法人税対策として不動産に目を向ける経営者は多いですが、「アパート経営で損した話」はなかなか表に出てきません。筆者自身、賃貸仲介の現場を15年経験したあと投資側へ回り、痛い目を見た経験があります。今回はその失敗を正直にお伝えしながら、資産分散としてのアパート経営をどう捉えるかを整理してみます。

退去通知が3件同時に届いた夜、何が起きたか

筆者が最初に取得したアパートは、地方中核市の築18年・木造2階建て・8室でした。賃貸仲介出身という自信から「空室リスクはマネジメントできる」と高をくくっていたところ、入居から1年半でまさかの展開が訪れます。退去通知が3件同時に届いたのです。しかも3件とも「転勤」「結婚」「実家に戻る」——いずれも引き留められない理由でした。

この時点での稼働率は62.5%。表面利回り8%で試算していた物件が、実質キャッシュフローで見ると赤字に転落しました。問題は「退去が重なること自体」ではありませんでした。3部屋を同時にリフォームするための手元資金を確保していなかったこと、これが本当の失敗です。原状回復費と次の入居者向けのクリーニング・壁紙交換だけで、1室あたり30〜50万円規模の出費が3件分重なりました。

経営者の方ならすぐ気づくと思います。これはキャッシュフロー管理の問題です。売上は見ていても、突発的な修繕のバッファを手元に残していなかった——会社経営でいえば、運転資金を薄くしすぎた状態と同じです。賃貸仲介の経験があっても、投資家の目線はまったく別物でした。

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「紙の利回り8%」と「実際に残るお金」はなぜここまでズレるのか

表面利回りは「年間家賃収入 ÷ 物件価格」だけで計算されるため、空室損失・管理委託費・修繕積立・固定資産税・ローン返済が一切含まれません。モデルケースとして試算すると、表面利回り8%の物件でも実質利回りが5%を下回るケースは珍しくなく、さらにローンを組んでいれば手残りのキャッシュフローはもっと圧縮されます。

物件差・融資条件差があるため一概には言えませんが、投資判断の前提として「最悪シナリオで何年持ちこたえられるか」を試算しておくことは、経営者目線では欠かせません。筆者の失敗から言えるのは、好調時の数字で購入を決め、悪化シナリオの数字を甘く見積もったということです。

築年数と立地、どちらが先に経営を詰まらせるか

不動産未経験の方が見落としやすいのが「経年劣化のコスト曲線」です。築15年を超えたアパートは、給湯器・エアコン・外壁・屋根などの大規模修繕が重なりやすい時期に入ります。1室あたり50〜80万円規模の修繕が複数室で同時期に発生するシナリオは、新築物件では起きにくいことです。

一方、立地の問題は時間をかけてゆっくり効いてきます。人口減少エリアでの空室率上昇は、管理を頑張っても抗いにくい構造的な課題です。筆者が賃貸仲介にいた頃、「5年前は満室だったのに今は半分しか埋まらない」という物件を何度も目にしました。大家さんの責任というより、エリアの人口動態の変化です。購入前に確認できる情報ではあるのですが、10〜20年先を読むのは容易ではありません。

固定資産としてのアパートに縛られる前に、「撤退できるか」を問う

資産防衛を考える経営者の方にとって、アパートが株や投資信託と大きく異なる点の一つは「流動性の低さ」です。売りたいタイミングで買い手がつくとは限らず、売却価格も市況に左右されます。事業の資金繰りに影響するような局面では、不動産の固定性がリスクになりえます。

この観点で最近、筆者が注目しているのがトレーラーハウスを活用した投資スキームです。PACO INVESTが手がける木造2×4構造のトレーラーハウスは、設置条件によっては動産として扱われるケースがあり、撤去・移設の選択肢が残ります。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動しますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(あくまでモデルケースであり、個別の仕様や立地で変動します)、アパート1棟と単純比較はできません。ただ「途中で方向転換できる余地を残しておく」という発想は、経営者の資産設計と相性が良いと感じています。

次の一手を焦らないために、まず「損切りの条件」を先に決める

筆者が失敗から得た最大の教訓は、「入口の判断よりも、出口の設計が先」ということです。アパートであれば「空室率が○%を超えたら売却を検討する」「修繕費が年間○万円を超えたら保有継続を見直す」という基準を持っておくだけで、判断の質は変わります。

経営者の方は、撤退基準を決めずに事業を始めないはずです。投資も同じ発想で設計できると、焦りや後悔は減らせます。まずは「自分がどこまで耐えられるか」のシミュレーションから始め、具体的な数字は税理士や不動産の専門家と一緒に試算することをお勧めします。

よくある質問

アパート経営は法人名義と個人名義、どちらが有利ですか?

ケースによって異なり、一概には言えません。年収が高い経営者の場合、個人で受け取る不動産所得に高い税率がかかるため、法人所有にするほうが税負担を抑えられるケースが想定されます。ただし法人設立・維持コストや融資条件の変化も伴うため、税理士への相談が先決です。「法人でやれば必ず得」という断定は禁物です。

不動産未経験でも、いきなりアパート1棟を持つのはリスクが高いですか?

リスクがゼロとは言えません。筆者自身、賃貸仲介出身でありながら投資初期に失敗した経験があります。管理委託をする場合でも、収支の読み方・修繕対応・入居者対応の判断基準は最低限把握しておく必要があります。最初は小規模な物件で実務感覚をつかむか、専門家と並走できる体制を整えてからスタートするほうが、軌道修正の余地が残りやすいと思います。

トレーラーハウス投資は、アパート経営と何が違いますか?

大きな違いの一つは動産・不動産の扱いです(設置条件により異なるため、専門家への確認が必要です)。また、Airbnbなどの短期宿泊プラットフォームでの運用を組み合わせるケースがあり、PACO STAYの運用実績ではAirbnb評価4.8台を維持している物件も存在します。ただしアパートと同様に、立地・稼働率・運営体制による差は大きく、想定利回りはあくまでモデルケースです。どちらが優れているというよりも、自分の資産設計に合った組み合わせを検討することが重要です。