iDeCoもNISAも始めた。それでも老後2,000万円には届く気がしない——そんな感覚を持ち始めた30代の方から、アパート経営についての質問をよく受けます。「利回りが高いと聞いたけど、実際どうなの?」という入口の疑問から、「節税効果って本当にあるの?」という踏み込んだ問いまで、Q&A形式で整理します。

「表面利回り8%」は、手元にそのまま残りませんよね?

これが最も多い質問です。結論から言うと、表面利回りは「年間賃料収入 ÷ 購入価格」の計算式で出た数字に過ぎず、実際の手残りとはかなりズレが生じます。固定資産税、管理委託料(賃料の5〜7%程度が相場)、修繕費、火災保険料、空室期間——これらを差し引いた実質利回りに直すと、表面から1〜3ポイント落ちるケースが多いです。

私自身、最初に見た提案書の「表面8%」に目が眩んで、諸経費の試算が甘かった経験があります。特に築古物件は修繕費が読みにくく、1回の外壁塗装(モデルケースで80〜150万円程度)で年間収支が吹き飛ぶことも珍しくありません。数字を見るときは「何が含まれていて、何が抜けているか」を確認する癖をつけてください。

年収550万円で融資は通りますか? 自己資金の現実的なラインは?

融資条件は銀行・物件・申込者の属性によって大きく変わるため、「○○万円あれば確実」とは言えません。ただ、会社員で安定した給与収入があることは審査で評価されやすく、住宅ローンがまだない状態であれば借入枠に余裕があるとみなされるケースもあります。

「自己資金ゼロで始められる」という謳い文句には注意が必要です。フルローンに近い状態では月々のキャッシュフローが薄くなり、1室空室が出ただけで即マイナスになるリスクがあります。モデルケースとして、物件価格の5〜10%程度(2,000万円の物件なら100〜200万円)は諸費用として手元に置いておくのが現実的な感覚です。

「節税になる」の仕組み、減価償却の落とし穴まで教えてください

不動産投資で語られる節税の多くは、減価償却を使った所得圧縮です。建物部分は法定耐用年数に応じて毎年一定額を経費計上できるため、賃料収入があっても帳簿上の不動産所得を圧縮し、給与所得と合算した課税所得を下げる効果が想定されます。年収550万円前後の会社員は税率の境目(所得税20%と23%の分岐点付近)に近いこともあり、この効果が比較的出やすい層とも言われます。

ただし、減価償却は「課税の繰り延べ」です。売却時に減価償却分が取得費から差し引かれ、譲渡所得が増えるという逆効果が起こり得ます。節税目的だけで物件を選ぶと出口でつまずくケースがあるため、税理士への相談は購入前に済ませておくことをお勧めします。

アパート以外の選択肢と比べたとき、何が違うのですか?

比較は必ずしたほうがいいと思っています。たとえば私が取材・運用に関わっているトレーラーハウス(PACO INVESTが手がける木造2×4構造タイプ)は、固定資産として登記されない仕様を取ることが多く、アパートとは異なるコスト構造を持っています。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(モデルケース)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。

Airbnb等の短期運用(PACO Stayとして展開)との相性もよく、評価4.8以上の運用実績が出ているケースも確認していますが、立地や季節需要に大きく左右される点はアパートと同様です。アパートが「長期賃貸で安定を取る」選択肢だとすれば、トレーラーハウスは「稼働率で攻める」選択肢に近い。どちらが合うかは、運営にどの程度関わりたいかによって変わります。

最初の一歩として、物件より先にやるべきことがあります

投資を始める前に後悔が減ること、それは「自分のキャッシュフロー表を1枚作ること」です。年収・手取り・毎月の支出・貯蓄額を把握していない状態で融資審査や物件選びに進むと、判断基準がブレます。ここを整理するだけで、「どのくらいの規模感なら無理なく始められるか」が見えてきます。

利回りの数字は後からいくらでも出てきます。自分の財務の土台を確認してから物件を見に行く順番をお勧めします。32歳なら、時間は十分あります。

よくある質問

表面利回りと実質利回り、どちらを判断基準にすべきですか?

物件を比較する入口として表面利回りを使うことはありますが、意思決定の基準は実質利回りに置くべきです。管理費・修繕積立・税金・空室想定を差し引いたうえで、それでもキャッシュフローがプラスになるか確認することが基本です。あくまでモデルケースの試算であり、実際は個人の条件により異なります。

築古アパートは利回りが高いのに、なぜ敬遠されるのですか?

表面利回りが高い理由のひとつは、価格が下がっているからです。ただ、価格が下がっている背景には「修繕コストの重さ」「融資が引きにくい」「売却時の買い手が少ない」といった要因が含まれています。高い数字の裏にあるリスクを読む習慣が、築古物件を扱う際には特に必要です。

節税目的でアパートを買うのは、現実的ですか?

節税効果そのものは実在しますが、節税「だけ」を目的にすると出口で損をするケースがあります。減価償却で所得を圧縮した分は、売却時の譲渡所得として課税されることがあるためです。「節税しながら資産を増やす」ためには、売り時も含めた長期シナリオを購入前に描いておくことが大切です。税理士への相談も早めに動いてください。