「顧問税理士からアパートを勧められたが、何を確認すればいいかわからない」——40代の経営者の方からこういう相談を受けるたびに、私自身が不動産会社勤務時代に感じていた居心地の悪さを思い出します。表面利回りの数字を並べた資料を何百枚と作りながら、「この数字だけ見て買う人が出たらまずいな」と内心思っていました。今回はその経験も含め、よく受ける4つの質問に正直に答えます。
「節税になる」と「キャッシュが増える」は、なぜ別の話なのか
Q. 顧問税理士から「アパートで節税できる」と言われました。本当ですか?
半分は本当で、半分は確認が必要です。減価償却を活用した所得圧縮効果は、特に木造中古物件で出やすい構造です。耐用年数が短い分、年間の償却額が大きくなるため、高所得の経営者にとって帳簿上の効果は想定されます。
ただし、「節税になる=手元の現金が増える」ではありません。減価償却は帳簿上の費用ですが、毎月の元本返済は実際に現金が出ていくにもかかわらず損金になりません。モデルケースで試算すると、所得税・住民税の節税額が年間80万円でも、元本返済で年間120万円のキャッシュが出ていくケースは十分あり得ます。節税効果と投資としての収支は、必ず別々に計算してください。
「表面利回り8%」は、なぜそのまま信じてはいけないのか
Q. 物件資料に「利回り8%」と書いてありました。これを基準に考えていいですか?
表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割っただけの数字です。管理費・修繕費・空室損・固定資産税・ローン返済は一切含まれていません。私が元不動産会社勤務時代に何百枚も見てきた資料の中で、表面利回りと実質手取りがほぼ一致した物件は一件もありませんでした。
実質的な手取りを試算するには、少なくとも次の前提が必要です。稼働率は満室ではなく80〜85%で計算する、管理費は家賃収入の5〜7%を見込む、大規模修繕の積立を年間1〜2%程度確保する。これらを加味すると、表面8%の物件が実質3〜4%台に着地するケースは珍しくありません(モデルケース。物件・立地・築年数により変動します)。「表面利回りは入口の数字でしかない」という認識を出発点にしてください。
融資がつきやすい物件と、つきにくい物件——どこで分かれるのか
Q. 不動産投資は融資を使うと聞きます。どんな物件なら融資がつきやすいですか?
実務的に大きいのは「築年数と担保評価の乖離」です。法定耐用年数を超えた木造物件は担保評価がほぼゼロになるケースがあり、そうなるとフルローンは難しく、自己資金を相当額積む必要が出てきます。
一方、RC造や築浅の物件は評価が出やすい半面、価格が高く利回りが圧縮されやすい。「融資がつきやすい=投資として有利」とは限りません。経営者の方であれば法人名義での取得も選択肢になりますが、その場合は個人の属性とは別に法人の財務状況が審査されます。融資条件は属性・物件・金融機関の組み合わせで大きく変わるため、物件を絞り込む前から複数行に打診しておくことをお勧めします。
出口まで考えたとき、中古アパートを「持ち続ける」判断はいつ正しいのか
Q. 最終的に売れなければ意味がないと思っています。出口戦略はどう考えますか?
最も鋭く、答えが難しい質問です。不動産の売却価格は、売るタイミングの市況・物件の状態・金利環境に大きく左右されます。「買った価格より高く売れる」という前提は、現在の中古アパート市場では楽観的すぎるケースが多いと感じています。
現実的な出口として確認しておきたいのは2点です。①保有期間中のキャッシュフローで投資を回収できているか、②残債が物件評価を下回る状態(担保余力がある状態)を維持できているか。この2点が成立していれば、売れなくても保有し続ける選択肢が残り、損切りを迫られるリスクが下がります。「高く売ること」より「売らざるを得ない状況を作らないこと」が出口戦略の本質だと考えています。
この記事を読んだあとに、最初に確認すべき4つのこと
整理すると、①節税効果とキャッシュフローは別で計算する、②表面利回りは実質利回りに換算する、③融資条件は物件選定と並行して複数行に打診する、④出口は「高値売却」より「売らずに済む設計」を優先する——この4点です。仕組みを理解してから動くほど、判断の精度は上がります。
なお、PACOではトレーラーハウスを活用した宿泊型投資(PACO INVEST)も扱っています。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)。中古アパートとはリスク構造が異なるため、比較対象として気になる方はご相談ください。投資判断はご自身の状況を踏まえてご検討ください。
よくある質問
減価償却による節税効果は、何年くらい続きますか?
木造中古物件は耐用年数が短く、場合によっては3〜5年程度で償却が終了するケースもあります(物件の築年数・残耐用年数により異なります)。償却が終わると帳簿上の費用が減り、課税所得が増加するため、節税効果が逆転する場合があります。購入前に「償却終了後の損益」まで試算しておくことを強くお勧めします。試算はモデルケースであり、個人の税務状況によって結果は異なります。
法人で中古アパートを購入する場合、個人購入と何が違いますか?
法人名義では経費計上の範囲が広がるケースがある一方、金融機関の審査では法人の財務内容が個人の属性と別に評価されます。また、法人から個人への資金移動には配当や役員報酬として税務処理が必要になるため、「法人で持てば自由にお金が使える」わけではありません。法人スキームの活用は、税理士と連携した上で設計することをお勧めします。
不動産投資が初めてでも、中古アパート経営は現実的ですか?
可能ではありますが、初期の学習コストは想定より高くなりやすいと感じています。賃貸管理・修繕対応・確定申告・融資交渉など、経営者であっても初めて直面する実務が多いためです。1棟目は「利益の最大化」より「仕組みを覚える」と割り切って小規模なものから始めるか、信頼できる管理会社・コンサルタントと組む体制を整えることが、現実的な進め方だと思います。