iDeCoもNISAも始めた。でも、なんとなく物足りない——そんな感覚、ありませんか。老後2,000万円問題を意識したとき、積み立て投資だけでは「間に合うかどうか分からない」という不安が残ります。中古アパート投資はそこに踏み込む選択肢のひとつですが、数字の読み方を間違えると、思っていたものと全然違う結果になります。今回は、具体的な試算をもとに整理してみました。

「表面利回り8%」と「月の手残り」は、まったく別の話です

物件サイトに並ぶ「表面利回り8%」という数字は、年間家賃収入を物件価格で割っただけです。管理費・固定資産税・修繕積立・空室損失などを差し引いた実質利回りは、おおむね2〜4ポイント低くなるとイメージしておいてください。さらに、手元に残るキャッシュフローはローン返済を引いた後の金額なので、表面利回りとは別物です。

ここを混同したまま「表面利回り8%なら十分」と判断すると、実際に通帳を眺めたとき「あれ、思ったより残らない」という感覚になりがちです。筆者自身、最初の物件でこれをやりました。当時の反省をもとに、試算のロジックを丁寧に解説します。

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モデルケースで数字を分解してみます

以下はあくまでモデルケースです。物件の状態・立地・融資条件によって数字は大きく変わります。「こういう見方があるんだな」という参考程度にご覧ください。

前提条件(仮定)

・物件:築20年木造アパート4室(地方中核市・駅徒歩12分)
・購入価格:2,800万円
・表面利回り:7.5%(年間家賃収入 約210万円)
・融資:金利2.1%・期間25年・フルローン(自己資金は諸費用分のみ)
・年間ローン返済:約142万円

収支のざっくり内訳(年間)

年間家賃収入210万円から、まず空室損失を引きます。稼働率90%と仮定すると実収入は約189万円。そこから管理委託費(賃料の5%=約9.5万円)、固定資産税(推定10万円)、火災保険(約2万円)、修繕費積立(1室あたり月3,000円×4室×12ヶ月=約14.4万円)を差し引くと、ローン前の手残りは約153万円になります。ローン返済142万円を引くと、年間キャッシュフローは約11万円(月約9,000円)というイメージです。

「月9,000円のために不動産を持つの?」と感じる方もいるでしょう。その感覚は正直なところです。ただ、この試算が意味を持つのは節税と組み合わせたときです。次の節で掘り下げます。

帳簿上は赤字なのに、手元のキャッシュが増えるのはなぜか

木造建物の法定耐用年数は22年です。築20年の物件であれば残存耐用年数は短く、減価償却を短期間で大きく計上できるケースがあります。前述の前提で建物部分を1,500万円と仮定すると、残存耐用年数4年での償却額は年間約375万円(簡便法)。これを帳簿上の損失として給与所得と損益通算すると、課税所得を大きく圧縮できる可能性があります。

モデルケースとして、年収550万円の会社員(所得税・住民税の合計税率が約30%)が課税所得を300万円圧縮できれば、税負担の軽減効果は概算で約90万円。キャッシュフロー11万円+節税効果90万円で、経済的なインパクトは年間約100万円というイメージになります。ただし減価償却期間が終わると税務上の構造は変わります。そこをどう出口戦略と組み合わせるかが、中古アパート投資の設計上の核心です。税務の扱いは個人の状況により異なるため、必ず税理士に確認してください。

なお、筆者が見落としていたのは「償却が終わった翌年の税額の跳ね上がり」でした。4年後に急に手取りが減った感覚になり、慌てて出口を検討し直した経験があります。事前に出口のシナリオを複数用意しておくことを強くおすすめします。

「合う人」と「合わない人」を分けるのは、目的よりも覚悟の中身です

月々のキャッシュフローを大きく育てたいなら、中古アパートは即効性が高い手段とはいえません。修繕費が想定外に膨らめば一気に赤字になるリスクもあります。「節税で当面の税負担を抑えながら、長期的に資産を積み上げたい」という設計思想に合う方には検討の余地があります。

一方で、物件管理・入居者対応・修繕判断など、手間とリスクを自分で引き受ける覚悟があるかが問われます。会社員として本業を持ちながら、どこまで不動産に時間とエネルギーを使えるかを先に問うてみることが大切です。筆者が仲介経験を経て投資側に回ったとき、一番の誤算はこの「管理工数」でした。月に数時間のつもりが、入居者トラブルが重なった月は10時間以上費やしたこともあります。

次の小さな一歩として、まず源泉徴収票を手元に置いてください

自分の課税所得と税率を確認したうえで、不動産投資に詳しい税理士か、融資付けの実績がある不動産会社と30分だけ話してみてください。「買う前提」ではなく「試算を検証する前提」で動くと、得られる情報の質が変わります。

なお、PACOでは木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した別の投資モデルも扱っています(Airbnb評価4.8の運用事例あり)。アパートとは設計思想が異なるため、比較の軸のひとつとして参照いただくと、自分に合う選択肢が絞り込みやすくなるかもしれません。

よくある質問

中古アパートの購入に住宅ローンは使えますか?

住宅ローンは自己居住用の物件に限定されます。中古アパートの購入には不動産投資ローン(アパートローン)を利用するのが一般的です。金利・融資期間・審査基準が住宅ローンとは異なり、年収・自己資金の割合・物件の収益性が審査に影響します。将来の住宅購入計画との兼ね合いも含めて、早めに金融機関に確認することをおすすめします。

減価償却による節税は、ずっと続くのですか?

いいえ、減価償却は耐用年数の範囲内でしか計上できません。特に築古の木造物件は残存耐用年数が短い分、短期間に大きく償却できますが、それが終わると税務上の損失がなくなり、逆に課税所得が増えるケースがあります。売却時の譲渡所得税との兼ね合いも含め、出口のタイミングを事前に設計しておくことが重要です。

管理会社に任せれば、オーナーはほぼ何もしなくて済みますか?

日常的な入居者対応や家賃回収は管理会社が担いますが、修繕の最終判断・費用の支出承認・空室が続いた場合の家賃設定の見直しなどはオーナーの判断が必要です。「完全に任せきり」は現実的には難しく、通常月でも月数時間、トラブルが重なる月はそれ以上のオーナー業務が発生すると見ておくほうが現実的です。