区分マンション2戸とアパート1棟を保有している方から、「もう1棟増やすか、別アセットに分散するか迷っている」というご相談をよく受けます。利回りは数字として出しやすい反面、その数字が何を測っているかはアセットや運用形態によってかなりズレます。規模拡大にせよ分散にせよ、「自分のポートフォリオを問い直す」ところから始めるのが、遠回りのようで一番早い。以下の4つの問いを順番に整理してみてください。

「表面利回り8.5%」は、実質ではいくらになっていますか?

Q:既存のアパートで表面利回り8.5%を出しています。この数字を軸に次の物件を選ぼうと思っているのですが、問題ありますか?

A:比較の入口としては使えますが、既に1棟を運営されているなら体感されているはずです。空室率・管理費・修繕積立・固定資産税を引いた実質利回りは、表面から1〜2割落ちることが珍しくありません。モデルケースとして「表面8.5%・空室率10%・管理費5%・年間修繕費相当1%控除」で試算すると、実質は6%台前半に収まることがあります。築年数・エリアの需給・設備水準によって落ち幅はさらに変わります。

私自身、初めて2棟目を検討したとき、表面利回りだけを比べて修繕コストの重い物件をリストアップしてしまった経験があります。「表面で並べて高い順に絞る」という作業は、実は修繕負担の大きい物件を拾いやすいフィルターになっていました。次の物件を選ぶ際は、実質利回りを揃えた状態で比較するのが基本です。

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「棟数が増えた」ことと「リスクが分散された」ことは、別の話ではないですか?

Q:同じエリアでアパートを2棟持つのと、別エリアに1棟追加するのでは、リスクの質が変わりますか?

A:変わります。同じ木造アパート・同じ沿線という組み合わせであれば、人口動態の変化・金利上昇・エリア相場の下落が同じタイミングで影響します。棟数が2倍になっても、リスクの種類は増えていません。「同一アセット・同一エリアの拡大はリスク分散と呼びにくい」というのが率直な見方です。

別エリアに展開する場合は、管理コストの増加や自分の目が届きにくくなるという別の課題が生まれます。数字の利回りだけでなく、「どのリスクを意識的に引き受けるか」を選ぶ段階に来ているかどうか、一度確認してみてください。

「別アセット」に分散するなら、利回りの比較条件をどう揃えますか?

Q:トレーラーハウスやコインランドリーなど別アセットが気になっています。利回りの比較はどうすればいいですか?

A:アセットが変わると、利回りの「質」が変わります。たとえばPACOが手がける木造2×4構造のトレーラーハウスの場合、Airbnb等を通じた短期宿泊運用での想定利回りは10〜20%(モデルケース。稼働率・立地・季節変動・プラットフォーム手数料により上下します)と試算されることがあります。アパートの長期賃貸とは運用形態が根本的に異なるため、同じ「利回り」という言葉でも中身は別物です。

初期費用は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動します)、アパート1棟より小さい単位でテストできるという側面があります。比較する際は「同じ自己資金・同じ期間・同じ労力投下量」という条件を揃えないと、利回りの数字だけがひとり歩きします。

出口まで設計すると、今の利回り評価はどう変わりますか?

Q:10年後に売却することを前提にすると、どのアセットが有利ですか?

A:出口で大きく効いてくるのは「買い手が付くか」「残債と売却価格のギャップがどれだけあるか」の2点です。木造アパートは法定耐用年数22年のため、築古になると融資が付きにくくなり、買い手が現金購入者に絞られやすくなります。一方、トレーラーハウスは固定資産に分類されないケースが多く、撤去・移動ができるという特性から「撤退の柔軟性」という観点では比較的優位な面があります。ただし市場流動性はアパートより低く、売却先を見つけにくいという別の難しさもある。利回りだけで選ぶより、「どういう形で終わらせられるか」まで含めて設計することをおすすめします。

「次の一手」を考える前に、既存1棟の棚卸しを先にする

既存のアパートでキャッシュフローが安定しているなら、それ自体が判断の基準点になります。「次」を考える前に、既存1棟の実質利回り・残債・修繕見通し・出口シナリオを数字で整理してみてください。「何が足りないか」が明確になると、次のアセット選びの軸がぶれにくくなります。焦って動いて後悔した経験は、私自身も一度ではありません。

よくある質問

アパートの実質利回りが6%を下回ったら、売却を検討すべきですか?

一概には言えません。実質利回り6%でも、残債が少なく毎月のキャッシュフローが黒字なら保有継続の合理性があります。逆に表面利回りが8%でも空室率が高く手元に残るキャッシュが薄い場合は、出口を考え始める判断もありえます。「利回りが何%以下なら売る」という閾値より、「毎月いくら手元に残るか」「10年後の売却価格と残債のギャップはどうか」を軸に判断するほうが実態に近いと思っています。

トレーラーハウス投資はアパートと比べて融資が付きにくいですか?

一般的に、トレーラーハウスは不動産登記ができないケースが多く、従来の不動産担保ローンとは異なる融資スキームになることがあります。事業性ローンや信用金庫との交渉、自己資金の活用など、条件によって対応は様々です。「融資が付かない」と決めつけるより、どのスキームが使えるかを個別に確認するのが現実的です。融資条件によっては自己資金を抑えてスタートできるケースも想定されます。

複数アセットを持つと確定申告や税務処理が複雑になりますか?

アセットの種類が増えると、減価償却の計算・経費の按分・事業区分の整理など、申告の手間は増える傾向があります。木造のトレーラーハウスの場合、構造上の耐用年数が比較的短く設定されることがあり、減価償却を活用した所得圧縮効果が見込まれるケースがあります(効果の大きさは個人の所得状況・税率によって異なります)。アセットが増える前に税理士との定期的な連携体制を整えておくことをおすすめします。