区分2戸とアパート1棟を持ち、次の一手を考え始めたとき、「同じアセットをそのまま増やすべきか」という問いが頭をよぎるのは自然なことだと思います。中古アパートは表面利回りの数字が大きく見えやすい分、実質で何が残るかを丁寧に試算しないと、規模を増やしたつもりがキャッシュフローを薄めていた——というケースも珍しくありません。
「利回り8%」の物件、手残りはなぜ月5万円を切るのか
あくまで架空の試算ですので、実際は物件・エリア・融資条件で大きく変わります。この前提をご承知おきいただいた上で、具体的な数字を出してみます。
前提条件
物件価格5,000万円、木造築15年・8室、表面利回り8.0%(年間賃料収入400万円)。融資は金利2.0%・30年・フルローン。自己資金は諸費用分として約250万円を想定します。
年間収支の内訳
年間賃料収入400万円に対し、ローン返済が約222万円(元利均等)。管理費・修繕積立・火災保険等の運営コストを賃料の20%と見ると80万円。さらに空室損を10%と見込むと40万円のロスになります。残るのは約58万円、月換算では4,800円ほどです。
この数字を見て「それでも手残りはプラスだ」と感じるか、「250万円を諸費用に出してこの水準か」と感じるかで、判断は分かれます。私自身、仲介業時代に似た試算を繰り返してきましたが、投資家が最初に想像する数字と実態の差が最も開くのが、「運営コスト」と「空室損」の二重のロスです。かつて私も「管理費は5%もあれば十分」と高をくくっていた時期があり、実際に入居者トラブルが重なった年に修繕費が想定の2倍近くかかって、試算の前提を根本から見直すことになりました。
築15年の物件を買うとき、10年後の修繕費は試算に入っているか
築15年を超えると外壁・屋根の大規模修繕が視野に入ります。規模・仕様によりますが、築20年前後で1棟あたり500万〜1,000万円規模の支出が発生するケースもあります。前述の試算では修繕積立を月々の費用に含めましたが、実際に積み立てていない場合、このタイミングでキャッシュが一気に飛ぶことになります。
既に1棟保有されているなら、この感覚はご存じのはずです。問題は「2棟目でもリスクが2倍」という単純な話ではなく、築年数のタイミングが近い物件を複数持つと、修繕が重なる時期に手元流動性がタイトになるという点です。ポートフォリオとして見たとき、築年数の分散という視点も持っておく価値があります。
「利回り8%で買った物件」が10年後に「利回り12%でないと売れない」水準になるとき
中古アパートで「次の手」を考えるとき、買い時と同じくらい「売り時」の想定が重要です。木造の法定耐用年数は22年ですので、築15年で買った物件は残存耐用年数が7年になります。この状態では次の買主がローンを引きにくくなるケースがあり、売却価格が下がる要因の一つになります。
エリアの人口動向と賃貸需要を丁寧に見ておかないと、空室率が上がった状態で売り場を逃すリスクもあります。「利回り8%」で買ったものが、10年後に「利回り12%でないと投資家に売れない」水準になっていた場合、売却価格は大幅に下落します。モデルケースとして、年間賃料収入が10%落ちた状態(360万円)で利回り12%を求められると、想定売却価格は3,000万円——購入価格から40%下落という試算になります。出口を想定してから買うかどうかを判断する、という順番が重要です。
同じアセットを増やすのと別アセットを加えるのと、今の自分のポートフォリオはどちらを求めているか
3棟目のアパートを買うことで得られるのは、管理の慣れと規模の効率化です。一方でリスクの集中も進みます。エリアが近ければ、景気変動・自然災害・人口減少の影響を一度に受けることになります。
分散という観点で言えば、異なる収益モデルのアセットを加えることで、リスクの重なりを減らせるケースがあります。たとえばPACO INVESTが手がける木造2×4構造のトレーラーハウス型投資物件は、Airbnb等の短期宿泊での運用を前提としており、長期賃貸とは異なるキャッシュフロー構造を持ちます。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下します)、アパート1棟とは異なる単位感で組み込める点を、比較検討の材料として挙げておきます。
3棟目を買う前に、今持っている1棟の「手取りキャッシュ」を再計算する
規模拡大か分散かという問いの前に、現在保有している1棟の実質手残りを再計算することをお勧めします。管理費・修繕費・税金・ローン返済を引いた後の手取りキャッシュが年間いくらで、それが投下資本に対して何%かを把握するだけで、次の物件に求めるハードルが整理されます。
私自身、仲介業から投資家側に回って最初に驚いたのは、「帳簿上の利回り」と「実感するキャッシュ」のギャップでした。数字に厳しい方ほど、このズレを自分の手で検証してから動くと判断の精度が上がります。焦って3棟目を増やすよりも、今持っているものの数字を丁寧に見直す時間の方が、結果的に次の投資判断を速くする——というのが、私の経験からくる感覚です。
よくある質問
中古アパートの「表面利回り」と「実質利回り」はどれくらい差がありますか?
物件や運営状況によって異なりますが、管理費・修繕費・空室損・固定資産税等を差し引くと、表面利回りから2〜3ポイント程度落ちるケースが多く見られます。表面利回り8%であれば実質5〜6%台、さらにローン返済を加味した手残り利回りはそれ以下になることもあります。物件ごとに前提条件を揃えた試算が必要です。
築年数が古い中古アパートは、融資審査で不利になりますか?
一般的に、木造の法定耐用年数(22年)を大幅に超えた物件は、金融機関によっては融資期間が短くなったり、融資自体が難しくなるケースがあります。融資期間が短くなると月々の返済額が上がり、キャッシュフローが圧迫されやすくなります。金融機関の審査基準はそれぞれ異なりますので、複数行にあたって条件を比較することをお勧めします。
アパートとトレーラーハウス型投資を組み合わせることに意味はありますか?
長期賃貸と短期宿泊では収益の波形が異なります。長期賃貸は収入が安定しやすい一方、空室期間のダメージが大きく出ます。短期宿泊は稼働率によって収入が変動しますが、繁忙期に収益が伸びやすい特性があります。二つを組み合わせることで、リスクの性質が異なるキャッシュフローを持てる可能性はありますが、どちらも運営の手間や地域特性に左右されます。「分散すれば安全」と単純には言えない点はご留意ください。