相続で土地を受け継いだものの、固定資産税だけが毎年かかり続ける——そういう状況で「アパートを建てて利回りを確保しよう」と動き出す方は多いです。不動産会社に勤めていた頃、そうした地主さんの相談に何十件と立ち会いました。そして後から「あの試算、正しかったか」と胸が痛くなるケースも、正直、ありました。
試算書の8.2%が、実際の手取りでは4.3%になっていた
30代後半、初めて中古アパートを購入したときの話です。業者から提示された表面利回りは8.2%。月額家賃収入の合計を物件価格で割った数字で、「悪くない」と思って購入しました。ところが1年後に通帳を見て凍りつきました。
管理委託費、修繕積立、固定資産税、火災保険、空室期間のロス——これらを引いた実質利回りは4.3%程度。さらにローン返済を差し引くと、月々のキャッシュフローはほぼゼロでした。「利回り8%」という数字は計算上は正しかった。ただ、その数字が何を含んでいないかを、私は確認していなかったのです。
「表面」と「実質」の差は、なぜ郊外ほど広がるのか
アパート経営で語られる利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。表面利回りは満室想定の年間家賃収入を購入価格で割るだけ。実質利回りは運営コストや空室リスクを加味します。この差は郊外の物件ほど大きくなりやすい傾向があります。
郊外の遊休地にアパートを新築する場合、建築コストに加えて駐車場の整備、外構、上下水道の引き込み工事が発生するケースもあります。「土地はタダ」という前提で試算した表面利回りが高く見えても、総投資額を正確に積み上げると数字がかなり変わってくる——モデルケースでは2〜3ポイント以上の乖離が生じることも珍しくありません。
相続対策で建てるなら、「20年後の解体費」を先に試算してみてください
郊外の土地活用でアパートを建てる場合、建物の評価額引き下げによる相続税圧縮という仕組みは確かに存在します。ただ、重要なのは「そのアパートを将来どうするか」という出口の想定です。
20〜30年後に建物が老朽化したとき、解体費用は誰が負担するのか。郊外のアパートは買い手がつきにくいケースもあり、売却が思うように進まない場面も想定されます。減価償却を活用した所得圧縮効果はモデルケースとして試算できますが、それが手元のキャッシュプラスに直結するとは限りません。不動産会社勤務時代に一番もどかしかったのは、この「出口の話を誰もしない」雰囲気でした。
「撤去できる」という選択肢が、なぜ意外に強いのか
アパート経営と比較されることが増えてきた手法の一つに、トレーラーハウスを使った土地活用があります。ユニットを土地に設置してAirbnb等での宿泊運営や賃貸運営を行うもので、PACOが扱っているのもこの形態です。
アパートと大きく異なるのは、撤去・移設が比較的容易な点です。うまくいかなければ別の活用方法に切り替えやすく、土地を長期間縛り続けるリスクが小さい。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース/物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変動)です。利回りもケースによって大きく異なるため「これなら確実」とは書けませんが、構造的な柔軟性はアパートには出しにくい特徴だと考えています。
試算書を受け取ったら、まずこの2行だけ確認してください
遊休地の活用を検討するとき、業者から試算書をもらったら「実質利回りの前提条件」と「元本返済後の月次キャッシュフロー」の行だけ確認してみてください。満室想定ではなく稼働率80%程度での試算になっているか。修繕費と管理費が含まれているか。この2点を聞くだけで、提案の質がある程度わかります。
私が最初の失敗から学んだのは、「利回りは出発点にすぎない」ということです。その数字がどんな前提の上に立っているかを確かめる習慣が、受け継いだ土地を守ることにつながると、今でも思っています。
よくある質問
郊外の土地にアパートを建てると、相続税はどのくらい下がりますか?
建物の評価額引き下げによる相続税圧縮の仕組みは存在しますが、土地の評価額・建築費・借入額・相続人の構成によって効果は大きく異なります。「必ずこれだけ下がる」と断言できる数字はなく、相続税専門の税理士との試算が出発点になります。節税効果だけを目的にした場合、建築後のキャッシュフローや出口の想定が後回しになりやすい点には注意が必要です。
表面利回りと実質利回りの差は、だいたいどのくらいですか?
管理費・修繕費・空室ロスなどを加味すると、表面利回りから2〜3ポイント以上下がるケースが多いとされています(モデルケース)。郊外の物件では空室率が高めになる傾向があるため、差がさらに広がることも想定されます。物件の状態・立地・管理体制によって個別に変わるため、あくまで参考値としてご覧ください。
トレーラーハウス投資は、アパート経営と比べてどんな立地に向いていますか?
撤去・移設が比較的容易なため、立地や需要が合わなかった場合に方針転換しやすい点がアパートとの大きな違いの一つです。ただし、宿泊運営(Airbnb等)を前提とする場合は観光需要のある立地であることが重要で、郊外でも「人が来る理由があるエリア」かどうかの見極めが先決になります。どちらが向いているかは土地の立地条件と資金計画によって変わるため、一概には言えません。