老後2,000万円問題を意識してiDeCoとNISAを始めた。でも「これだけで本当に足りるのか」という感覚、ありませんか。そこで次の一手として中古アパート投資が視野に入ってくる——30代前半の方によく見られるパターンです。先日、まさにそのステップを歩んだBさん(30代・会社員・相談者の事例をもとにしたモデルケース)から、少し苦い経験談を聞きました。

「先輩に勧められて買った」——その判断の、何が甘かったのか

Bさんは当時34歳、年収580万円の会社員でした。職場の先輩から「アパートは減価償却で節税できるよ」と聞き、築20年・木造・価格2,800万円の中古アパート(4世帯)を購入。表面利回りは8.5%という物件でした。確かに購入初年度は減価償却を活用した所得圧縮効果が生まれ、還付金も出ました。

ただしBさんが後から振り返ったのは、節税の「その先」を計算していなかったということです。木造アパートの法定耐用年数は22年。築20年の物件であれば残存耐用年数は2年しかありません。減価償却による所得圧縮効果が使えるのも、購入後わずか2年間だったわけです。「節税になると聞いて買ったのに、節税できる期間を確認していなかった」——Bさん本人がそう話してくれました。私自身も話を聞いた当初、残存耐用年数の短さがこれほどキャッシュフロー計画に直結するとは、正直なめていた部分がありました。

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紙の上の利回りと、3年目に現実が突きつけた数字

もう少し数字を整理してみます。あくまでBさんのモデルケースであり、条件次第で大きく変わります。表面利回り8.5%・物件価格2,800万円であれば年間家賃収入の想定は約238万円。固定資産税・管理委託料・火災保険などの経費を差し引くと、手元に残る実質キャッシュは年間180万円前後の計算になります。

問題はそこではありませんでした。3年目に入ったタイミングで、2世帯が同時に退去。原状回復工事と次の入居者募集費用で合計80万円強が一度に出ていきました。年間キャッシュフローの4割超が消えた計算です。「空室リスクは知っていたけど、タイミングが重なるとここまで影響するとは」とBさんは言っていました。退去のタイミングは読めない——これが賃貸経営の現実です。

「築古×木造」の節税には賞味期限がある

中古アパート投資における節税の仕組みは、減価償却費を経費計上して課税所得を圧縮するものです。ただし木造物件の場合、法定耐用年数22年から築年数を差し引いた残存年数が「賞味期限」になります。築15年なら7年、築20年なら2年。この期間が終われば、節税効果はほぼゼロになります。

Bさんのケースでは購入から2年後に節税効果が切れ、そこからは純粋な賃貸経営の収支で判断するフェーズに入りました。賃貸経営自体は悪くありませんが、「節税ありき」で始めた投資の終着点として最初から想定していたかどうか。そこが準備できていなかった、と本人が話してくれました。

それでも「やってよかった」と言える理由——ただし条件付きで

Bさんは今37歳で、3棟目の検討をしています。「失敗だったかというと、そうじゃない」と言っていました。キャッシュフローが薄い時期もあったけれど、管理の手間・退去タイミングのランダム性・修繕費の読みにくさ——こうした不動産投資の現実を体で覚えたことの価値が大きかったと。

2棟目では売却(出口)も想定した築年数と立地の選び方に変えました。「最初から学べていたら」とも言っていましたが、1棟目なしに2棟目の判断はできなかったとも。ただし、これは結果論として語れる話であり、誰にでも当てはまるわけではありません。

またBさんは最近、別アセットとしてトレーラーハウス型の投資にも関心を持ち始めたようです。木造2×4構造で「動かせる資産」という性格を持つこのカテゴリは、アパートと異なる税制・利回りの構造を持ちます。取得価格は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・立地・付帯工事の内容によって上下します(モデルケース)。ポートフォリオの分散という観点で、選択肢のひとつとして調べているとのことでした。

「自分版の数字」を作る——最初にやることは5分の計算だけ

節税は手段であって、目的ではありません。中古アパート投資を検討するなら、「何年間、いくらの節税効果があって、その後どうなるか」まで自分で試算してみることをおすすめします。購入の動機と物件の相性が、そこで初めて見えてきます。

まず試してほしいのは、検討中の物件の残存耐用年数を調べることです。築年数と構造さえわかれば5分で計算できます。そこから「何年で節税効果が切れるか」「切れた後もキャッシュが回るか」を確認していくと、営業担当者の説明だけでは見えなかった判断軸が一段加わります。

よくある質問

中古アパートの節税効果は、新築と比べてどう違うのですか?

新築は耐用年数の全期間(木造なら22年)をかけて減価償却できますが、1年あたりの償却額は小さくなります。一方で築古の中古は残存耐用年数が短い分、短期間に大きな償却費を計上できるケースがあります。ただし残存年数が2〜3年の物件だと、節税効果が非常に短期間で終わる点には注意が必要です。物件ごとに条件が異なりますので、購入前に税理士への確認を強くおすすめします。

年収550万円でアパートローンは通りますか?

金融機関によって審査基準は異なります。年収550万円・正社員・一定の勤続年数といった条件が揃えば、検討の土台に乗るケースはあります。ただし借入額・物件の収益性・自己資金の比率によっても結果は変わります。「ケースによっては自己資金を抑えたスタートも想定されますが」という程度に受け止めておき、複数の金融機関に個別相談することで選択肢が広がることがあります。

中古アパートとトレーラーハウス投資では、どちらが節税に向いていますか?

取得価格・構造・目的によって異なるため、単純な比較は難しい質問です。中古木造アパートは短期間での大きな減価償却が想定される一方、賃貸需要や修繕リスクの管理が課題になるケースがあります。トレーラーハウスは「動産」として扱われる場合があり、会計・税務上の扱いがアパートと異なることがあります。いずれも一般論として鵜呑みにせず、専門家への個別相談を前提にしてください。