相続で引き継いだ土地が、気づけば固定資産税だけ払い続ける存在になっている。「なんとかしなければ」と思いつつ、どこから手をつければいいか分からない——先日、まさにそういう相談を受けました。今回はそのモデルケースをもとに、遊休地活用の「選び方」を一緒に考えてみます。

ハウスメーカーの提案書を2社分もらっても、なぜTさんは動けなかったのか

以下はご本人を特定できない形に加工したモデルケースです。Tさんは55歳の地主で、3年前に父親から郊外の土地(約200坪)を相続しました。最寄り駅からバスで15分ほどの住宅地の外れ。年間の固定資産税は約35万円で、草刈り費用を合わせると年40万円近いコストが出ていきます。

ハウスメーカー2社から木造2階建て・8戸前後の提案書を受け取り、表面利回りはどちらも7〜8%という数字でした。悪くない数字です。それでもTさんは「なぜか踏み切れなかった」とおっしゃっていました。

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提案書の試算が10年分しかなかったとき、15年目以降に何が起きるか

Tさんが見せてくれた提案書には、家賃収入の試算が10年間しか書かれていませんでした。建設費は約6,000万円、借入期間30年、月の返済額は約15万円というシミュレーション。ただし15年目以降の空室率については「市場状況により変動します」の一行だけでした。

私はもともと賃貸仲介の現場にいたので、正直に言えます。郊外の賃貸市場は、築15年を超えると空室を埋めるために家賃を下げるか、リフォームへの追加投資を迫られるケースが多い。実際、私が仲介を担当していたエリアでも、築17年の木造アパートが空室率40%を超えて家賃を2割下げた事例を複数見ています。「楽観的な前提」が30年続くシミュレーションは、ほぼ実態と乖離すると考えた方がいいでしょう。Tさんの違和感は、数字ではなく「そこが見えていない」ことへの感覚的な察知だったと思います。

「アパートを建てるかどうか」より先に整理すべき3つの問い

Tさんと話しながら整理したのは、以下の3点です。

① その土地で賃貸需要が生まれる根拠はあるか

駅距離・周辺の人口動態・近隣の空室率。アパート経営が成立するかどうかの前提として、「そこに住みたい人がいるか」が最優先です。Tさんの土地は、工業団地への通勤者が一定数いるエリアで、単身者向け賃貸がやや不足気味という情報がありました。これは一つの根拠になりえます。ただし「不足気味」と「需要が持続する」は別の話なので、人口推移データとあわせて確認が必要です。

② 「節税になります」という言葉を、税理士に確認したか

アパートを建てることで土地の評価額が下がり、相続税の圧縮が見込まれるケースはあります。ただし、小規模宅地等の特例の適用要件や、借入を活用した場合の債務控除の扱いは、個人の状況によって大きく変わります。Tさんはハウスメーカーの担当者から「節税になります」と言われていましたが、税理士への確認はまだでした。ここは必ず専門家を挟んでください。

③ アパート以外の選択肢と、数字で比べたか

Tさんの土地は、ある程度の広さと車でのアクセスのよさがありました。私がご紹介したのは、トレーラーハウスを使った宿泊施設としての活用です。PACOが手がける木造2×4構造のトレーラーハウスは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース/物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動します)、アパートと比べて初期投資の総額を抑えやすい場面があります。また「動かせる」という特性から、事業が合わなければ撤退しやすい点が、多額の借入を避けたい地主の方に響くことがあります。

Tさんが3ヶ月後に出した「暫定回答」——決めないことを決めた、その中身

最終的にTさんは、アパート建設を「今すぐ決めない」と判断しました。まず地元の税理士に相続税シミュレーションを依頼し、土地評価額と実際の節税効果を数字で確認する。それと並行して、トレーラーハウス活用の概算も取り寄せ、長期キャッシュフローとリスクのバランスを比べる、という進め方です。

「決めない」も一つの判断です。ただし期限のない「検討中」は、ただの先送りになります。Tさんは「半年以内に方向を決める」と区切りを設けました。その一言が、次の行動を具体化するうえでかなり効いていると感じています。

最初の一歩は、ハウスメーカーの提案書ではなく税理士への電話かもしれない

遊休地の活用を考えるとき、最初にすべきことはハウスメーカーの提案書を見比べることではなく、税理士に「今の土地を活用した場合の相続税への影響」を聞くことだと思っています。その数字が出てから、活用方法の選択肢を並べる。その順番の方が、後悔が少ないはずです。

余談ですが、私自身も以前、別の相談者に「まず提案書を集めましょう」とアドバイスして、後から税理士確認で活用方法をほぼ白紙に戻した経験があります。順番を間違えると、集めた情報が無駄になる。Tさんのケースはその反省を活かした進め方でもありました。

よくある質問

遊休地にアパートを建てると、相続税は必ず下がりますか?

アパートを建てることで貸家建付地として土地評価が下がり、相続税の圧縮が見込まれるケースはあります。ただし、小規模宅地等の特例の適用可否や、借入金の債務控除との組み合わせによって効果は大きく変わります。「必ず下がる」とは言えず、個人の資産状況や家族構成によって結果が異なるため、相続専門の税理士への個別シミュレーションが不可欠です。

トレーラーハウスはアパートと比べて収益性はどうですか?

単純な比較は難しく、立地・運用スタイル・稼働率によって大きく変わります。宿泊施設として運用した場合の想定利回りはモデルケースで10〜20%と試算されることもありますが、あくまで前提条件次第であり、実際の稼働率や運営コストによって上下します。アパート経営と並べて収支シミュレーションを比較したうえで判断することをお勧めします。

郊外の土地でもトレーラーハウス投資は成立しますか?

観光需要・自然環境・車でのアクセスのよさが揃っている立地では、郊外でも一定の稼働が見込まれるケースがあります。一方、周辺の観光流動や競合施設の状況によって結果は異なります。「駅距離が遠い=不利」とは一概に言えませんが、「アクセスしやすい郊外」と「ただ遠いだけの郊外」は別物です。立地調査と需要確認を先行させてください。