その「常識」は、売り手の利益構造から生まれている
法人税と個人所得税、両方の対策を同時に考えなければならない。不動産は未経験だけど、株や投信だけでは分散が足りない気がしている——そう感じながら中古アパートを調べると、「新築の方が安心」「中古はリスクが高い」という情報が目につきます。ただ、この"常識"を声高に発信しているのが誰かを考えると、話が変わってきます。
新築アパートの価格には、建設費・販売手数料・デベロッパー利益がすべて上乗せされています。売り手の利幅が最も大きいのは新築です。「新築が安心」という言葉の裏に「売り手にとって都合がいい」という構造があることは、一度疑ってみる価値があります。
中古が「割安」なのではなく、新築に「プレミアム」が乗っている
同じエリアで、新築アパートの表面利回りが5〜6%、築10〜15年の中古アパートが7〜9%で売られているケースはよくあります。この差は「中古が古いから安い」のではなく、新築価格に含まれていたプレミアムが時間とともに剥落した結果です。
モデルケースとして「都市近郊・築12年・木造・1,800万円で購入、年間家賃収入144万円」を想定すると、表面利回りは8%になります。同じ立地の新築で利回り5%の物件を買った場合と比べると、キャッシュフローの出方は試算上で明確に異なります。ただし物件の状態・修繕履歴・融資条件によって実態は大きく変わるため、個別精査が前提です。
「修繕コストが怖い」——その一点だけで判断すると見誤ります
中古アパートへの警戒として最もよく出るのが修繕リスクです。確かに築年数が上がると設備更新や外壁補修が発生します。ただ、これはキャッシュフロー計画に最初から織り込める費用です。「見えないリスク」ではなく「見積もれるコスト」として扱えるかどうかが、経営者として不動産を持てるかどうかの分岐点だと感じています。
対して新築アパートには、「竣工後10年以内に空室率が想定を下回り、ローン返済だけが残る」という見えにくいリスクが存在します。修繕コストは貸借対照表に現れますが、こちらは収益計画の楽観的前提に埋もれがちです。どちらが本当に「見えないリスク」かは、冷静に比較する必要があります。
減価償却の「即効性」は、築年数が高いほど出やすい構造になっています
木造の法定耐用年数は22年で、築22年超の物件は耐用年数が短縮される計算になります。同じ取得価額でも毎年の償却額が大きくなるため、所得圧縮のスピードが変わります。年収1,800万円の個人所得がある場合、高い税率区分に該当しているため、不動産所得の赤字が課税所得を圧縮する効果は試算上で相応に出やすい構造です。
ただし実際の効果は取得価額の内訳(土地・建物比率)、融資金利、その他の所得状況によって異なります。「節税になると聞いた」だけで動くのは危険で、税理士と連携した上での判断が前提です。
物件を探す前に、融資枠と名義の整理を先にやるべき理由
中古アパート投資を検討するとき、最初にやるべきことは物件探しではありません。自分の融資枠と所得状況を先に整理することです。法人と個人、どちらの名義で持つかという選択だけで、税効果もキャッシュフローも変わります。
実は私自身、最初のアパートを買うとき「とにかく利回りが高い物件を探す」という順番で動いてしまいました。後から融資条件と税引き後収益を計算し直したとき、想定していたキャッシュフローが半分以下になることに気づいて、かなり焦りました。物件を見る前に手元の数字を整理する——この順番を変えるだけで、見えてくる景色は大きく変わります。
なお、トレーラーハウスを活用したPACO INVESTのような選択肢は、アパート経営とは異なるアプローチで資産分散と節税を組み合わせたい方が比較対象として調べるケースも増えています。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、仕様・立地・付帯工事により上下します。中古アパートと横並びで比較すると、自分に合った形がより鮮明になることがあります。
よくある質問
中古アパートは融資が通りにくいと聞きますが、実際はどうですか?
築年数や担保評価によって融資条件が変わることは確かです。特に築古物件は金融機関によって評価が大きく異なるため、1行で断られても別の金融機関では検討対象になるケースがあります。地方銀行・信用金庫など複数行にあたることが現実的な対処です。年収や法人の財務状況が整っている場合、個人属性で補完できる場面もありますが、これは個別の審査によります。
法人取得と個人取得、どちらが有利かはどう判断すればいいですか?
一概には言えません。個人取得であれば減価償却による所得圧縮が高い税率区分と掛け算になりやすく、短期的な節税効果が出やすい構造です。一方、法人取得であれば出口戦略の柔軟性や相続対応力が変わるケースがあります。年収・法人の財務状況・保有期間の目安によって最適解が異なるため、税理士・会計士との事前相談が不可欠です。
中古アパートの「出口」はどう考えればいいですか?
取得時点から「何年後にいくらで売れるか」を想定するのが理想ですが、地方物件ほど出口の読みにくさが上がります。ただし、売却益より「保有期間中のキャッシュフローと節税効果の合計」で回収できる設計にしておくと、出口への依存度を下げられます。売却益をあてにした逆算計画は取得価格の根拠が甘くなりやすく、注意が必要です。