iDeCoやNISAは始めたけれど、もう一段踏み込みたい。そう感じて「アパート経営 利回り」と検索している32歳のあなたに、まず一つ、業界で当たり前のように語られている前提を疑ってみてほしい話があります。
「利回りが高い=良い物件」——この等式が成立しない理由
不動産投資の情報を見ると、「表面利回り10%以上!」という数字が目に飛び込んできます。初めて検討する人ほど、その数字に引き寄せられる。それは自然なことです。ただ15年間、賃貸仲介の現場にいた経験から言うと、「利回りが高い物件ほど、経営が難しいケースが多い」という逆説に何度もぶつかってきました。
高利回りには必ず理由があります。築古で修繕リスクが大きい、地方の過疎化エリアで空室リスクが高い、あるいは売主がその利回りを演出するために家賃を一時的に高く設定しているケース。表面利回りとは「年間家賃収入 ÷ 購入価格 × 100」に過ぎず、空室・修繕・管理費・ローン返済を引いた「実質手残り」とはまったく別の数字です。
32歳・年収550万円が本当に確認すべき数字は「利回り」ではなかった
節税と副収入の両方を狙うなら、利回りの前に確認すべき数字が二つあります。一つは「減価償却費」、もう一つは「手残りキャッシュ(CF)」です。
たとえば「築20年・木造・購入価格2,000万円・フルローン・金利2%・家賃月10万円」というモデルケースを考えると、表面利回りは6%に見えます。ただし木造の法定耐用年数の残年数によっては年間150万円前後の減価償却費が出る可能性があり、これが給与所得と損益通算されると所得税・住民税の圧縮効果が想定されます。一方でローン返済を含めた月次CFは数万円のプラス、あるいはほぼゼロになるケースもあります。融資条件や物件状況によって数字は大きく変わりますが、「節税で実質コストを下げながら、キャッシュは小さくプラスに保つ」という設計が、30代の資産形成における一つの考え方になりえます。
「じゃあ低利回り物件が正解か」というと、そう単純でもない
都市部の築浅物件は利回りが低い代わりに空室リスクが小さく、売却時の流動性も高い傾向があります。逆に地方の高利回り物件はキャッシュフローが出やすい反面、出口(売却・融資)が閉じているケースがあります。どちらが自分に合うかは、年収・節税ニーズ・ローン残期間・出口戦略によって変わります。
私自身、30代後半で中古アパートを購入したとき、利回りを優先して立地を妥協しました。入居は埋まりましたが、5年後の修繕費試算を後から見直したとき「これ、手残りほぼ消えるな……」と青くなりました。数字は合っていても、設計が甘かった。高利回りに飛びついた結果、修繕積立をほとんど見ていなかったのが原因で、今思えば購入前にキャッシュフロー表を作るだけで防げたミスでした。
「建物を動かせる」という選択肢——アパートとの比較軸として
こうした経験もあって、私が現在運用しているのはアパートではなくトレーラーハウスです。PACO INVESTが手がける木造2×4構造のモデルは、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース。物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、Airbnb等の宿泊運用にも対応できる設計になっています。アパートとの最大の違いは「建物を動かせる=撤退しやすい」という構造的な柔軟性です。固定資産税の扱いや融資の組み方もアパートとは異なるため、比較の一つとして把握しておくだけで投資判断の幅が広がるケースがあります。
次に物件情報を開くとき、一つだけ確認を変えてみてください
高利回りを否定したいのではなく、利回りだけで物件を評価する思考の癖を一度リセットしてほしいのです。次に物件情報を見るときは、「表面利回りの分母(購入価格)に修繕積立・空室率・管理費は含まれているか」を確認してみてください。それだけで、物件の見え方がかなり変わります。節税と副収入を両立させる構造は存在しますが、それは利回りの高さではなく、数字の設計の精度から生まれるものだと考えています。
よくある質問
アパート経営の「実質利回り」はどう計算すればいいですか?
一般的には「(年間家賃収入 − 年間諸経費)÷ 購入価格 × 100」で算出されます。諸経費には管理費・修繕積立・固定資産税・火災保険・空室損失(稼働率を想定して家賃収入から差し引く)などが含まれます。実際の数字はローン条件や物件状況によって異なるため、購入前にキャッシュフロー表を作成することをお勧めします。あくまで参考指標としてお捉えください。
32歳・年収550万円でアパート経営の節税効果は出ますか?
木造物件の減価償却費を給与所得と損益通算することで、所得税・住民税の圧縮効果が想定されるケースがあります。ただし効果の大きさは購入物件の残存耐用年数・価格・ローン利息・個人の所得状況によって大きく異なります。税理士に試算を依頼した上で判断されることをお勧めします。本記事は投資判断を促す意図ではなく、情報提供としてお読みください。
アパート経営とトレーラーハウス投資は何が一番違いますか?
最も大きな違いは「固定性」です。アパートは土地に定着した不動産であるため、エリア選定を誤った場合のリカバリーが難しい側面があります。一方、トレーラーハウスは移動可能な構造物として扱われるため、立地変更や撤退の柔軟性があるとされています(実際の移設には費用・条件が伴います)。融資の組み方・減価償却の仕組みも異なるため、どちらが自分の状況に合うかは個別に検討することをお勧めします。