区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきた方が次に直面するのは、「拡大か、分散か」という問いだと思います。アパート経営の世界では「棟数を増やすほどスケールメリットが出る」という考え方が根強くありますが、実際にアパート運用を経験した投資家の声を聞くと、その前提が崩れるタイミングが思ったより早く来るというケースが少なくありません。
「規模が大きいほど有利」——3棟目で金融機関の評価軸が変わる現実
アパート投資でよく語られる常識のひとつが、「棟数・戸数が増えるほど管理コストが下がり、収益が安定する」というものです。確かに、管理会社との交渉力や空室リスクの分散という観点では、複数棟保有に一定の合理性があります。
ただ、見落とされがちなのが「融資の出方が変わる」という問題です。1棟目、2棟目までは比較的スムーズに融資が通っても、3棟目以降は金融機関の審査軸が変わります。「総返済額に対する年収の比率」「既存物件の収益性評価」が厳しく問われ、表面利回り8〜9%に見える物件でも、金融機関の内部収益評価では6%台に圧縮されるケースがあります。数字に強い方ほど、この差をご存知のはずです。
手元の1棟を5年分並べ直したら、実質利回りは何%だったか
モデルケース(架空の設定)として、表面利回り8.5%のアパートを想定してみます。入居率の推移と修繕履歴を5年分並べると、実質利回りは5.5〜6%のあいだを行き来するという試算になりました(個別物件・条件によって異なります)。さらに、築年数が上がるにつれて大規模修繕の費用を積み上げると、売却時の出口価格がかなり読みにくくなる点も見えてきます。
こうした「表面と実質の乖離」は、管理会社から渡されるレポートを眺めているだけでは気づきにくいものです。月次キャッシュフローを自分で並べ直して初めて、空室損失と修繕費が思った以上に食い込んでいることが見えてくるケースがあります。編集部が取材した投資家の方からも、同様の気づきを得たという声を複数聞いています。
同じアセットクラスで棟数を増やすことは、この「読みにくさ」を複数同時に抱えることでもあります。1棟の収益が悪化したとき、他の棟の返済を圧迫するリスクはゼロではありません。「分散」と言いながら、実態はアパートという単一アセットへの集中になっていた——という状況は、複数棟保有者に共通して起こりやすい落とし穴のひとつです。
「撤退できない投資」に気づいたとき、ポートフォリオの選択肢は広がるか
アパートは一般的に出口が限られます。売却先は投資家か地主に絞られ、流動性は区分マンションより低い。築古になるほどその傾向は強まります。解体・更地化コストも決して小さくなく、「持ち続けるしかない」状態に追い込まれる前に、ポートフォリオ全体を俯瞰することが重要だと感じています。
ここで選択肢として検討される方が増えているのが、アパートとは異なる「移設・撤去が可能なアセット」です。PACOのトレーラーハウスは木造2×4構造で、Airbnb等の宿泊運用(PACO Stay)と組み合わせているケースもあります。1台あたりの初期投資は物件仕様・立地・付帯工事によって変動しますが、概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いようです(モデルケース。実際の金額はご相談ください)。アパートとの比較において「撤退の柔軟性」という観点は、慎重な投資家ほど評価される傾向があると感じています。
「次の一手」を探す前に、今の1棟で確認したい3つの数字
既存1棟の実質利回りを、入居率・修繕費・空室期間込みで再計算してみたことはありますか。年単位ではなく、月単位のキャッシュフローを並べ直すと、見えていなかった課題が出てくることがあります。「表面8%・実質6%を切っている」という物件が、追加投資の判断を保留させる主な理由になるケースは少なくありません。
具体的には、次の3点を数字で出してみることをお勧めします。①今日売ったらいくらか(査定ベース)、②残債と売却価格の差はどうか、③10年後の大規模修繕費はどう積むか。この3つが揃って初めて、拡大か分散かを判断するための材料が整うと思っています。
まとめ——次の物件を探す前に、今の1棟の「10年後試算」を作り直す
アパート経営の規模拡大が悪いわけではありません。ただ、同じアセットクラスで積み上げることのリスクは、見えにくい形で蓄積されます。モデルケース(架空の設定)として、3棟目を検討している40代の投資家を想定したとき、まず確認すべきなのは2棟目の実質利回りです。その数字が出ていない状態で3棟目に進むのは、地図なしで高速に乗るようなものだと言えます。数字を並べてから動く順序が、結果的に判断の精度を上げます。
よくある質問
アパート複数棟とトレーラーハウス投資を比べるとき、一番の違いは何ですか?
大きな違いのひとつは「出口の柔軟性」です。アパートは築年数が上がるにつれて売却先が限られ、出口価格が読みにくくなる傾向があります。一方、移設・撤去が前提のトレーラーハウスは、土地の用途変更や事業の方向転換に対応しやすいという特性があります。ただし、どちらが優れているという話ではなく、ポートフォリオの中でどの役割を持たせるかによって判断が変わります。
実質利回りはどう計算すればいいですか?
基本的な計算式は「(年間賃料収入-年間諸費用)÷物件取得総額×100」です。諸費用には管理費・固定資産税・修繕積立・空室損失(入居率を掛けて試算)を含めるのが現実的です。表面利回りとの差が2〜3ポイント以上開く場合は、キャッシュフローの見直しが必要なサインとして捉えてもよいでしょう。なお、これはあくまでモデルケースの考え方であり、個別の物件・条件によって結果は異なります。
融資が通りにくくなる「3棟目の壁」は、どう対処できますか?
金融機関ごとに評価軸が異なるため、一概に「この方法で解決」とは言いにくいのが実情です。ただ、既存物件の収益実績(確定申告書)を丁寧に整理すること、返済比率を下げるために自己資金の入れ方を工夫すること、信用金庫・地銀・ノンバンクで複数打診してみること、といったアプローチが取られるケースがあります。融資条件は個人の属性・既存債務・物件評価によって大きく異なるため、専門家への個別相談を経た上でご判断ください。