区分マンション2戸、アパート1棟。ここまで積み上げてきた方ほど、次の選択で慎重になるはずです。規模を広げてアパートをもう1棟買うのか、まったく異なるアセットで分散するのか。この記事では、拡大か分散かの判断軸を整理します。

「表面利回り9.2%」に飛びついて、180万円の修繕費を見落とすケース

モデルケース(架空の設定)として、次のような事例を考えてみます。表面利回り9.2%、築12年、駅徒歩8分。数字だけ見れば悪くない案件です。

ところが買付後の調査で、1階の2部屋に水回り老朽化の兆候が見つかりました。工務店に概算を出してもらったら、2部屋合計で180万円超。当初の試算にまったく入っていなかった費用です。「表面利回りが高いほど、なぜこの値段で売られているのかを疑う」という視点が、勢いのなかで抜け落ちていた例です。結果として実質利回りは6%台に落ち、ローン返済後の手残りは当初想定の半分以下になりました。

拡大を急ぐあまり、デューデリジェンスの解像度が下がる。こうした落とし穴は珍しくありません。

3棟目を検討する前に、この2つの数字を確認したか

既に物件を保有している方には釈迦に説法かもしれませんが、あえて整理します。築15年を超えた木造物件では、外壁・屋根・水回りの修繕サイクルが重なりやすく、年間維持費が家賃収入の15〜20%を超えるケースがあります(物件状態・地域によって差があります)。表面利回りと実質利回りの乖離は、この修繕サイクルの読み違いから生じることが多いです。

もう一点、融資条件の変化も見ておく必要があります。1棟目・2棟目と物件を重ねると、金融機関から見た「与信の使い方」が変わります。例えば38歳・年収800万円のサラリーマン投資家であれば、3棟目の融資で金利が上がる、あるいは返済負担率が上限に近づくという状況は十分に起こりえます。拡大を決める前に、現在の担当者に「次の借入余力」を率直に確認することをお勧めします。

「分散」は後退ではなく、リスクの種類を変える選択

アパート経営の横展開ではなく、別アセットへの分散を検討するとき、「今までのやり方を捨てる不安」を感じる方は多いです。ただ、同じアセットを積み増すことにはエリアリスクや構造リスクの集中という問題があります。収益の出方がまったく異なる資産を1つ持つことは、ポートフォリオの耐性を高める場合があります。

例えばトレーラーハウス(PACO INVESTの木造2×4構造)は、Airbnb等の短期賃貸での運用を前提とした設計です。アパート経営とは収益構造がまったく異なり、長期入居者の退去リスクよりも稼働率と宿泊単価の管理が主な変数になります。「どちらが優れているか」ではなく、「リスクの出方が違う」という理解が出発点です。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース・試算前提)、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事によって上下します。

「次を買う前に、今を整理する」という順序が結局は早い

拡大か分散かの議論と並行して、既存物件の出口戦略を一度点検することも有効です。アパート1棟については、築年数・残債・エリアの需給バランスによって「今売るべきか、もう少し保有すべきか」の判断が数年単位で変わります。含み益が出ているなら、そのキャッシュを次の投資の原資にする選択肢も現実的です。

編集部が取材を通じて把握している事例では、焦って3棟目に手を伸ばした結果、既存物件の管理に割く時間と頭が分散し、全体のパフォーマンスが一時的に落ちたケースが複数あります。拡大そのものが間違いなのではなく、タイミングと対象の選び方が問われます。

まず1枚の表から始める

手元の融資残高・返済比率・既存物件の実質収支を1枚の表に整理してみてください。「拡大できる余力がどこまであるか」が可視化されるだけで、判断の精度は変わります。そのうえで、同アセットの横展開か別アセットへの分散かを比較する材料を集める。その順序が、多くの投資家にとって有効に機能します。

よくある質問

アパート1棟を保有している状態で、追加融資を受けるのは難しくなりますか?

金融機関によって審査基準は異なりますが、既存物件の収支状況・残債・返済負担率が次の融資可否に影響するケースがあります。地方銀行や信用金庫では、既存の取引実績が評価されることもあります。まず現在の担当者に「借入余力の確認」という形で打診してみることが、現状把握の第一歩になります。

アパート経営と短期賃貸(Airbnb運用)を並行するのは管理が大変ではないですか?

アパート経営は長期入居者との関係管理・退去対応・修繕手配が主な業務です。短期賃貸は稼働率と口コミ管理が中心になります。業務の性質が異なるため、どちらか一方に集中するより、管理を外注できる体制を整えることが現実的な運用のカギになることが多いです。PACO Stayのような運用サポートを組み合わせるケースもあります。

トレーラーハウスへの投資は、アパート経営と比べてどういった点が異なりますか?

大きな違いは「移動・撤去できる」という物理的な特性です。アパートは土地と建物が一体で固定されますが、トレーラーハウスは設置場所の変更が可能な場合があります。エリア選定のミスをある程度修正できるという点でリスクの出方が異なります。一方、短期賃貸市場の需給変動や法令対応など、別種のリスクも存在します。「リスクの種類が違う」という前提のうえで比較検討されることをお勧めします。