区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきた方が次に悩むのは、「同じ構造をもう一度繰り返していいのか」という問いではないでしょうか。規模拡大か分散か。その判断は利回り計算だけでは出てきません。今回は、同じ局面でよくいただく質問に、できるだけ正直にお答えします。
「2棟目の数字はどう変わりますか?」——利回りより先に、融資条件が変わります
1棟目を持った後、相談に来られる方の多くが「2棟目は融資条件が想定より厳しかった」とおっしゃいます。金融機関から見ると、不動産投資残高が積み上がるほど「与信枠の消化」が進み、金利や融資期間の条件が変わってくるケースがあります。利回りが同じ物件でも、返済比率が上がれば手残りはまったく別物になります。
私自身、1棟目の試算では「融資条件は変わらないだろう」と高をくくっていました。実際に2棟目を打診したところ金利が0.3%上昇し、月次キャッシュフローの計算をゼロからやり直すことになりました。モデルケースとして、借入額8,000万円・期間25年で金利が0.3%上がると、月の返済額は概ね1.5〜2万円程度増える計算になります(金利水準や元利均等/元金均等の別によって変動)。2棟目を検討する前に、今の金融機関での与信残高と、別の金融機関での新規打診可能性を両方確認しておくことをお勧めします。
「利回りが同じなら、アセットを変える理由はありますか?」——出口の読みやすさが、アセットによって大きく違います
数字に厳しい方ほど「利回り8%はどこも8%だ」と考えがちですが、出口の読みやすさはアセットによってかなり異なります。木造アパートの場合、築年数が進むと融資がつきにくくなるため買い手が絞られ、売却価格が想定より落ちるケースがあります。一方、別のアセットでは減価の仕方や流動性の構造が違います。
たとえばトレーラーハウスのような非固定資産型の物件は、不動産登記を要しない構造上、固定資産税の扱いや減価償却の期間が木造アパートとは異なります。出口として「撤去・移設・売却」という選択肢があること自体、アパートにはない性格です。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容によって上下します。同じ資金規模でも、ポートフォリオの中での役割は変わってきます。
「減価償却の残りが薄くなってきたのですが、どう考えればいいですか?」——税の出口にも、設計が要ります
アパートを保有して数年が経つと、「減価償却費が減ってきて、課税所得が増えてきた」という局面に入ります。年収800万円のサラリーマン投資家の場合、帳簿上の利益が増えても手元の現金は出ていかないのに税負担だけが重くなる、という状態になりがちです。見逃しやすいタイミングです。
この局面で動く選択肢の一つが「新しい減価償却資産を追加する」ことですが、闇雲に物件を増やすのは与信枠の話に戻ります。耐用年数の短いアセット(木造中古や特定の動産系)を組み合わせて減価償却を立て直す設計をされている方もいます。ただし、これは税理士との綿密な確認が前提です。所得圧縮効果が想定されるケースはありますが、個別の税務状況によって結果は変わります。口頭での「大丈夫です」が後から覆った事例も、残念ながら耳にしています。
「地方の物件って、出口が怖くないですか?」——「怖い」の中身を分解してみます
「地方は空室リスクが高い」「売れない」という不安は、実際には立地の解像度の問題であることが多いです。「地方」と一言で言っても、インターチェンジ周辺・観光地隣接・工業団地近傍では需要の性質がまるで違います。怖いのは「地方」という属性ではなく、「需要の裏付けを確認していない立地」です。
私がトレーラーハウス2棟を運用している場所もいわゆる地方ですが、Airbnbでの稼働状況を事前に確認したうえで設置しています。PACO Stayとの連携で運用しているケースでは、Airbnb評価4.8という数字が出ているケースもありますが、これは特定の立地・仕様・運営体制が揃った条件下での数字です。立地の見極めこそが、地方投資の核心だと考えています。
「次の一手」を焦る前に、今の1棟の出口シナリオを一度書いてみてください
アパート1棟を持って「次」を考えるとき、「同じ構造をもう一度繰り返す」か「別の構造を試す」かの二択に見えがちです。ただ、どちらが正解かより先に、今の融資余力・税の状況・出口までの時間軸を整理することが判断の前提になります。
焦って動いて後悔した案件を、私はこれまでいくつか見てきました。「次の一手」を決めるより前に、今の1棟の出口シナリオを一度紙に書いてみてください。それをやった後で見える景色が、だいぶ変わることがあります。
よくある質問
アパートからトレーラーハウス投資への切り替えは、融資面でどう変わりますか?
トレーラーハウスは不動産担保融資ではなく、動産ローンや事業融資での対応となるケースがあります。不動産融資残高を圧迫しにくいという側面がある一方、金利水準や融資期間の条件は不動産ローンと異なることが多いです。金融機関によって対応が大きく変わりますので、複数行への打診が現実的です。
減価償却目的でアセットを追加する場合、どんな点を税理士に確認すべきですか?
主な確認点は「耐用年数の判定根拠」「償却方法(定額・定率)の選択」「損益通算の可否」の3点です。特に不動産以外のアセットは税務上の取り扱いが個別判断になることが多く、事前に書面で確認しておくことをお勧めします。口頭での「大丈夫です」は後から覆ることがあります。
アパートの「出口シナリオ」を書く際、どこから手をつければいいですか?
まず「何年後に売る想定か」を仮置きして、その時点での築年数と残存耐用年数を確認するところから始めると整理しやすいです。融資がつく買い手が残っているかどうかは、売却価格の前提に直結します。次に、その価格で売れた場合の手取り(税引後)を計算すると、現在の保有継続コストと比較できるようになります。