区分マンション2戸とアパート1棟。ここまで積み上げてきた方なら、数字の読み方も出口の考え方も、ひと通りは経験されているはずです。問題はむしろ「次」です。同じ打ち手を重ねるのか、別の道を探るのか——先日、まさにその岐路に立つ方からご相談を受けました。

「表面利回り9.2%」の連絡が来たとき、Bさんが最初に確認しなかったこと

ご相談者(以下、Bさん。個人を特定できないよう詳細を変えたモデルケースです)は38歳の会社員で、年収は800万円台。不動産投資歴5年で、キャッシュフローも黒字で回っています。そこに地元の不動産会社から「表面利回り9.2%、築19年の木造アパートが出ました」と連絡が入りました。

Bさんが最初に確認したのは「月々のキャッシュフロー」でした。ところが試算を進めるうちに、3つの数字が引っかかってきた、と言うんです。私自身も以前、似たような局面で「月次キャッシュフローだけ見て動いた」ことがあり、後から修繕費の試算が甘かったと気づいた経験があります。Bさんの話を聞きながら、その反省が頭をよぎりました。

「利回り9%台」の内側で、3つの数字が崩れていく

引っかかった数字のひとつ目は、稼働率の前提です。売主の資料は満室想定で計算されていました。ただ、現地確認をすると周辺の類似物件に空室が目立つエリアで、「満室継続」を前提に回収期間を計算するのは楽観的すぎる、とBさんは判断しました。

ふたつ目は修繕の時期。築19年の木造であれば、給排水・外壁・屋根のいずれかが「そろそろ」というタイミングです。売主の修繕履歴を確認したところ、外壁塗装は11年前が最後。購入後2〜3年以内に大規模修繕が発生する可能性があり、その費用を織り込むとモデルケースの試算では実質利回りが6%台まで落ちる計算になりました。

みっつ目は出口の価格帯。築19年からさらに10年保有すると築29年です。木造アパートは築30年前後から買い手の属性が投資家限定になりやすく、売却価格を保守的に見積もると、トータル収益が当初想定より圧縮されるシナリオが出てきました。物件・エリアによって状況は大きく異なりますが、Bさんは「ここまで考えると、積極的に動けない」と感じたと話していました。

「3棟とも木造アパート」になることが、分散ではなく集中になる理由

Bさんが踏み止まったのは、その物件の数字だけが理由ではありませんでした。もう少し話を聞くと、「木造アパートばかりが3棟になるのが、なんとなく怖い」という感覚があったそうです。

これは感覚論ではなく、合理的な判断だと思います。同じ構造・同じ築年帯・同じ賃料帯の物件を複数持つと、金利上昇・修繕コスト上昇・人口動態の変化が起きたとき、ポートフォリオ全体が同じ方向に揺れます。「棟数を増やした=分散した」は、必ずしも成立しません。

別アセットを「試す」前に確認すべき尺度——トレーラーハウスを例に

Bさんとの話の中で、私はトレーラーハウス投資の話を少しだけしました。木造2×4構造のユニットを地方の観光地や高速道路IC近辺に設置し、Airbnb等で短期運用するモデルです。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、構造上「動かせる」ため、撤退の選択肢を持てる点が中古木造アパートとは性格が異なります。

Bさんが反応したのは「撤退できる」という点でした。中古アパートは一度買うと、売り時を間違えると損失が確定します。トレーラーハウスは最悪の場合、別立地への移設や売却という選択肢が残るケースがあります。移設コストや再設置の手間はかかりますし、すべての局面で有効な手段ではありません。ただ「選択肢の数が違う」という感覚は、Bさんには新鮮に映ったようでした。

3棟目の前に「急いで動く理由は何か」を一度確認する

最終的にBさんはその物件の購入を見送り、今は別アセットを含めた比較検討を続けています。私からは「急いで動く理由は何かを確認してください」とだけお伝えしました。年収800万円台・既に複数棟保有という立場であれば、少し時間をかけて選んでも、機会損失より判断ミスの方がコストが高くつきます。

中古アパート投資は、正しい物件・エリア・タイミングが揃えば有力な選択肢です。ただ「次も同じもの」という判断は、意識的に選んだ結果であるべきで、なんとなく続けた結果であってはいけない——これは私自身が2棟目を買い急いで、後から「なぜこのタイミングで動いたのか」と自問した経験から来ています。

よくある質問

既にアパートを1棟持っていますが、2棟目の融資審査では何が重視されますか?

一般的には、1棟目の返済実績・稼働状況・年収との返済比率が審査の中心になります。ただし金融機関によって評価基準が大きく異なるため、既存物件のキャッシュフロー実績を整理した上で複数行にヒアリングするのが現実的な進め方です。「この条件なら通りやすい」と一律に言える基準はなく、個別の状況次第というのが正直なところです。

築20年前後の木造アパートは、10年後に売れるのでしょうか?

エリア・管理状態・積算評価によって状況は大きく異なります。築年数が進むと買い手の属性が投資家向けに限定されやすい傾向はあります。購入前に「現時点で同条件の築25〜30年物件が近隣でどう売れているか」を確認しておくことが、出口の現実的な想定につながります。

トレーラーハウス投資は、アパートの代わりになりますか?

代替というより「性格の異なる選択肢」と考えた方が正確です。アパートは長期賃貸・安定収入型、トレーラーハウスはAirbnb等を活用した短期運用型が多く、収益の波の形も異なります。どちらが優れているというものではなく、ポートフォリオの中でどんな役割を担わせるかによって判断が変わります。詳しくはPACO Blogの各記事を参考にしてください。