アパートをすでに1棟持っていると、次の物件を見るときの目が変わってきます。「利回り何%なら買いか」という感覚が自然と身についてくる。ただ、その感覚こそが、ときに判断を狂わせます。数字に慣れた投資家ほど、一度立ち止まって確かめてほしいことがある。今日はその話をさせてください。

「高利回り=良い物件」という直感が逆に働くとき

不動産投資の世界で長く信じられてきた常識があります。「利回りは高いほどいい」というものです。8%より10%、10%より12%と、数字が大きいほど優れた投資先だという感覚は、ある意味では正しい。でも、それが成立するのは「分母(物件価格)と分子(家賃収入)が同じ条件で比較できるとき」だけです。

実際の市場では、高利回りの物件には理由があります。築古で修繕リスクが高い、空室が常態化している、立地に需要の裏付けがない——こういった要因が価格を押し下げているからこそ、利回りが高く見えます。逆に言えば、「利回りが低い物件」は市場がその収益の安定性に高い評価をつけている、とも読める。利回りの高さは、リスクの裏返しである場合があります。

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実質利回りを出した後に、もう一段階ある——DCRという指標

「表面利回りじゃなくて実質利回りで見ています」という方は多い。管理費・固定資産税・修繕積立を差し引いて計算する、あの数字ですね。それは正しいアプローチです。ただ、実質利回りを出した後に、もう一段階の計算を見落としているケースが意外と多いと感じています。

それが「デットカバレッジレシオ(DCR)」——年間の純営業収益(NOI)がローン返済額の何倍あるかという指標です。たとえば融資期間20年・金利1.8%・自己資金20%という条件を前提にすると、表面利回り8%・実質利回り5%台の物件であっても、NOIが年間返済額を1.2倍以上カバーできているかどうかは物件ごとに大きく異なります(モデルケース。実際の数値は物件仕様・融資条件により変動します)。ここを確認せずに「実質5%なら悪くない」と判断してしまうと、キャッシュフローが薄いまま保有し続けるリスクが生じます。

入口の利回りより「何年で出られるか」の方が、今の市場では効く

すでに複数棟を持っている方が次の一手を考えるとき、「入口の利回り」よりも「出口の読みやすさ」の重要度が上がってきます。アパートは取得後10〜15年で、建物の経年と融資残高の関係が変化します。売却したいタイミングで買い手がつかない、あるいは利回り圧縮が起きて希望額で売れない——このリスクを入口の段階でどこまで織り込めるかが、規模拡大フェーズでの分かれ目になりえます。

具体的には、売却時の想定キャップレートを現在のエリア相場から逆算して、10年後の想定売却価格をざっくりでも試算してみる。そのうえで「この価格で売れないと困る」というボトムラインを設定しておくと、購入判断に軸が生まれます。実は筆者自身、中古アパートを検討した際にこの出口試算を甘く見て、後から「想定より2割低い価格でしか売れない試算になる」と気づいて冷や汗をかいた経験があります。利回りの確認より先に、出口を書き出す習慣をつけてから判断が変わりました。

「別アセットで分散」は逃げではなく、ポートフォリオ設計の話

もう1棟アパートを買うか、別のアセットクラスに分散するかという悩みは、多くの投資家が直面します。ここで「分散=リスク回避の後ろ向きな選択」と捉えてしまうと、判断軸がずれます。本来は、ポートフォリオ全体の流動性・税務・融資余力のバランスを設計する話です。

たとえばトレーラーハウス投資のような動産ベースのアセットは、固定資産税の扱いや減価償却の期間がアパートとは異なります。木造2×4構造のトレーラーハウス(PACOなど)を1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで取得し、Airbnb等で運用するモデルは(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパートとは異なるキャッシュフロー構造を持っています。減価償却を活用した所得圧縮効果が想定されるケースもあり、年収800万円台のサラリーマン投資家が税務的な補完として検討することがあります。ただし、合うかどうかは個別の状況次第であり、一概には言えません。

次の一手を急がない、ということの価値

規模拡大を急ぐ必要がない局面では、「次に何を買うか」よりも「今持っているものをどう最適化するか」を先に考える方が、長期的に手元に残るキャッシュが増えるケースがあります。既存のアパートの管理コスト見直し、融資条件の借り換え検討、賃料設定の再評価——地味ですが、こちらの方が即効性のある改善につながることは少なくありません。

次の物件を探す前に、今のポートフォリオのDCRと出口シナリオを一度書き出してみる。その作業をしてから改めて比較すると、「あの8%の物件」が以前とは違って見えることがあります。

よくある質問

表面利回りと実質利回り、どちらを基準にすべきですか?

基準にするなら実質利回りの方が実態に近いですが、それだけで判断するのも注意が必要です。実質利回りはあくまで「満室・想定コスト」ベースの数字です。空室率の変動リスクや大規模修繕のタイミング、融資返済比率(DCR)と合わせて読むことで、初めて「使える数字」になります。あくまで参考指標のひとつとして扱うのが現実的です。

アパートとトレーラーハウス投資では、税務上の扱いはどう違いますか?

アパート(建物)は法定耐用年数に基づいて減価償却が行われますが、木造の場合は22年が基準です。一方、トレーラーハウスは車両・動産として分類されるケースがあり、耐用年数や計上方法が異なる場合があります。具体的な税務処理は物件の仕様や取得状況によって変わるため、税理士への確認を強くお勧めします。このブログの記述は情報提供であり、税務アドバイスではありません。

既存のアパートを持ちながら別アセットを追加する場合、融資への影響はありますか?

既存ローンの残債と物件収益のバランスが、新規融資の審査に影響するケースがあります。特に属性(年収・勤務先)が良くても、既存の借入総額に対して収益が薄いと評価が下がることがあります。追加取得の前に、金融機関ごとの審査基準の違いや動産担保融資などの選択肢についてファイナンシャル面の整理をしておくと、動きやすくなる場合があります。