」は誰の数字か——表面と実質、税引き前と後で別物になる
相談してきたのは45歳・中小企業経営者、個人年収が約1,800万円のAさん(モデルケース)。「利回り10〜20%と書いてあるサイトを見たが、あの数字は信用していいのか」というのが最初の問いでした。
正直に答えると、「条件次第でそのレンジに入るケースはあるが、同じ数字があなたに当てはまるかは別の話」です。確認が必要なのは、その利回りが表面なのか実質なのか。そして税引き後のキャッシュフローで見たときにどうなるか、という点でした。
余談ですが、最初の相談でわたし自身も「まず利回りの話から入ろう」とした瞬間がありました。途中でAさんに「で、税金はどうなるんですか」と遮られ、順番が逆だったと気づいた経緯があります。
実効税率33%の人に、減価償却はどう機能するか
Aさんの所得税・住民税の実効税率はざっくり33〜35%程度。この水準では、減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されます。トレーラーハウスは車両扱いか構築物扱いかによって法定耐用年数が異なり、短期間で大きく経費算入できるシナリオがあります。
仮に1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジ(モデルケース。仕様・立地・付帯工事により変動します)で取得した場合、初年度から数年間で相当額を損金処理できるケースも想定されます。ただし、「節税になる」と断言はできません。税理士との確認を前提に、「所得圧縮効果が期待されるシナリオがある」というのが正確な言い方です。
「利回り14%」の前提を、一緒に分解してみた
Aさんと一緒に試算の前提を確認しながら、一つのシナリオを組みました。観光需要のある地方エリア、木造2×4構造のトレーラーハウス1台、短期宿泊(Airbnb等)で運用、年間稼働率65%、平均客単価2万円/泊という条件です。
この前提での年間売上は概算で約470万円。清掃費・光熱費・プラットフォーム手数料・保険・定期メンテ等を差し引くと、手残りは270〜300万円のレンジに入るケースがあります(モデルケース)。取得コストを1,200万円とすれば表面利回りで22〜25%ですが、実質手残りベースでは15〜16%程度という試算になりました。
ただし、稼働率は立地・季節・運営力に大きく左右されます。「65%は楽観的すぎる」という見方もあり、Aさんには稼働率50%のシナリオも並べて提示しました。そちらでは実質利回りは10〜11%程度に落ちます。どちらを現実的と見るかは、立地選定次第です。
不動産未経験の経営者が最初に確認すべきは「撤退コスト」だった
Aさんが最後に聞いてきたのは「事業が傾いたとき、どうやって撤退するのか」でした。トレーラーハウスは土地に固着していないため、移設・転用・売却という選択肢が残る点が一般的な不動産と異なります。
ただし、移設には数十万円単位のコストがかかるケースがあり、中古市場の流動性は一般不動産より限定的です。「撤退できる」という言葉を過信せず、撤退コストも含めたシナリオを事前に持っておくことが重要だと伝えました。Aさんは「その程度の不確実性は事業経営でも同じ。むしろ馴染みやすい」と言っていました。
Aさんへの提案——利回りより先に「自分の税構造」を把握する
最終的にAさんに提案したのは、「まず税理士と一緒に、自分の課税所得でシミュレーションを作ること」でした。利回りの数字を見る前に、自分の税負担構造を把握する。それが投資判断の最初の土台になります。PACOでも、初期段階では具体的な数字を持ち寄ってもらったうえで、個別に試算のご相談に応じています。「買う」より先に「数字を確認する」から始める。それが判断の精度を上げる順番だと考えています。
よくある質問
トレーラーハウス投資の利回りは、どのくらいを想定すればいいですか?
立地・仕様・運営方法によって大きく異なります。モデルケースでは実質利回り10〜16%のレンジで試算されるケースがありますが、稼働率や諸経費の水準によって結果は変わります。楽観・中立・保守の複数シナリオを前提条件とセットで確認することをおすすめします。
初期投資はどのくらいかかりますか?
1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース)、仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容により上下します。融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートが想定されるケースもあります。詳細は個別にご確認ください。
不動産投資の経験がなくても始められますか?
経験がないこと自体は大きなハードルではありませんが、リスクの把握と出口戦略の設計は欠かせません。特に、移設・売却時のコストや、稼働率が想定を下回ったときのキャッシュフロー耐性については事前に試算を確認しておくことが重要です。経験の有無より「前提条件の精度」が判断を左右するケースが多いと感じています。