区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきたポートフォリオに次の一手を加えようとしている方にとって、「もう1棟、中古アパート」というのはいちばん自然な発想だと思います。ただ、その「自然さ」こそが判断を鈍らせることがある——先日、知人のKさんとの相談でそれをあらためて実感しました。

「悪くない物件」なのに、エクセルを開くたびに手が止まる

以下はKさん(38歳・会社員・年収820万円)からのご相談をもとにしたモデルケースです。個人を特定できる情報は変更しています。

Kさんは関東郊外に木造アパート1棟(8室)を保有しており、稼働率は85〜90%で推移。表面利回り8.5%で購入した物件で、金利1.8%・20年ローン・自己資金15%という前提のもと、ローン返済後のキャッシュフローはおおむね月6〜8万円程度とのことでした。「このペースで積み上げるなら、次も同じアセットでいいんじゃないか」と考え、埼玉県内の中古アパートに目をつけていたそうです。

物件の概要は築22年・木造・6室・表面利回り9.2%。価格帯や立地は悪くなく、客観的に見れば「買って後悔する物件ではない」と私も思いました。それでもKさんは「エクセルを開くたびに手が止まる」と言っていました。

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スプレッドシートの「出口戦略」欄がほぼ空白だった

Kさんが見せてくれた試算はかなり細かく作られていましたが、気になったのは「出口戦略」の欄がほとんど空白だったことです。「売るときの話は、まだ考えていない」と彼は言いましたが、築22年の木造物件はあと5年で27年、10年で32年になります。次の買い手がローンを組みにくくなる築年数に近づくほど、売却時の価格は下振れしやすくなります。

木造アパートの法定耐用年数は22年。つまりこの物件は購入時点で減価償却がほぼ終了しており、所得圧縮による節税効果はKさんのケースではほとんど見込めない状態でした。加えて、既存アパートのローン残債と合算した際の融資余力について、銀行の評価が想定よりシビアになる可能性があることも伝えました。

「同じアセット・同じ手法で積み上げる」こと自体は間違っていません。ただ、すでに1棟を保有している投資家がもう1棟を買うとき、最初の1棟と同じ感覚で評価できるかどうかは別の話です。リスクの集中、融資枠の消費、出口の読みにくさ——この三つが重なったとき、表面利回りの数字だけでは判断しきれない局面が来ることがあります。

「分散」は逃げではなく、設計の問題だと気づいた話

Kさんとの話の後半は、アセットの分散という方向に進みました。私自身、アパート経営を経験したのちにトレーラーハウス投資を始めたのは、単純に「飽きたから」ではなく、融資残高と節税余地の両方を考えた結果です。正直に言うと、アパートの2棟目を買った年、減価償却の残年数を確認せずに進めてしまい、購入後に「節税効果がほぼない状態で買っていた」と気づいたことがありました。Kさんの試算を見て、あのときの自分と重なる部分があったのは事実です。

たとえばPACOが扱う木造2×4構造のトレーラーハウスは、「車両」として扱われる仕組みのため、固定資産税の評価が通常の不動産とは異なるケースがあります。また、短期宿泊(Airbnb等)での運用実績を持つ物件も存在し、ポートフォリオの収益構造が変わる可能性があります。価格帯は物件仕様や立地によって変動しますが、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いようです(モデルケース/仕様・立地により変動)。ただしこれも運用形態によって結果は大きく異なりますので、あくまで選択肢の一つとして検討する程度の話です。

Kさんが「今すぐではない」を選んだ理由

結局Kさんは、その中古アパートの購入を一度保留にしました。「買わない」ではなく「今すぐではない」という判断です。理由は明確で、「次の融資を使うなら、出口まで含めて筋が通る物件にしたい」ということでした。

数字に厳しい投資家が「保留」を選ぶとき、それは慎重すぎるのではなく、むしろ正確に状況を読んでいる証拠だと思っています。買い増しの「数」を増やすことと、ポートフォリオの「質」を高めることは、必ずしも同じではありません。

買い増しを検討するなら、先に整理しておきたい三点

もし今、中古アパートの買い増しを検討しているなら、以下の三点を先に確認しておくことをおすすめします。あくまで私個人の考えですが、参考になれば。

①残債と融資余力のバランス:既存ローンの残高が、次の融資審査でどう評価されるか。金融機関によって基準は大きく異なります。②減価償却の残年数:築年数によっては、税務上の恩恵がほぼない状態で購入することになります。購入前に確認が必要です。③10年後の売却シナリオ:売り手として物件を見たとき、誰が買うか、いくらで売れるか。この想定が薄い物件は、保有期間中のキャッシュフローだけで評価しないほうが無難です。

Kさんは今、別のアセットも含めて比較検討中とのことでした。どんな結論を出すかはまだわかりませんが、「手が止まる感覚を無視しなかった」こと自体は、正しい判断だったと思っています。

よくある質問

築20年超の中古アパートは、減価償却の面で不利ですか?

木造アパートの法定耐用年数は22年です。築22年を超えた物件は「中古資産の耐用年数」として計算されるため、残存耐用年数が短くなります。1年あたりの償却額は大きくなるケースもありますが、節税効果の「持続期間」も短くなります。購入目的によって評価は変わりますので、税理士への確認をおすすめします。

既にアパートを1棟保有している場合、2棟目の融資審査は厳しくなりますか?

一般的に、既存ローンの残債が多いほど、次の融資では返済負担率や担保余力の評価がシビアになる傾向があります。ただし金融機関によって審査基準は大きく異なります。地方銀行・信用金庫・ノンバンクで条件が変わることも多く、複数行への打診が有効なケースもあります。

中古アパートではなく別アセットへの分散を検討する場合、何から始めればいいですか?

まずは「自分の融資余力がどの程度残っているか」の確認から始めることをおすすめします。その上で、各アセット(トレーラーハウス、商業用不動産、太陽光など)の収益構造・流動性・節税効果を比較すると、現在のポートフォリオとの相性が見えやすくなります。情報収集の段階で無理に結論を出す必要はありません。