区分マンションもアパートも順調に回っている。次は規模を拡大すべきか、それとも別のアセットに分散すべきか——そんな局面に立っている方から相談を受けることが、最近続いています。今回は38歳・年収800万円のサラリーマン投資家Kさんの事例(モデルケース/一部情報を変更)をもとに、中古アパートの"次の一手"で見落としやすい視点を整理します。

「また中古アパートを買う」という選択肢、数字で確かめましたか?

Kさんはすでに区分マンション2戸とアパート1棟を保有し、毎月のキャッシュフローはトータルでプラス。融資余力も残っていたため、「次は中古アパートをもう1棟」という方向で動きかけていました。目をつけていたのは地方都市の木造中古アパートで、ポータルサイトに表示されていた表面利回りは9.2%。「悪くない数字ですよね」と聞かれたとき、私は「見た目は悪くないですが、その数字だけでは判断できません」と正直に答えました。

余談ですが、私自身も投資を始めた頃は表面利回りを軸に物件を絞り込んでいました。「9%台なら余裕がある」と思い込んでいたのですが、初めて実質利回りを計算し直したとき、想定より3ポイント近く低かった経験があります。その落差が、今回Kさんに最初に伝えたかったことでもありました。

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表面利回り9%の物件が、なぜ実質5%を割ることがあるのか

Kさんはすでに1棟を持っているので、コスト構造はある程度把握していました。それでも数字を分解してみると、想定外の項目がいくつか出てきたと言います。

モデルケースの前提:木造築23年・8室・表面利回り9.2%・購入価格4,500万円。想定年収は約414万円ですが、そこから空室損失(想定空室率10%)・管理委託費・修繕積立・固定資産税・火災保険・融資利息を積み上げると、実質利回りは5.3%程度に落ち着く想定です。悪い数字ではありませんが、9%台の期待感で動き出していた場合、精神的な落差は小さくありません。

修繕費の「読みにくさ」が、築古物件の最大のリスクになる

今回とりわけ問題になったのが修繕費の見積もりです。築23年ともなると、給湯器・外壁・屋根・配管まわりが今後10年で集中して更新時期を迎えます。Kさんが物件調査を進めると、直近5年の修繕履歴がほとんど残っておらず、売主への確認でも「大きな修繕はしていません」という回答しか得られませんでした。これはむしろ、修繕が積み残されているサインである可能性があります。仮に屋根と外壁の改修だけで200〜300万円かかるとすれば、実質利回りはさらに下振れする見込みです。

「15年後に誰に売れるか」が答えられない物件に、どこまで投資するか

Kさんがもう一つ引っかかっていたのが出口戦略です。築23年の木造アパートが15年後には築38年になる。その時点でどこに・誰に・いくらで売れるかを考えると、答えはかなり見えにくい。木造物件は築年数が進むにつれて融資がつきにくくなり、買い手が実需よりも現金購入の投資家に限られていく傾向があります。

もちろん、立地と賃貸需要が堅固であれば保有し続けることで収益を得られるケースもあります。ただ、Kさんのように既に1棟を持っていて「規模拡大か分散か」を考えているなら、同じアセット・同じリスク構造をもう1つ積み上げることが最善かどうかは、一度立ち止まる価値があります。

「撤退の選択肢がある」資産を、なぜポートフォリオに混ぜるのか

この相談をきっかけに、Kさんはトレーラーハウス投資についても調べてみたと後日連絡をくれました。興味を持ったのは「不動産登記がないため、状況に応じて移動・撤退が比較的しやすい」という点だったようです。私自身も2棟を運用していますが、確かにこの「可逆性」は中古アパートにはない特徴です。

PACOが扱うのは木造2×4構造のトレーラーハウスで、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多い状況です(モデルケース/物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動します)。想定利回りもケースによって異なるため、一律の数字をお示しするのは難しい点はご承知おきください。Kさんには「中古アパートの代替ではなく、ポートフォリオの分散先として考えるなら話が変わってくる」とお伝えし、その日の相談は「すぐに動く必要はない」という結論で終わりました。

次の一手を焦らないために、今週できること

規模拡大か分散かで迷っているなら、まず現在のポートフォリオの「実質利回り・修繕リスク・出口シナリオ」を1枚の表に書き出してみることをおすすめします。Kさんのように複数物件を保有している方は、新しいものを追加するより、今あるものを整理する作業の方が先に来るケースが少なくありません。

中古アパートは選択肢として十分あり得ます。ただ、表面利回りという"見た目の数字"に引っ張られず、実質・修繕・出口の3点を自分の言葉で説明できる状態になってから動く——それが、長く投資を続けている方に共通して見られる姿勢だと感じています。

よくある質問

中古アパートの実質利回りは、どのくらいを目安に考えればいいですか?

一般論として、表面利回りから管理費・空室損失・修繕費・税金・融資コストを差し引くと、実質利回りは表面の5〜6割程度になるケースが多いとされています。ただしこれはあくまで参考値で、築年数・立地・管理状態によって大きく変わります。「想定実質利回りで採算が合うか」を自分で計算できる状態で物件を見ることが、判断精度を上げる第一歩です。

アパートをすでに1棟持っているとき、もう1棟の融資は通りやすくなりますか?

既存物件のキャッシュフローが安定していれば、追加融資を受けやすくなるケースもあります。一方で、金融機関によっては総借入額の上限や担保評価を厳しく見るところもあり、一概には言えません。複数棟保有の実績が武器になるかどうかは、取引先金融機関との関係性・年収・属性によっても異なります。現状を早めに担当者に確認しておくことをおすすめします。

木造中古アパートの「出口戦略」として、現実的なシナリオは何ですか?

主なシナリオとしては、①収益物件として別の投資家に売却、②土地値での売却(建物解体前提)、③保有し続けて賃料収入を得る——の3パターンが考えられます。築年数が進むと融資がつきにくくなり、買い手が現金購入層に絞られる傾向があります。「15年後・20年後に誰に売れるか」という問いに自分なりの答えを持てる物件かどうかが、出口を読みやすくする基準になります。