区分マンション2戸、アパート1棟。ある程度の形ができてくると、次の一手が逆に見えにくくなります。規模を追い続けるべきか、別のアセットで分散するべきか。先日、まさにその分岐点にいる方から相談を受けました。

「利回り8.5%の中古アパートをもう1棟」——その前に聞いた一つの質問

相談を受けたBさん(38歳・年収800万円・会社員)は、区分マンション2戸とアパート1棟(6室・木造築15年)を保有しています。ローンの残債も管理も安定していて、次の1棟を探し始めているタイミングでした(ご本人の同意を得た上で、個人が特定されない形でお伝えします。以下はモデルケースです)。

「地方都市・駅徒歩12分・築18年・8室・表面利回り8.5%の物件を買おうと思っている」というのが最初の相談内容でした。Bさん自身が試算した実質利回りは5.8%程度。修繕積立を保守的に見ると5%を下回るケースもあると話していました。

私が「なぜ同じアセットを積み重ねるのか」と聞いてみると、Bさんは少し間を置いてから、「それ以外を真剣に考えたことがなかった」と言いました。

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築18年を今買うと、10年後は築28年——出口まで「あと数年」の計算になる

外壁・給排水・屋根——築18年ならそろそろ手が入り始める時期です。Bさんもその点は折り込み済みでした。ただ、気にしていたのは別のことで、「10年後に出口がどこにあるか」という点でした。

地方の木造アパートは、築30年を超えると売却先が一気に絞られます。融資が付きにくくなり、買い手は現金投資家か再建築ありきの地元業者が中心になります。今から購入して10年保有すれば、その物件は築28年。市場性のある出口まで、あと数年しかない計算です。

この話をしたとき、Bさんは「表面利回りしか見ていなかった」と苦笑いしていました。実質利回りは計算していても、「出口時点の市場性」は計算していなかった、と。

「慣れているから次も同じ」は判断ではなく、惰性になりやすい

Bさんとの対話で感じたのは、比較対象が曖昧なまま「次も同じ」という結論に流れていたことです。既存の1棟目を経験として持っているからこそ、「慣れた手法を繰り返す」という心理的な引力が働きます。これ自体は一見合理的に見えますが、ポートフォリオとして見ると、同一アセットへの集中リスクが積み上がっていきます。

私自身、アパートを保有していた時期に「次もアパート」を検討したことがあります。結果的に別アセットに舵を切ったのですが、そのとき正直に言うと、最初は「知らないアセットを調べるのが面倒」という理由で動けていませんでした。比較を始めてみると、出口と流動性の違いが思ったより大きく、それが判断を変えた一因でした。

「撤退できる構造」は、なぜ出口を意識する投資家に響くのか

現在、私が運用しているのはトレーラーハウスです。PACO INVESTが手がける木造2×4構造のタイプで、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・立地・付帯工事により上下します(モデルケース)。

アパートと異なる主な特性は3点です。撤去・移設が可能なこと、建物として固定資産税の対象にならないケースがあること(登記方法・自治体の判断による)、比較的短い耐用年数による減価償却の活用が想定されること。収益・利回りはあくまでモデルケースであり、ケースによって異なります。

Bさんに「アパートと何が違うか」を話したとき、最初に反応したのは「土地に縛られない」という点でした。木造アパートは土地と建物がセットで、出口も土地ありきになります。移設可能な構造は、その前提が違う、と。

Bさんが「一時保留」を選んだ理由——比較は結論を出すためだけに使うものではない

Bさんはその後、アパートの購入を一時保留にして、異なるアセットの数字を並べて見る期間を設けることにしました。「決断するために比較する」のではなく、「比較することで自分の優先順位を明確にする」という使い方です。

同一アセットの積み上げを否定したいわけではありません。ただ、出口・流動性・リスク分散の3点を言語化した上で「やはりアパートがいい」と選ぶのと、何も比べずに選ぶのでは、同じ結論でも中身が違います。元・仲介業者として正直に言うと、「慣れているから」という理由だけで同じ選択を繰り返すのは、リスク管理ではなく惰性になりやすいと感じています。

まとめ——次の一手を決める前に、出口の形を書き出してみる

規模拡大か分散かで迷っているなら、まず自分のポートフォリオの「出口の形」を書き出してみることをおすすめします。各物件について、10年後・15年後の築年数と、その時点での市場性を並べてみるだけで、次の選択肢がかなり絞られてくるケースがあります。

Bさんのケースは、「次も中古アパート」という結論が間違いだったわけではありません。ただ、比較軸を持った上で選ぶかどうかで、判断の精度は変わります。

よくある質問

既存のアパートを保有しつつ別アセットに分散するのは、管理が複雑になりすぎませんか?

規模や属性によりますが、同一アセットへの集中リスクを意識すること自体は合理的な判断です。ただし「分散のための分散」になると、管理コストと複雑性だけが増えるケースもあります。各アセットの出口・収益特性・リスク特性を比較した上で選ぶ順番が、結果的に判断を速くすることが多いです。

トレーラーハウスとアパートで、減価償却の使い方はどう違いますか?

一概には言えませんが、トレーラーハウスは比較的短い耐用年数が設定されるケースがあり、減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されることがあります。ただし税務上の扱いは取得形態・使用方法・税理士の見解によって異なります。節税を目的とする場合は、必ず税理士に事前相談されることをおすすめします。

アパートの「出口」が読みにくいと感じたら、何から調べればいいですか?

まず、購入から10年後・15年後の「築年数」と「その時点での市場性」を確認するのが出発点です。同エリア・同築年数帯の物件がどのような価格帯で流通しているか、融資が付いているかどうかを調べると、出口の難易度が見えてきます。特に地方の木造は築30年超で流通量が急減するエリアもあるため、購入前に出口を逆算しておくことが重要です。