アパート1棟・区分マンション2戸をすでに保有しているなら、表面利回りが「入口」でしかないことは肌で知っているはずです。それでも、次の物件を検討するたびに「この利回りをどこまで信用するか」という問いは毎回新鮮に難しい。今回は、私自身が読み誤った経験をベースに、利回り評価で見落としやすい構造的な落とし穴を整理します。

「満室ベース9.2%」が、なぜ3年で実感値7%を切ったのか

私が最初に購入したのは、埼玉県北部の8戸・木造築15年のアパートでした。購入時の表面利回りは約9.2%。当時は「9%超えれば合格」という自分ルールを持っていて、迷わず契約しました。ところが購入後3年間の平均入居率は73%前後。満室ベースで計算していた賃料収入が、実際には約4分の3しか入ってこない状態が続きました。

空室損に加え、入退去のたびに原状回復費が発生します。1戸あたり18万〜25万円として、年間2〜3戸の入退去があれば40〜75万円の支出です。さらに給湯器交換・外壁補修・雨漏り対応といった修繕が重なり、実質利回りは表面から2〜3ポイント下がるケースは珍しくないと感じています。「9%超え」のはずが、実態では7%を切る年もありました。

「人口動態を調べずに買った」——空室率には地域の需給構造が直結する

失敗の核心を一言で言えば、「その地域の需給構造を調べずに買った」ことです。埼玉県北部は転出超過が続くエリアで、購入時に賃貸ポータルを確認すれば競合物件の多さと成約日数の長さはある程度読み取れたはずでした。数字に厳しいつもりでいたのに、「表面利回り」という一点突破で決めてしまった。これが私の小さくない失敗です。

地方・郊外の物件は都市部より利回りが高く表示されやすい構造的な理由があります。需要が限定的で賃料が上がりにくい分、リスクプレミアムが価格に織り込まれている。「高利回り=お得」ではなく「高利回り=リスクの価格化」という視点で評価する習慣は、この経験以降に身につきました。直近3年の入居率データと人口動態の確認は、今では物件検討の最初のステップになっています。

出口を先に書き出すと、同じ物件が「割安」にも「割高」にも見える

次の一手を悩んでいる方に私が必ず確認するのは「何年後に、どんな方法で売るか」です。木造アパートは法定耐用年数22年で減価償却が終わります。償却期間中は所得圧縮効果が想定されますが、償却終了後は同じ収益でも課税所得が増える。同時に築年数が上がるほど買い手の融資条件が厳しくなり、売却価格が下押しされるリスクも生じます。

「10年で出口を取る」のか「20年以上キャッシュフローを稼ぐ」のかによって、最適な物件スペックは変わります。利回りの数字を比較する前に、運用期間と出口の形を先に書き出す。この順序の違いが、同じ物件でも評価を大きく変えることがあります。

アパートとトレーラーハウス投資、比べるなら「同じ条件軸」で試算する

アパートと区分を保有している方が次の分散先として話題に上げることが増えているのが、トレーラーハウスを活用した宿泊型投資です。PACOの木造2×4構造のトレーラーハウスは、Airbnb等での評価4.8台が報告されているケースもありますが、ロケーションと運営クオリティに依存します。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・立地・付帯工事によって上下します。

アパートとの最大の違いは「撤去・移設が可能」という点です。市場環境が変わったときに選択肢が残ることは、長期固定を前提とするアパートとは異なるリスク管理につながるケースがあります。ただし稼働の安定性や運用コストも条件次第で変わるため、比較するなら同じ条件軸でキャッシュフローを試算することが前提です。

今すぐできる3ステップ——派手な成功話より地味な検証が効く

利回りの数字を見たとき、まず「前提:満室想定か、実績ベースか」を問い返してください。次に、その地域の直近3年間の入居率データと人口動態を確認する。最後に、自分の出口戦略と保有期間を先に書き出してから物件を評価する。この3ステップだけで、利回りの読みにくさはかなり整理されるはずです。埼玉での失敗を経て実感しているのは、派手な成功話よりこの地味な検証プロセスの積み重ねがポートフォリオの耐久性につながるということです。

よくある質問

表面利回りと実質利回りは、実際どのくらい差が出ますか?

管理費・修繕費・空室損・固定資産税などを差し引くと、表面利回りから1〜3ポイント程度下がるケースが多いとされています。築年数が経過した物件や空室リスクの高いエリアでは差がさらに広がる傾向があります。私自身の埼玉の物件では、表面9.2%に対して実態は7%を切る年もありました。あくまで目安として捉え、個別物件ごとに収支シミュレーションを行うことをお勧めします。

地方のアパートは利回りが高く見えますが、それはリスクの裏返しですか?

多くのケースでそう見るべきです。需要の少なさや空室リスクが価格に反映された結果として利回りが高くなっている構造があります。購入前に周辺の賃貸ポータルで競合物件数・成約状況・人口動態を確認し、「なぜこの利回りになっているのか」の理由を分解することが先決です。

アパートとトレーラーハウス投資を比べるとき、どんな軸で考えればいいですか?

主な比較軸は①収益の安定性(長期賃貸 vs 短期宿泊稼働)、②初期コストと融資条件、③出口の柔軟性(売却・移設・撤去の可否)、④運営にかかる手間の4点です。アパートは入居が安定すればキャッシュフローが読みやすい一方、築年数とともに資産価値が下がりやすい特性があります。トレーラーハウスは稼働モデルによって収益のブレが大きくなる側面もあります。どちらが優れているというより、自分の保有スタイルと出口戦略に合うかどうかで判断することが大切です。