相続で受け継いだ郊外の土地、このまま遊ばせておくのは固定資産税がもったいない。そう感じて「アパート経営」を調べ始めると、どこを見ても「利回り○%」という数字が踊っています。でも少し立ち止まってみてください。その利回り、本当に地主であるあなたにとって有効な判断軸になっていますか?
「利回りが高いほど得をする」——地主にこの前提が当てはまらない理由
不動産投資の世界では「表面利回り8%なら優良」という空気感があります。土地を購入して始める投資家にとっては一つの基準になりえますが、すでに土地を持っている地主の場合、話が変わります。土地取得コストがゼロに近い分、利回りの計算式の分母がそもそも異なるからです。
たとえば、建築費5,000万円・年間家賃収入480万円というモデルケースで試算すると、表面利回りは約9.6%になります(実際の数字は仕様・立地・空室率によって変動します)。土地を購入した人の「8%物件」より高く見えますが、それは分母の違いに過ぎません。「利回りが高い=あなたが有利」という読み方をすると、判断を誤る入口になります。
私自身、最初にトレーラーハウス活用の相談を受けたとき、つい利回りの数字から話を始めてしまい、後から「そもそも土地の出口をどうするか」を整理し直した経験があります。地主の方に必要なのは利回りの比較より前に、「この土地を何年・どんな条件で使い続けるか」という問いの整理だと、そのとき実感しました。
「アパートを建てれば節税になる」——その30年後のキャッシュフローを試算しましたか
相続税対策として「更地よりアパートの方が評価額が下がる」という話は正しいです。ただし、節税効果が出るのは相続が発生したタイミングだけです。その前後30年間のアパート経営の収支が赤字であれば、差し引きで損をしているケースもありえます。
築30年の木造アパートは修繕費が膨らみやすく、郊外では人口動態の変化で空室率が上昇するリスクも無視できません。「建てることで税金が減る」という入口だけを見て、出口(売却・解体・次の相続)までのトータルコストを試算しないまま進んでしまうのは、相談を受けた50〜60代の地主の方に非常に多いパターンです。たとえば大規模修繕が2回重なるだけで、節税効果として圧縮できた評価額の差を上回るキャッシュアウトになるケースも想定されます。
「木造は耐久性が低い」——構造の選び方次第で修繕コストはどう変わるか
木造アパートと聞くと「古くなりやすい」「重量鉄骨の方が長持ちする」と感じる方も多いかと思います。ただ、木造2×4(ツーバイフォー)構造は面で荷重を支える工法で、在来工法の木造とは耐久性・気密性の面でかなり性質が異なります。
土地活用において「構造の選択」はランニングコストと修繕周期に直結します。建てる前に「何年間、どの程度の維持費で運用できるか」を構造別に試算しておくことが、利回りの数字を追いかけるよりも実態に近い判断につながります。たとえばトレーラーハウス(木造2×4構造)の場合、外壁塗装の目安周期は一般的な木造在来工法より長く設定されるケースがあり、10年・20年単位の維持費試算で差が出やすい項目のひとつです。
「郊外の土地は需要がない」——その前提を外すと選択肢はどう変わるか
「郊外は空室リスクが高い」というのも業界の定説です。確かに大都市圏への人口集中は続いていますが、コロナ以降のテレワーク普及やワーケーション需要によって、郊外・地方の一部エリアでは短期宿泊の需要が生まれています。Airbnbなどの宿泊プラットフォームでは、自然環境や静けさを売りにした郊外物件に高い評価がつくケースも出てきました(PACOの運用事例ではAirbnb評価4.8を維持しているモデルケースがあります)。
「郊外でも必ず稼げる」ということではありません。ただ、「郊外だから賃貸しかない」という前提を外すことで、活用の選択肢が広がる場合があります。立地特性に合った用途を検討することが、利回りの数字より先に来るべき問いかもしれません。
まず手をつけるべきは、固定資産税と複数の活用手法の並べ比べです
「利回り8%のアパートを建てれば解決」という話は、地主の立場で見ると単純すぎることがあります。今あなたの土地がある地域の人口動態、10年後の需要、建築後の維持費、そして相続発生後の出口——これらをセットで考えることが、遊休地の活用を検討するときの実質的な出発点です。
一度、現在の固定資産税の年間負担額と、複数の活用手法のトータルコストを表にして並べてみることをお勧めします。「自分の土地に何が向いているか」を絞り込む作業を先に行う方が、後から「こんなはずじゃなかった」となるリスクを減らせます。
よくある質問
郊外の遊休地でアパート経営を始める場合、初期費用はどれくらいを想定すればいいですか?
建築費・設計費・外構工事などの合計で、木造アパート(2階建て・6〜8室程度)の場合、一般的に4,000万〜7,000万円のレンジで試算されることが多いです。ただし建材コストや地盤・インフラ整備の状況によって大きく変わります。土地を所有している場合は取得コストが不要な分、利回りの計算式が購入型と異なる点もあわせて確認しておくことをお勧めします。
アパート経営以外に、郊外の土地を活用する方法はありますか?
駐車場・資材置き場・農地転用・太陽光発電など複数の選択肢があります。近年はトレーラーハウスを使った宿泊施設として活用するケースも増えており、PACOでは木造2×4構造のトレーラーハウスを使ったAirbnb運用の事例を持っています。なお、トレーラーハウス1台あたりの費用は概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く、物件仕様や立地条件によって変動します(モデルケースであり、実際の費用は個別にご確認ください)。土地の形状・接道条件・用途地域によって選べる手法が変わりますので、まずは現地の条件整理が先決です。
アパートを建てることで相続税の節税になると聞きましたが、本当ですか?
更地に比べてアパート敷地は「貸家建付地」として相続税評価額が下がる仕組みがあり、節税効果が想定されるのは事実です。ただし「評価額の圧縮」と「経営の黒字化」は別の話です。空室率が高い状態が続いたり、大規模修繕が重なったりすると、節税効果よりもキャッシュアウトが上回るケースも想定されます。税理士と不動産の両方の視点でトータルを試算することが重要です。