固定資産税の通知が届くたびに、あの土地のことが頭をよぎる——そういう方からのご相談が、ここ数年で明らかに増えています。相続で引き継いだ郊外の遊休地、売るにも売れず、放置するには税負担が重い。アパート経営という言葉は聞き慣れているけれど、本当にそれが最善なのか、確信が持てないまま時間だけが過ぎていく。今回はそのモヤモヤに、できるだけ正直に向き合ってみます。
「とりあえず現状維持」が、実は毎年コストを積み上げている
何もしないことを選ぶのは、リスクを取らない堅実な判断に見えます。ただ、遊休地の場合はそうも言い切れません。更地のまま保有していると、住宅用地特例の適用外となるため、固定資産税の負担が建物を建てた場合と比べて最大6倍になるケースがあります。
路線価ベースで評価額3,000万円の土地を更地のまま10年間保有し続けた場合の固定資産税累計は、住宅用地として活用した場合のそれを大きく上回ることがあります(あくまで試算ベース。実際の税額は市区町村や評価額によって異なります)。「何もしていない」のに、毎年コストが発生し続けている——この感覚は実感しにくいですが、数字で見るとかなり効いてきます。
余談ですが、私自身も以前、「売却か活用か」を迷うあいだに1年以上判断を先送りしてしまい、その間の固定資産税をあとから計算して少し後悔した経験があります。「動かない」にもコストがある、というのは頭でわかっていても、通知書を見るまで実感しにくいものです。
定期預金・REIT・株式投資、土地問題の「解決策」になるか正直に並べてみる
土地を持ったまま他の資産で運用するという選択肢も、当然あります。それぞれの性格を整理しておくと、自分に向いている選択が見えやすくなります。
定期預金・国債
元本保証の安心感はありますが、2025年時点の金利水準では実質的な資産増加はほぼ見込みにくい状況です。インフレ局面では購買力の目減りが静かに進みます。「守り」としての役割は果たせますが、土地の税負担を相殺するには力不足なことが多いです。
REIT(不動産投資信託)
少額から不動産に分散投資でき、流動性も高い。ただし、保有している土地そのものを活用することはできません。相続税評価の圧縮という観点では、REITは土地に建物を建てる方法には及びません。資産の一部として持つには合理的ですが、「この土地をどうするか」という問いの答えにはなりにくいです。
株式投資
長期・分散で運用すれば資産形成には有効です。ただ、値動きへの耐性が求められますし、土地の固定資産税は株の含み益がどれだけあっても止まりません。土地問題の解決策としては、直接的な効果を期待しにくい選択肢です。
アパートの「表面利回り8%」が手元に届くまでに何が引かれるか
利回りという言葉は頻繁に使われますが、表面利回り(年間賃料収入÷総投資額)と実質利回り(管理費・修繕費・税金・空室ロスを引いた後)は、かなり開きが出ることがあります。
モデルケースとして、総投資額5,000万円・表面利回り8%の木造アパートを想定すると、年間賃料収入は約400万円。そこから管理費(約5%)、修繕積立(約1%)、固定資産税、空室率(想定10%)などを差し引くと、手残りベースの実質利回りは4〜5%台になることも珍しくありません。立地・建物状態・融資条件によって結果は大きく変わります。
一方で、土地を自己所有している場合は土地の取得コストがゼロになるため、投下資本に対する利回りは改善しやすくなります。地主さんが有利なのはここです。ただし、建物の老朽化リスクや入居需要の読み方は慎重に見る必要があります。
トレーラーハウスが郊外地主に刺さる理由は「撤退できること」だった
ここ数年、PACO INVESTのトレーラーハウス投資が郊外地主層に関心を持たれるケースが増えています。相談を受けた50代の方に理由を聞くと、最も多く挙がるのが「撤退のしやすさ」です。木造2×4構造のトレーラーハウスは移動・撤去が可能であるため、需要が変わった場合に建物を残すリスクを抑えやすいという特性があります。
初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって幅があり、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(モデルケース。物件仕様や立地によって変動します)。アパート経営と比べると総投資額は小さくなりやすい分、1棟あたりの収容人数も限られます。Airbnb等での宿泊運用(PACO Stay)と組み合わせた場合、想定利回り10〜20%となるモデルケースも存在しますが、立地・運用方法・稼働率によって結果は大きく異なります。「地方の遊休地×宿泊需要」が成り立つかどうかの見極めが、最初の判断ポイントになります。
「アパートか否か」より先に問うべきこと——この土地の立地特性は何か
正直に言うと、アパート経営が最適かどうかは土地の条件次第です。駅から徒歩圏内・人口が安定している地域なら、アパート経営は依然として有力な選択肢です。一方、郊外・観光地近接・車社会の地域であれば、宿泊用途や別の活用法の方が収益性が出やすいケースもあります。
収益性・流動性・相続税対策の3軸を自分の優先順位で並べ直してみると、比較の軸が自然と見えてきます。「アパートを建てるかどうか」を先に決めようとするより、「この土地の立地特性は何か」から始める方が、判断の精度は上がりやすいと思います。
今日できる小さな一歩——固定資産税の通知書を開いてみる
いきなり業者に相談するのがハードルに感じるなら、まず現在の固定資産税の通知書と土地の登記情報を手元に揃えて、「この土地の住宅用地特例が適用されているか」を確認するところから始めてみてください。それだけで、税負担の現状が数字として見えてきます。比較はそこからで十分です。
よくある質問
相続した土地にアパートを建てると、相続税評価はどう変わりますか?
建物を建てて賃貸に供した場合、土地は「貸家建付地」として評価され、更地評価より一定割合(借地権割合・借家権割合に応じて)低くなるのが一般的です。ただし、圧縮率は地域・路線価・建物の状況によって異なります。具体的な数字は税理士への確認をおすすめします。
郊外の土地でアパート経営をするのは、やはりリスクが高いですか?
一概には言えませんが、人口減少が進む郊外での新築アパートは、10〜20年後の空室リスクを慎重に見込んでおく必要があります。周辺の賃貸需給・雇用の動向・競合物件数は自分でも確認することをおすすめします。収益シミュレーションは「満室想定」だけでなく、空室率20〜30%のケースでも手残りが出るかどうかを試算しておくと、判断がしやすくなります。
トレーラーハウス投資はアパート経営と、融資の受けやすさで差がありますか?
アパートは不動産担保融資として銀行融資が組みやすい一方、トレーラーハウスは動産扱いになるケースがあるため、融資条件が異なることがあります。金融機関によって判断が分かれますので、複数行への打診と自己資金の準備状況を整理したうえで検討するのが現実的です。融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートが想定されるケースもありますが、個別の状況により大きく異なります。