区分マンション2戸+アパート1棟まで積み上げてきたなら、次の一手を考えたくなるのは自然な流れです。ただ「同じ路線で規模を伸ばすか、別のアセットに分散するか」という問いは、融資残高・管理の手間・出口の読みやすさが絡み合う複合問題です。今回は読者からよく届く質問に、できるだけ正直に答えます。
「規模拡大か、分散か」——迷いの正体を特定できていますか?
この問いを受けるとき、まず僕が聞き返すのは「何が不安なのか」です。融資枠がそろそろ天井に近いのか、特定エリアへの集中リスクが気になるのか、それとも管理の手間が増えることへの疲弊感なのか。迷いの正体によって、答えはまったく変わります。
たとえば年収800万円のサラリーマン投資家の場合、金融機関によっては与信枠を年収の10〜15倍程度を目安に設定するケースがあります(金融機関ごとに異なります)。アパート1棟+区分2戸を保有済みなら、残り枠の試算は早めにしておいて損はないでしょう。「資金調達の余地がどれくらい残っているか」を把握するだけで、迷いの半分は整理されることがあります。
「2棟目は1棟目より難しい」は本当ですか?
難しい、というより「同じ感覚でやると足をすくわれやすい」という方が正確です。1棟目は多少条件が甘くても経験値として許容できる部分がありますが、2棟目には手元に比較対象がある。同じ表面利回りでも、エリアの需給・築年数・修繕履歴・融資条件の差が積み重なると、実際のキャッシュフローはかなり変わってきます。
特に出口の読みやすさは要注意です。モデルケースとして、地方政令市の築15年木造アパート・表面利回り8%の物件を想定した場合、10年後の売却時に同等の利回りで買い手がつくかどうかは、人口動態と金利環境に大きく依存します。「買った時点の利回り」だけで判断せず、「10年後に誰が買うか」まで考えると、物件選定の基準が自然と変わってきます。
別アセットへの分散、何と比べれば判断しやすいですか?
よく出てくる選択肢は、REITや株式との組み合わせ、あるいは不動産の中でも戸建て・民泊型の運用への転換です。僕自身はアパート経営の後にトレーラーハウス投資に触れる機会があったのですが、最初に見たとき「移設できる」という特性をそこまで重視していませんでした。実際に空室が長引いたエリアのアパートオーナーの相談を受けて初めて、「撤退できる」ことの価値を実感した、というのが正直なところです。
アパートは建物が土地に固定されているため、エリアの地力が落ちてきたとき、売却か賃料引き下げかの二択に追い込まれます。一方、たとえばPACOが手がけるような木造2×4構造のトレーラーハウスであれば、移設という選択肢が残るケースがあります(立地条件・行政手続き等により異なります)。「撤退の柔軟性」は、利回り表には出てこないリスク管理上の強みです。
比較する際は、初期投資額・想定利回り・出口の流動性・管理の手間の4軸を揃えて見るのが、僕の習慣です。
減価償却による節税は、2棟目でも同じように機能しますか?
減価償却を活用した所得圧縮は2棟目でも想定されますが、「何年目に・どの税率に対して効かせるか」は整理が必要です。1棟目の耐用年数が残り少なくなってくる時期に2棟目を取得すると、減価償却の山を重ねる効果が想定されます。ただし、損益通算の上限や青色申告の規模要件など、税制の前提知識も欠かせません。
実は僕自身、最初のアパートで「減価償却が切れた後」の税負担を甘く見ていて、手取りがかなり薄くなった時期がありました。税理士との連携なしに「節税になるから買う」という順番は、できれば避けてほしい。節税効果は「結果として生じるもの」であって、それを主な動機にすると、出口で後悔するパターンと重なりやすいです。
次の一手を決める前の、小さな確認作業
「規模拡大か分散か」という問いは、ポートフォリオ全体を俯瞰しないと答えが出ません。まず現在保有している物件のキャッシュフロー実績と残債を整理し、「もし今日すべて売ったら手元に何が残るか」を一度試算してみてください。その数字を持った状態で次のアセットを検討すると、比較の精度が上がります。
派手な利回りの試算書を見る前に、自分の現在地を確認する。地味ですが、これが一番確かな出発点です。
よくある質問
アパート2棟目の融資審査で、1棟目と比べて何が変わりますか?
大きく変わるのは「既存ローンの返済負担比率」です。1棟目の年間返済額が審査上の負債として計上されるため、同じ年収・同じ物件規模でも与信枠に余裕がなくなるケースがあります。金融機関によっては1棟目の賃料収入を収入として一部算入してくれることもありますが、算入率は金融機関ごとに異なります。事前に複数行へのヒアリングを並走させることが、選択肢を残す上で有効です。
アパート経営とトレーラーハウス投資、初期投資の規模感はどう違いますか?
一般的な木造アパート1棟(8戸前後)を新築で建てる場合、土地取得込みで数千万〜1億円を超えるケースも少なくありません。一方、トレーラーハウスは1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い(モデルケース)ですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。どちらが優劣というより「ポートフォリオの中でどう組み合わせるか」で考えると整理しやすいと思います。
Airbnbなどの民泊運用はアパート経営と併用できますか?
住居用のアパートをそのままAirbnb運用に転換するのは、賃貸借契約・旅館業法・管理規約などの観点から制約が多く、個別の確認が必要です。一方、民泊運用を前提に設計・取得した物件や、PACO Stayのように運用体制ごと整備されたスキームと組み合わせる場合は、最初から許認可や管理フローを整えた上でスタートできるケースがあります。「既存アパートをそのまま民泊に」は難易度が高い、というのが現場感覚です。