法人税対策として不動産を検討し始めると、まず「新築の方が安心」「中古はリスクが高い」という声を耳にします。この常識、経営者の視点で見たときにも正しいのでしょうか。私自身、賃貸仲介の現場で数十件の相談に立ち会ってきた経験から、少し立ち止まって確認してみます。

「新築の方がリスクが低い」——それは売り手にとっての話ではないか

不動産業界でよく言われる「新築有利」の根拠は、主に「空室が出にくい」「修繕が当面かからない」という2点です。入居者視点ではそうかもしれません。ただ、投資家・経営者の視点に切り替えると、話は変わります。

新築アパートは竣工直後から「新築プレミアム」が剥落し始め、購入直後から資産価値が下がりやすい構造になっています。対して中古は、すでに価格の下落が一定程度進んでいるため、取得価格が相対的に抑えられ、そこから大きく値崩れするリスクが小さいケースもあります。

「リスクが低い」の意味が、売り手にとっての「売りやすい」である場合は少なくありません。買い手である経営者が同じ基準で判断するかどうか、一度立ち止まる価値はあります。

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同じ立地で利回りが倍違う——経営者の財布にはどちらが残るか

仮に同じ立地・同じ間取りで、新築アパートの表面利回りが4〜5%、築20年超の中古アパートが8〜10%だったとします(モデルケースです。物件・エリア・時期によって大きく異なります)。年収1,800万円クラスの経営者が求めるのは「税後キャッシュの残り方」ですから、取得価格の差と減価償却のスピードが重要になります。

中古物件、特に木造で法定耐用年数を超えているものは、残存耐用年数が短く設定されることで、短期間に大きな減価償却費を計上できる場合があります。モデルケースとして、取得価格3,000万円・残存耐用年数4年の木造物件であれば、年間750万円程度の償却費を計上できる想定になります(実際の計算は物件仕様・取得状況・税務判断によって異なります)。

ただし「節税効果が大きい=キャッシュが残る」とは限りません。空室リスクや修繕費の実態を踏まえた実質収支を確認することが先決です。数字の前提を自分で設定できるかどうかが、経営者の腕の見せどころです。

「修繕費が怖い」と言う前に、修繕履歴を見たか

中古アパートへの懸念として最もよく挙がるのが「いつ大きな修繕が来るかわからない」という点です。確かに無視できないリスクです。ただ、新築でも10〜15年後には大規模修繕のサイクルが来ます。中古の場合、すでに一巡していることもあり、直近の修繕履歴を確認できるという側面があります。

現地確認・インスペクション・修繕積立の有無・管理会社の質——これらを事前にチェックできるかどうかが、「読めないリスク」を「読めるリスク」に変えられるかの分岐点です。経営判断は、読めないリスクより読めるリスクの方がしやすいはずです。

余談ですが、私が以前に同行した内見で、外観がきれいに見えた築22年の物件が、床下の湿気対策を一切していなかったことがありました。インスペクションを省いていたら見逃していた箇所です。「安く見える物件ほど、確認コストを惜しまない」——これは今も自分への戒めにしています。

「今年の決算に間に合わせたい」なら、スピードで中古に軍配が上がる場面がある

新築アパートは、企画・設計・建築で1〜2年かかることが珍しくありません。キャッシュフローが動き出すまでのタイムラグが長い。対して中古は、融資承認と引き渡しが整えば数ヶ月で稼働できます。資産防衛を今期の決算に間に合わせたい経営者にとって、このスピード差は無視できません。

また、既存の入居者がいる状態での購入(オーナーチェンジ)であれば、引き渡し初日からキャッシュフローが発生するケースもあります。稼働実績が目視できる分、収支の数字に対する解像度が上がりやすいとも言えます。

中古アパートが万能でない理由——誠実に向き合うために

ここまで「中古アパート有利」の文脈で書いてきましたが、もちろん万能ではありません。立地選定を誤れば空室率が積み重なり、想定利回りは机上の数字になります。賃貸仲介の現場にいた経験から言うと、「中古だから割安」と判断を急いで、管理の手間とリターンが見合わなかった40代経営者の事例(モデルケース)を何件も見てきました。共通していたのは、物件を先に決めてから戦略を後付けしていたことです。

重要なのは「新築か中古か」ではなく、「その物件が自分の資産戦略の文脈に合っているか」です。法人税対策と個人の資産分散という2軸を持つ経営者であれば、どちらの効果をどの物件で取りに行くか、設計図を先に描いてから物件を選ぶ順番が効いてきます。

まず試算すべき3つの数字

「中古アパートはリスクが高い」という業界の常識は、必ずしも投資家・経営者の視点から導き出されたものではありません。取得価格・減価償却スピード・稼働までのタイムライン——この3点を自分の数字で試算してみることが、最初の一歩になるかと思います。

なお、PACO INVESTでは木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した投資スキームも扱っており、中古アパートとは異なるアプローチで資産分散・節税効果を検討されている経営者の方からお問い合わせをいただくことがあります。比較検討の一つとして覗いてみてください。

よくある質問

中古アパートの減価償却で、実際にどれくらい課税所得を圧縮できますか?

法定耐用年数を超えた木造物件は、残存耐用年数が「法定耐用年数×20%」で計算されるため、短期間に大きな償却額を計上できる場合があります。モデルケースとして、取得価格3,000万円・残存耐用年数4年の物件では年間750万円程度の償却費が想定されます。ただし「節税効果」の実態は個人の税務状況・物件条件・融資構成によって大きく異なるため、必ず税理士と連携して試算することをお勧めします。

中古アパートの融資は、新築と比べて通りにくいのでしょうか?

築年数が経過した物件は担保評価が低くなりやすく、融資条件が厳しくなるケースがあります。一方で、稼働中のオーナーチェンジ物件は収益実績を示せるため、事業性ローンとして評価されやすい場合もあります。金融機関の属性と物件の組み合わせ次第で条件は変わるため、複数行への打診が現実的です。

「表面利回り8〜10%の中古アパート」は、今の市場でまだ見つかりますか?

都市部の主要エリアでは価格が上昇しており、表面利回り8〜10%の物件は減少傾向にあります。地方都市や郊外エリアでは、管理状態や稼働率の問題で割安になっているケースが残っています。ただし重要なのは表面利回りではなく、空室損・管理費・修繕積立を引いた実質利回りです。数字の「前提」を自分で分解できるかどうかが、物件選定の精度を左右します。