iDeCoとNISAは順調。でも毎月の給与明細で引かれる所得税と住民税を見るたびに、「もっとうまい使い方があるはずだ」と感じている方は多いと思います。32歳前後の会社員の方から、中古アパート投資に関する相談をよくいただきます。今回は実際の数字を使って、「利回り8%」という言葉の中身を一緒に確認してみましょう。
「利回り8%」を月の手取りに換算すると、1.3万円になった
不動産情報サイトに「利回り8%」と書かれた物件があったとします。たとえば価格2,000万円なら、年間家賃収入の想定は160万円、月換算で約13.3万円です。ただしこれは「表面利回り」——諸経費を一切引いていない数字です。
実態を確認するために、以下のモデルケースで実質的な月次収支を試算してみます。
モデルケースの前提条件
・物件価格:2,000万円(木造築20年、4室構成)
・融資:1,600万円(金利2.0%、20年返済)
・自己資金:諸費用込み約500〜600万円(融資条件により上下します)
・表面家賃収入:月13.3万円(年160万円)
・空室率:10%(業界でよく使われる標準的な想定値)
・運営経費(管理委託・固定資産税・修繕積立等):年間約30万円
月ごとの収支に落とすと
家賃収入(空室10%控除後):年約144万円 → 月12万円
ローン返済:月約8.2万円
運営経費:月約2.5万円
手残り(税引前):月約1.3万円
「月1.3万円……思ったより少ない」。これが正直な感想だと思います。私自身も最初の試算でここで手が止まりました。ただ、この構造を理解したうえで次の話に進む意味があります。
それでも投資として成立しうる理由は「減価償却の4年間」にある
年収550万円の会社員にとって、この投資の本当の価値は月の手取りだけではありません。木造建物の法定耐用年数は22年。築20年の物件なら「中古の簡便法」で4年の償却期間が使えるケースがあります(実際の適用可否は税理士への確認を推奨します)。
仮に建物評価を1,200万円として4年均等償却すると、年300万円の減価償却費が計上できる想定になります。年収550万円の方がこの経費を計上した場合、課税所得が大きく圧縮される可能性があります。所得税率20%のケースでモデル試算すると、年間60万円前後の税負担軽減が想定されます——ただし実際の効果は個人の税務状況や物件条件により異なります。
ただし、これが肝心なのですが、この節税効果は「4年間だけ」です。償却が終わった後の収支が単独で成り立つかどうかを、購入前に確認しておく必要があります。
「5年目に税金が増えた」——4年後のシナリオを先に描いておくべき理由
減価償却が終わると帳簿上の経費が一気に減り、所得税が跳ね上がるケースがあります。「節税のつもりが、5年目に税負担が増えた」という話は珍しくありません。対策としては、売却(出口)のタイミングを意識することと、修繕費用のキャッシュを積み立てておくことが挙げられます。
私が実際に痛感したのは、「築20年の木造は修繕がいつ来るか読めない」という点です。給湯器の交換だけでも15〜20万円飛びます。月1.3万円の手残りは、修繕1回で数ヶ月分が消える計算です。手残り額だけでなく、修繕リザーブをどう確保するかを最初の試算に組み込んでおくことをおすすめします。
中古アパートと比べたとき、他の選択肢はどう見えるか
節税と副収入の両方を狙う手段は中古アパートだけではありません。たとえばPACO INVESTが扱う木造2×4構造のトレーラーハウス投資では、観光立地での短期宿泊運用(Airbnb等)を組み合わせたモデルが取られることがあります。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事の内容により上下します。
中古アパートが「安定した賃貸収入×減価償却節税」を主軸にするのに対し、トレーラーハウスは「稼働率次第の変動収入×短期償却」という異なる性格を持ちます。どちらが合うかは、自分のキャッシュフロー耐性とリスク許容度によるというのが、私の正直な見立てです。
まず「自分の数字」を一度作ってみる
今回示したモデルケースはあくまで一例です。物件の立地・築年数・融資条件・所得税率によって、結果は大きく変わります。まずは気になる物件の表面利回りを「実質」に直す計算を、一度自分でやってみることをおすすめします。
計算式は単純です。(年間家賃収入 × 空室率補正 − 年間経費) ÷ 購入総額 = 実質利回り。この数字が4〜5%を割っているようなら、節税効果を含めた総合収支を税理士と確認する価値があります。焦って動く必要はありませんし、動かないことも立派な判断です。
よくある質問
中古アパートの融資審査で、会社員は不利ですか?
必ずしもそうではありません。年収550万円前後の会社員であれば、勤続年数や勤務先の安定性を評価する金融機関もあります。ただし、融資額・金利・返済期間は金融機関ごとに大きく異なります。複数行に打診してみることで、条件の幅が見えてきます。
減価償却が終わった後、売却するのがベストなのでしょうか?
一概には言えませんが、「節税効果が薄れた後も収支が成り立つか」を基準に判断するケースが多いです。売却益(譲渡所得)への課税も発生しますので、売却時期と税率(短期・長期)の関係を事前に確認しておくと、出口戦略が立てやすくなります。
修繕費用はどれくらい積み立てておくべきですか?
目安として、年間家賃収入の10〜15%程度を修繕積立として見ておくケースがあります。モデルケースの年間144万円であれば、年14〜22万円の積み立てが一つの基準になります。築年数が高い物件ほど、給湯器・外壁・屋根・排水管など複数箇所が同時期に劣化する可能性があります。購入前にインスペクション(住宅診断)を入れて、直近の修繕リスクを把握しておくことが現実的な準備です。