「土地は持っているんだが、税金だけ取られてしまって…」。相続を経験した地主さんからこういう声をよく聞きます。アパート経営の利回りを調べてみたものの、数字が複雑でどこから手をつければいいかわからない、という方も少なくありません。私自身も最初にこの手の相談を受けたとき、「表面利回り6%なら悪くない」と軽く口にしてしまい、後でキャッシュフロー試算を見せたら相手が絶句した、という苦い経験があります。利回りの「種類」を先に説明しておくべきでした。

「とりあえずアパートでも」が止まる瞬間——1億2,000万円の見積もり

知人の紹介で相談を受けた58歳の地主・Kさん(モデルケース)は、関東近郊の郊外に300坪ほどの遊休地を相続で受け継いだ方です。年間の固定資産税は40万円超。「とりあえずアパートでも」とハウスメーカーに相談したところ、建築費1億2,000万円という見積もりが出て、その時点で思考が止まってしまったとおっしゃっていました。

表面利回りを計算すると、想定家賃収入を年間720万円(8室×月7.5万円×12ヶ月)として約6%。ただしこれは満室かつ諸経費ゼロという前提の数字です。「6%と聞いて最初は悪くないと思ったけど、計算していくうちによくわからなくなった」というKさんの感覚は、むしろ正確でした。

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表面利回り6%と手元に残るお金は、まったく別の話です

不動産投資の「利回り」には大きく2種類あります。表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)と、実質利回り(〔年間家賃収入 − 諸経費〕÷ 物件価格)です。ハウスメーカーや不動産会社が提示する数字は、たいてい表面利回りです。管理委託費(家賃の5〜8%程度)、固定資産税・都市計画税、火災保険、将来的な外壁・設備の修繕費、空室期間のロスを引いていくと、手元に残るキャッシュは大きく変わります。

Kさんのケースで試算してみました(前提条件を単純化したモデルケースです)。年間家賃収入720万円から、管理費約50万円・固定資産税等約60万円・修繕積立約30万円・ローン返済約520万円(1億2,000万円・35年・金利1.5%で概算)を引くと、年間の手残りは60万円前後。「それで1億円以上の借金を背負うのか…」とKさんが絶句されたのは、当然の反応だったと思います。

同じ300坪でも、アプローチを変えると初期投資の構造が変わる

Kさんへの提案の中で、一つの選択肢として紹介したのがトレーラーハウスを活用した宿泊用途への転換でした。木造2×4構造のトレーラーハウス(PACO INVESTの場合、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)を数台設置し、Airbnbなどの短期宿泊で運用するスキームです。

アパートとの最大の違いは、初期投資を分割して投入できる点です。1棟建てで1億円超を一括で動かすのではなく、まず1〜2台から始めて稼働状況を確認しながら拡張できます。また、トレーラーハウスは「車両」として扱われるケースがあり、減価償却期間が短くなることで所得圧縮効果が想定されるという側面もあります(税務上の扱いは個別の状況や専門家への確認が必要です)。

「撤退できる」という選択肢が、リスク感覚の強い地主に響く理由

Kさんがとくに反応されたのが「移動・撤去できる」という点でした。アパートを建ててしまうと、需要が落ちても建物は残り続けます。トレーラーハウスは、最悪の場合に移動・撤去という選択肢がある。「失敗したときに身動きが取れなくなる投資はこわい」というKさんの感覚に、この柔軟性が響いたようです。

もちろん移動や撤去にもコストはかかりますし、立地や規制によって制約もあるため、すべてのケースで自由に動かせるわけではありません。それでも出口の選択肢が複数あるという点は、大きな土地を相続した方にとってリスク管理の観点で重要な要素になり得ます。

「何もしない」も選択肢だが、固定資産税40万円×迷った年数は戻らない

Kさんとの相談は「今すぐ動く」という結論にはなりませんでした。地元の行政書士に相談して土地の用途規制を確認すること、固定資産税の負担感を整理し直すことを宿題にして話を終えました。それで十分だと思っています。

ただ一点だけ申し上げたのは、「固定資産税を払い続けながら何年も迷うと、その期間のコストは確実に積み上がっていく」ということです。年40万円なら5年で200万円。動くかどうかはご本人の判断ですが、情報を集めるだけなら早い方がいい、という点は今も変わらず思っています。

利回りの数字より先に確認すべきこと

相続した土地の活用に迷っている方は、まず「その土地で何ができるか」の確認から始めるのが現実的です。用途地域、建蔽率・容積率、接道状況、近隣の需要(アパート需要なのか宿泊需要なのか)を整理するだけで、選択肢はかなり絞られてきます。派手な利回りの数字を比較するのはその後で十分です。「自分の土地で何が成立するか」を地道に確認する方が、ずっと堅実な出発点になると考えています。

よくある質問

郊外の遊休地でアパート経営をする場合、利回りはどのくらい想定されますか?

立地・築年数・間取り・管理費など条件によって大きく異なるため一概には言えませんが、新築アパートの表面利回りは5〜8%程度で語られるケースが多いようです。ただし管理費・修繕費・空室損・ローン返済を引いた実質の手残りはさらに小さくなるのが一般的です。本文のモデルケースのように、表面利回り6%でも年間手残り60万円前後というケースも想定されます。「利回り」の数字だけでなく、キャッシュフロー試算を必ず確認してください。

トレーラーハウスは固定資産税の対象になりますか?

設置状況や自治体の判断によって異なります。「車両」として扱われるケースでは固定資産税の課税対象外となる場合もありますが、基礎や恒久的な設備として設置されていると判断された場合は課税対象となることもあります。具体的な判断は税理士や行政窓口への確認が必要です。

相続した土地でトレーラーハウス投資を検討する場合、どこから情報収集すればいいですか?

まずは土地の用途地域・建築規制の確認(市区町村の都市計画窓口)、次に税務上の取り扱い(税理士への相談)、そして実際の運用イメージ(運営会社への問い合わせや見学)という順番が現実的です。PACOでも個別の情報提供を行っています。投資を促すためではなく、まず状況を整理するための対話から始めていますので、お気軽にお問い合わせください。