「固定資産税だけはかかるし、このまま遊ばせておくのも……」という相談をよくいただきます。いざ調べ始めると、利回りの数字や節税効果の話が入り乱れて、何を信じればいいか分からなくなる——というのも、ほぼ毎回セットで出てくる話です。今回はそうした「素朴だけど、実は本質的な疑問」にQ&A形式でお答えします。
「利回り8%」って、手元に残るお金の話ですか?
これが一番多い質問です。結論から言うと、業者が提示する「利回り8%」は、ほぼ例外なく表面利回りです。年間家賃収入を物件価格で割っただけの数字で、空室・管理費・修繕費・固定資産税・ローン返済は一切引いていません。
以前、郊外アパートの試算を一緒に確認していた際、表面利回り8%と記載された物件が、空室率10%・管理料5%・修繕積立を月1万円/戸と置き直しただけで実質3〜4%台に落ちたことがありました。私自身、最初に試算書を渡されたとき「前提条件の行」を読み飛ばしており、後から気づいて冷や汗をかいた経験があります。試算書を見るときは、まずその行を探す習慣をつけてください。
「相続税対策になる」と聞くけど、全員に当てはまりますか?
「アパートを建てれば相続税が下がる」という話は事実を含みますが、全員に当てはまるわけではありません。土地は「貸家建付地」として評価が下がり、建物は固定資産税評価額が時価より低く評価される仕組みがあります。ただ、これは評価額の圧縮であって、手元のキャッシュが増えるわけではありません。
多額の借入を伴う場合はさらに注意が必要です。相続時に借入残高が残っていれば債務控除の対象になりますが、経営が苦しいアパートをそのまま引き継ぐ子ども側の負担も考えておく必要があります。「節税になると聞いたから」だけで動くのは、小規模宅地等の特例との兼ね合いなども含め、見落としが生じやすい進め方です。税理士との連携は任意ではなく必須と考えてください。
郊外の土地でも、入居者は本当に集まりますか?
正直に言うと「場所による」としか答えられません。人口減少が続く地域へのアパート供給は、中長期的な空室リスクが高くなります。駅から徒歩20分超・人口5万人未満の市町村では、竣工後1〜2年で空室率が20%を超えたケースを複数見てきました。
ただ、同じ郊外でも「需要の種類」を変えると話が変わります。観光地や幹線道路沿いの土地であれば、賃貸アパートより短期滞在型の宿泊施設として使う方が需要にマッチするケースがあります。土地の用途を「アパート一択」で考える前に、そこに何を誘致できるかを先に問うのが、順番として正しいと感じています。
アパート以外の選択肢も、比較した方がいいですか?
「比較した方がいいです」とお答えしています。郊外の遊休地の活用策として最近ご相談が増えているのが、木造2×4構造のトレーラーハウスを使った宿泊・賃貸活用です。
アパートとの主な違いは、建築確認不要のケースがある点と移動・撤去ができる点です。固定資産として地に縛られないため、需要が変わったときの方向転換がしやすい設計になっています。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。Airbnb等での宿泊運用では表面利回りが10〜20%になるモデルケースも報告されていますが、これは条件が整った場合の試算であり、すべての立地で再現されるものではありません。
アパートが「長期間・大きな借入・撤退困難」であるのに対し、こうした選択肢は「試しやすく、出口がある」という設計です。どちらが正解かではなく、自分の土地と状況にどちらが合うかを見極めることが先決です。
次の一歩として、何から確認すればいいか
相続した土地をどう活かすかは、「税金」「需要」「借入」「出口」の4つを同時に考える必要があります。一度に全部解決しようとせず、まずは土地の用途地域・前面道路・周辺の賃貸需要を調べるところから始めると、業者との話し合いでも自分の言葉で質問できるようになります。
試算書を見るときは、空室率・管理費・修繕費の前提をどこに置いているかを確認する習慣をつけるだけで、数字の読み方はかなり変わります。「前提条件の行を先に読む」——それだけで、大きな判断ミスはかなり防げると感じています。
よくある質問
アパート経営で「実質利回り」を計算するとき、何を引けばいいですか?
最低限、空室損失(年間家賃×想定空室率)・管理委託料(家賃収入の5〜10%)・修繕費・固定資産税・火災保険料・ローン返済額を引いた上で手残りを計算してください。それを年間家賃収入ではなく物件取得総額(土地代・建築費・諸費用込み)で割ったものが、実質利回りに近い数字になります。前提を変えると利回りが大きく動くため、試算書の「空室率は何%で置いているか」を必ず確認することをお勧めします。
相続税対策でアパートを建てるかどうか、税理士への相談は必要ですか?
必須です。相続税評価額の圧縮効果は、土地の評価方式・借入残高・他の財産状況によって大きく変わります。「アパートを建てると相続税が減る」という話は一般論として正しい部分がありますが、個別のケースでどれだけ効果があるかは試算なしには分かりません。小規模宅地等の特例との兼ね合いなど個別に検討すべき要素も多いため、不動産業者だけでなく税理士、場合によっては弁護士も交えた相談をお勧めします。
郊外の土地で、アパート以外にどんな活用策がありますか?
用途地域・接道条件・面積によって選択肢は変わりますが、代表的なものとして駐車場・太陽光発電・コンテナ倉庫・グランピング・トレーラーハウスを使った宿泊施設などがあります。観光資源や幹線道路へのアクセスがある土地であれば、短期滞在型の宿泊活用は需要との相性がよいケースがあります。ただしどの手法も「その土地の需要」に合っているかどうかが前提で、手法ありきで進めると空振りになるリスクがあります。