相続で受け継いだ郊外の土地。固定資産税だけが毎年出ていき、「何かしなければ」と思いつつ何が正解かわからない——そういった相談が、編集部にも定期的に届きます。アパート経営、株式、REIT、定期預金と選択肢は並んでいるのに、比べ方がわからない。今回はその比べ方を、できるだけフラットに整理してみます。
「とりあえず定期預金」は安全策ではなく、静かにコストが積み上がる選択だった
現金を動かさず定期預金に置いておく判断は、一見すると堅実に映ります。ただし55歳以降の地主にとって、遊休地を放置することは「手を打たないこと自体がリスク」になりえます。固定資産税は毎年出ていき、相続が発生した際には土地の評価額がそのまま課税対象になります。
定期預金の金利は現状0.1〜0.3%程度(2025年時点・金融機関による)。固定資産税の年間支出が仮に30万円だとすると、1,000万円を0.3%で預けても利息は税引き前で約2.4万円。差額は埋まりません。「何もしない」は選択肢のように見えて、毎年確実にマイナスが積み上がっている状態です。
株式・REITは「土地問題」に答えてくれない
株式やREITは、手元の余剰資金を運用するには有効な手段です。ただし「郊外の遊休地をどうするか」という問いには、直接答えてくれません。土地を持ち続ける限り、固定資産税も相続税評価もそのまま残ります。
株式・REITが本領を発揮するのは、「土地は別途処理済みで、余剰資金をどう増やすか」という局面です。遊休地の問題を抱えたまま株式投資を始めるのは、雨漏りを放置したまま部屋の模様替えをするようなもので、手をつける順番が逆になりやすいです。
アパート経営が「地主向き」と言われる理由と、見落とされがちな落とし穴
アパート経営が地主に勧められることが多いのには、理由があります。土地を担保に融資を受けやすく、建物を建てることで相続税評価額が下がる仕組みがあるからです。更地のまま持つより、貸家建付地として評価される方が、相続税の計算上は有利になるケースがあります(評価減の幅は土地の形状・地域によって異なります)。
ただし、アパート経営には向き不向きがあります。以前、郊外で8世帯のアパートを建てた60代の方の事例(モデルケース)を取材したことがあります。建設当初の想定空室率は10%でしたが、築7年目には30%を超え、元本返済と修繕費が重なって月次キャッシュフローが赤字に転じていました。「節税になると聞いて建てた」という動機だけで動くと、こうした状況に陥りやすいです。建設前に、10年後の空室率・修繕費・元本返済額を含めた実質キャッシュフローを試算することが出発点になります。
トレーラーハウスが「郊外の遊休地」にはまりやすい構造上の理由
トレーラーハウスは、アパートとは少し異なる立ち位置にあります。木造2×4構造で建てられた建物ですが、車輪がついた構造により固定資産として登録されないケース(条件による)があり、建築確認が不要な場面も出てきます。これが市街化調整区域を含む郊外の遊休地に向いている理由のひとつです。
初期投資は仕様・サイズ・立地・付帯工事によって変わりますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いです(モデルケース/物件仕様や立地で変動)。アパート一棟と比べると小さな単位で動かせるため、「まず1台試してみる」という入り方ができます。Airbnb等での宿泊運用(PACO Stay)と組み合わせた場合、想定利回り10〜20%というシミュレーションが出るケースもありますが(モデルケース)、立地・稼働率・運営の習熟度によって結果は大きく変わります。私自身、最初の1台では想定より稼働率が5ポイント低く、損益分岐点を超えるまでに半年以上かかりました。「利回りの数字だけ見て動くと足元をすくわれる」というのが、実感として残っています。
「どれが正解か」より先に問うべきこと
「これが最善」と言い切れる選択肢はありません。郊外の立地特性、土地の形状、相続人の状況、手元の自己資金——これらが違えば、最適な手段は変わります。アパートが合う方もいれば、トレーラーハウスが合う方も、売却して現金化する方が合う方もいます。
ただ、何も動かないまま10年経つと、固定資産税の累計負担と相続税評価がそのまま積み上がります。「比べた上で選ばない」と「何も比べていない」は、見た目は同じでも中身は全く違います。まず選択肢を並べて、自分の土地にどれが合うかを確かめる——それが最初の一歩だと考えています。
よくある質問
アパート経営とトレーラーハウス投資は、相続税対策として同じように機能しますか?
効果の仕組みが異なります。アパートは建物を建てることで「貸家建付地」として土地の相続税評価額が下がる効果が想定されます。一方トレーラーハウスは、条件によっては固定資産として扱われないケースもあり、土地評価の圧縮効果はアパートほど大きくないことが多いです。どちらが有利かは土地の状況や相続の規模によって異なるため、税理士への相談を並行して行うことをおすすめします。
郊外の土地でアパート経営を始める際の、最大のリスクは何ですか?
空室リスクと出口リスクの二つが大きいです。郊外は人口動態が都市部より厳しく、築年数が経つにつれて入居者確保が難しくなるケースがあります。また、売却時に買い手がつきにくく、建物を解体してから売ることになると解体費用が別途発生する場合もあります。建設前に10〜20年後の出口を含めたシナリオを描いておくことが重要です。
自己資金がほぼない状態でも、土地を活用した投資はできますか?
土地を持っている場合、担保評価がある分、融資がつきやすくなるケースはあります。ただし「融資が下りる=必ず有利」ではありません。元本返済込みのキャッシュフローがプラスになるかどうかを先に確認することが重要です。融資条件によっては自己資金を抑えてのスタートも可能なケースがありますが、月次のキャッシュフロー試算を丁寧に行ってから判断することをおすすめします。