アパート経営の話になると、まず出てくるのが「利回り何%か」という数字です。表面利回りや実質利回りを比較して、8%あれば安全圏、5%以下は見送り——そんな判断基準をお持ちの方も多いと思います。ただ、その前提自体に見直しが必要なケースがあります。

「高利回り=優良物件」という図式は、なぜ現場で崩れるのか

不動産業界で長く言われてきた常識のひとつに、「利回りが高いほど良い物件」という考え方があります。数字だけ見ればそうなのですが、利回りが高い物件には、それなりの理由が存在するケースがほとんどです。

たとえば、表面利回り10%超の中古アパートが地方に出回っているとします。ところが購入後に修繕積立が追いつかず、給湯器交換・外壁塗装・共用部の設備更新が3年以内に重なり、実質的なキャッシュフローが想定の半分以下になった——私が仲介業務をしていた頃、こうした事例は珍しくありませんでした。利回りはあくまで「年間家賃収入÷物件価格」の計算式に過ぎず、空室率・修繕コスト・管理費・借入金利はすべてその外に置かれています。

正直に言うと、私自身も駆け出しの頃に「利回り9.2%」という数字に引っ張られて築22年の物件を強くすすめてしまい、購入後2年で屋根の防水工事が発生したお客様に申し訳ない思いをしたことがあります。「なぜこの利回りで売りに出ているのか」という問いを最初に立てていれば、見え方は変わっていたはずです。高利回りには売り急ぎの事情や、満室偽装のリスクが潜むことがあります。

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購入時の利回りより「10年後にいくらで売れるか」のほうが総収益を左右する

45歳で不動産投資を始める場合、投資期間は長くても20〜25年程度を想定するのが現実的です。となると、「10年後・15年後にいくらで売れるか」という出口の視点が、総合収益を大きく左右します。

モデルケースで考えると、購入時の表面利回りが7%でも、売却時に市場が利回り12%を要求する水準まで需要が落ちれば、物件価格は購入時の6割以下になる計算です(7÷12≒0.58)。逆に、多少利回りが低くても、需要が維持される立地であれば、売却時の価格が崩れにくいケースも想定されます。

「今の利回り」と「将来の換金性」は、場合によって逆方向に動きます。利回り一本で判断するのではなく、「買ったときより大きく崩れずに売れるか」という出口利回りの想定を、入口判断と同時に行うことをおすすめします。

節税目的でアパートを検討するなら、この順番で考えてください

法人税・所得税の圧縮を目的にアパート経営を検討される経営者の方には、まず「節税額」より「キャッシュフロー設計」を先に固めることをお伝えしています。減価償却を活用した所得圧縮効果はケースによっては有効ですが、それはあくまで本業で黒字が出ている場合の話です。

「節税ありき」で動いたとき、実際に何が起きるか

節税目的で利回りの低い物件を購入し、借入返済と管理コストで毎年赤字が続く——これは「損を出して税金を減らす」という構造です。節税にはなりますが、手元のキャッシュは確実に減ります。法人税を払うより手元にキャッシュが残るほうが健全、という当たり前の前提を、節税の話になると見失いがちです。

キャッシュフローと節税を両立させるには、物件の「構造」を先に選ぶ

現実的には、「ある程度のキャッシュフローを出しながら、減価償却でも所得を圧縮できる」物件構造を選ぶことが、資産防衛の観点では合理的です。木造の新築・築浅物件は耐用年数22年で減価償却が効くため、所得圧縮と賃料収入の両立が検討しやすいケースがあります。

たとえばトレーラーハウスのような木造2×4構造の投資物件の場合、1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します。あくまでモデルケースです)、減価償却を活用した資産計上の検討が可能です。ただし詳細は必ず税理士に確認してください。

「撤退できる構造か」を確認するのが、利回りより先にやるべきことかもしれない

不動産投資で経営者がつまずくパターンのひとつが、「売りたいときに売れない」流動性リスクです。アパートは株や投資信託と違い、即日換金ができません。地方の築古物件ともなれば、売り出しから成約まで1〜2年かかるケースも珍しくありません。

利回りの良し悪しを論じる前に、「この物件は出たいと思ったときに出られるか」を確認しておくこと。スピードと確実性を重んじる経営者にとって、これが実は最初に確認すべき軸だと考えています。利回りはその次の話です。

検討を始める前に、紙に書き出してほしい3つの数字

アパート経営の検討を始める前に、①自分の投資期間、②出口想定(いつ・いくらで売るか)、③年間キャッシュフローの目標値——この3つを先に書き出してみることをおすすめします。利回りという数字はその後、目標と照らし合わせる「ものさし」として使うものです。利回りから入ると、数字に引っ張られて判断がぶれやすくなります。

PACOでは、アパート経営やトレーラーハウス投資に関する情報を継続的に発信しています。投資勧誘ではなく、判断材料の整理を目的としたコンテンツですので、気になるテーマがあれば他の記事もご覧ください。

よくある質問

表面利回りと実質利回りは、どちらを重視すればいいですか?

実質利回りのほうが実態に近いですが、計算に含まれる費用の前提がケースによって異なります。管理費・修繕積立金・固定資産税・借入金利を含めた「手取りキャッシュフロー」を実際に試算してみることが、どちらの数字よりも判断の精度を上げます。

節税目的でアパートを買うのは間違いですか?

間違いとは言い切れませんが、節税額だけを見て購入を決めるのはリスクがあります。減価償却による所得圧縮効果はケースによっては有効ですが、キャッシュフローがマイナスであれば、節税より先に手元資金が減ります。節税はあくまで副次的な効果として位置づけ、キャッシュフロー設計を主軸に置くことをおすすめします。

地方のアパートは利回りが高いのに、なぜリスクと言われるのですか?

地方は人口減少が進んでいるエリアが多く、空室が埋まりにくい・家賃を下げないと入居者がつかない、というケースが発生しやすいためです。利回りが高いのは物件価格が低いからであり、その低さには需要の弱さが反映されていることがあります。購入前に人口動態・雇用環境・競合物件数を確認することが重要です。