「築古アパートはリスクが高い」と直感的に感じている投資家は、経験の有無にかかわらず多くいます。ただ、その判断を数字で検証したことがあるかどうかは別問題です。今回は「中古=危険」という前提を、融資審査の視点からいったん解体してみます。
「新築の方が安全」——それは誰にとっての安全ですか
新築アパートは建物状態が明確で修繕リスクが低い、これは事実です。ただし「誰のリスクが低いか」という視点は抜け落ちがちです。デベロッパーや建築会社にとって新築供給は確実な収益源ですが、投資家にとって有利かどうかはまた別の話です。
新築アパートの表面利回りは立地によりますが4〜6%前後のケースが多く見られます。一方、同じエリアの中古アパートは7〜9%台で出回るケースもあります(市場の参考値であり、個別物件によって大きく異なります)。取得価格が低い分、利回りが出やすい構造になっているわけです。
「築古=修繕費が怖い」——その数字、実際に見積もりましたか
中古アパートへの最大の懸念は修繕費の不透明さでしょう。ただ、新築でも10〜15年後には同様の修繕が発生します。違いは「その費用を取得価格に折り込んで買えるかどうか」です。
築20年以上の物件は大規模修繕済みで売りに出されているケースも多く、売主の修繕履歴やレインズの情報を確認すれば、ある程度の費用予測は立てられます。もちろん予想外の出費が生じるケースはあります。ただ、「怖いから新築」という判断が、取得価格の高さという別のリスクを生んでいることも見ておく必要があります。
余談ですが、筆者自身が初めて中古物件の収支を試算したとき、修繕積立の見積もりを月2万円で計算していたところ、実際には給湯器交換だけで一度に20万円超が飛んだことがあります。逆にそれ以来、修繕履歴のない物件は「費用が見えていないだけ」と判断するようにしました。
融資審査官が中古アパートを見るとき、実はチェックしている点が違う
金融機関の審査官は物件の新旧よりも「融資期間内にキャッシュフローが回るか」を重視します。新築は融資期間を長く設定しやすい半面、価格が高いため月々の返済も重くなります。中古は融資期間が短くなりがちですが、取得価格が低ければ返済額を抑えられるケースがあります。
年収1,800万円クラスの方が法人スキームで取得する場合、減価償却の活用という観点でも中古アパートには一定の機能があります。木造アパートで法定耐用年数(22年)を超えた築古物件は残存耐用年数が短く設定され、短期間で大きく償却できるケースがあります(税務上の扱いは個別に税理士への確認が必要です)。
「木造・築25年・建物評価1,000万円」のモデルケースで整理すると
仮のモデルケースとして試算します。残存耐用年数は法定耐用年数22年×20%=約4年と計算されるため、4年間で建物価格の大部分を償却できる計算になります。これが所得圧縮に寄与し、法人税や個人の総合課税に対する緩衝効果が想定されます。ただし適用可否や効果は個人の状況・税務判断によって異なりますので、必ず専門家と確認してください。
「売るときに買い手がいない」——出口を先に考えると評価が変わる
中古アパートの売却時に買い手がいないのでは、という懸念はよく聞きます。ただ、投資目的の買い手にとって利回りが出ている物件には一定の需要があります。新築で取得した物件が中古化した段階で市場価値が大幅に落ちるリスクと比べると、もともと低価格で取得した中古物件は下落幅が限定されるケースもあります(立地・管理状態に依存します)。
筆者が相談を受けた40代の会社員の方の事例(モデルケース)では、築28年・取得価格2,200万円の木造アパートを5年保有後、2,050万円で売却。減価償却による節税効果と合算すると実質的なリターンはプラスで着地したケースがありました。「最初から売却を想定して選ぶと、物件の見方が変わる」というのは、こうした事例から実感していることです。
まず試してほしい「4項目の比較」
「中古アパート=リスクが高い」という感覚は、情報の非対称性から来ていることが多いと感じています。最初のステップとして、気になるエリアの中古アパートをレインズや不動産情報サイトで3〜5件ピックアップし、「表面利回り・築年数・修繕履歴の有無・融資期間」の4点だけ比較してみてください。数字を並べると、感覚論では見えなかった輪郭が浮かび上がります。
なお、当サイトでは木造2×4構造のトレーラーハウスを活用したPACO INVESTという選択肢もご紹介しています。アパートとは異なる減価償却・Airbnb活用の仕組みに関心のある方は、比較の参考としてご覧ください(投資勧誘を目的とした記事ではありません)。
よくある質問
中古アパートの減価償却はどう計算すればいいですか?
木造の法定耐用年数は22年です。法定耐用年数を超えた中古物件の場合、「法定耐用年数×20%」が残存耐用年数の計算式になります(最短2年)。ただし土地・建物の按分比率や取得費の計上方法によって実際の節税効果は大きく変わります。個人と法人どちらで取得するかによっても扱いが異なるため、税務判断は必ず税理士に相談してください。
中古アパートへの融資は出やすいですか?審査で見られる点は?
中古アパートの融資条件は、物件の築年数・担保評価・申込者の属性(年収・法人売上など)によって大きく変わります。築古物件は評価が低く出やすい半面、取得価格も低いため必要融資額が少ない場合もあります。金融機関によって方針が異なるため、複数行への打診と、実績のある不動産専門の融資コンサルタントの活用をお勧めします。
アパートとトレーラーハウス投資の違いは何ですか?
アパートは不動産登記が前提で、土地・建物の資産として計上されます。一方、PACO INVESTのトレーラーハウスは車両扱いとなるケースがあり、固定資産税・都市計画税の課税対象外になる場合があります(行政判断により異なります)。また、Airbnbなどの宿泊事業との親和性が高く、運用の仕組みも異なります。なお、取得価格は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く見られますが、物件仕様や立地によって変動します(モデルケースの参考値です)。どちらが自分の状況に合うかは、手持ち資産の構成・目的・出口戦略次第です。