相続で引き継いだ郊外の遊休地、固定資産税だけが毎年出ていく状況はじわじわと重くなります。「中古アパートなら利回りが高い」という話を耳にして、有効活用の選択肢として検討している方も多いと思います。ただ、その「常識」に少し待ったをかけさせてください。

「利回り8〜10%の中古」は、なぜ実際のお金と食い違うのか

不動産業界では長らく「新築より中古のほうが利回りが高くて割安」という通説が根付いています。確かに表面利回りの数字だけを見れば、中古アパートが新築を上回るケースは珍しくありません。8〜10%という数字が提案書に並ぶことも、よくある光景です。

ところが、実際のキャッシュフローを追いかけると話が変わってきます。中古アパートの「高利回り」は、修繕リスクと空室リスクを数字に織り込んでいないことが多い。賃貸仲介の現場で「表面8%、実質6%超え」をうたう物件を何十件と見てきましたが、5年後も同じ数字が出ていたケースはほとんど記憶にありません。むしろ、最初に「これは堅い」と思った築22年の木造アパートが、購入3年目に給排水管の全面更新で約180万円(モデルケース相当)の出費を迫られた事例を複数見ています。提案書の数字を信じ込んでいた自分の甘さを、そのとき痛感しました。

築年数が上がるほど、見積もりに出てこないコストが積み重なる

中古アパートで想定外の出費として現れやすいのは、給排水管の更新、外壁塗装、屋根防水、エレベーターのある物件なら保守費用などです。築20年を超えた物件では、購入後5〜10年以内にこれらが重なるケースがあります。「物件の築年数・構造・直近の修繕履歴」を必ず確認する必要がありますが、売り手がこれを正確に開示するかどうかは、また別の問題です。

さらに郊外立地の場合、入居者の需要そのものが都市部より細い。空室が1部屋増えるだけで実質利回りが一気に下がります。たとえば「8部屋・満室・家賃6万円」を前提にしたモデルケースで表面利回り8%の物件が、1〜2部屋の空室が出た瞬間に実質5%台へ落ちることは珍しくありません(あくまで試算であり、実際の数字は物件・立地・管理状況で変わります)。

相続対策に使うなら、20〜30年後の「出口」を先に描けるか

賃貸用建物は相続税評価額が下がりますし、土地も貸家建付地として評価減が想定されることがあります。ただ、中古アパートの場合、20〜30年後の「出口」がきわめて読みにくい。

次の相続が発生したとき、築40年超えのアパートが次世代にとって資産になるか、負債になるか。解体費用も含めると、相続対策として使ったはずの物件が逆に重荷になるシナリオは珍しくありません。「土地の有効活用=アパートを建てる」という図式は、出口戦略が描けないまま進めると危険なことがあります。

55歳からの判断で、「撤退できるか」を同じ重みで問う理由

これは中古アパート投資の全否定ではありません。立地・築年数・修繕歴・融資条件が噛み合えば、十分に機能するケースもあります。ただ、55歳という年齢で20〜30年の運用を前提にした投資判断を迫られる局面では、撤退のしやすさ・流動性の高さも同じ重みで検討する必要があると感じています。

たとえばトレーラーハウス(PACO INVESTの木造2×4構造)は、「移設・撤去できる」という特性が意外と精神的な余裕につながります。遊休地を使いながら、土地を長期間縛らずに運用できる選択肢として、アパートとは異なる検討軸になり得ます。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが(物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により変動するモデルケースです)、中古アパートの初期費用と並べて比較する価値はあるかもしれません。

今日できる一歩:提案書の利回りを「実質ベース」に引き直す

今すぐ動く必要はありません。検討中の物件があるなら、提案書の利回りから「空室損失5〜10%・修繕積立費・管理費・固定資産税」を差し引いた実質利回りを自分で計算してみてください。そこで出てきた数字が、毎年かかる固定資産税の重さを本当に解消できる水準かどうか。その確認が、判断の土台になります。

よくある質問

中古アパートと新築アパート、どちらが相続対策に向いていますか?

一概には言えませんが、相続税評価の圧縮効果自体は新築・中古ともに想定されることがあります。ただし中古は修繕コストと出口時の評価下落リスクを織り込む必要があります。次世代への引き継ぎやすさ(流動性・解体費用)も含めて、税理士と不動産の両面で試算されることをお勧めします。

郊外の遊休地に中古アパートを取得する場合、融資条件はどうなりますか?

融資条件は金融機関・物件・申込者の属性によって大きく異なります。郊外立地や築古物件の場合、担保評価が低くなり融資期間が短くなるケースがあります。融資期間が短いと月々の返済額が増え、キャッシュフローが圧迫されることがあるため、複数の金融機関に打診するのが現実的な手順です。

遊休地の有効活用として、アパート以外の選択肢はありますか?

駐車場・トランクルーム・コンテナ倉庫・トレーラーハウスなど、建物を建てずに済む活用法や、建ててもコストを抑えられる選択肢があります。それぞれ収益性・固定資産税への影響・撤退のしやすさが異なります。土地の形状・接道状況・地域の需要に応じて比較検討されることをお勧めします。