法人税対策として不動産投資を検討し始めると、真っ先に目に飛び込んでくるのが「アパート経営 利回り〇%」という数字です。年収1,800万円クラスになると、提案を持ち込む業者も一気に増えてくる。私自身、初めて提案書を受け取ったとき、「表面8%なら悪くない」と直感的に思ってしまいました。ところが自分で試算してみると、手残りの水準が想定の半分以下だったというのが正直なところです。その過程で気づいたことを、モデルケースを交えながら整理してみます。
「表面8%」の裏側に、4つのコスト漏れが潜んでいる
アパート経営の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」があります。表面利回りは「年間満室想定収入 ÷ 物件取得価格」で計算されるシンプルな数字。ただし、キャッシュが手元に残るかどうかは、ここから複数の費用と税金を引いた後の話です。
見落とされやすいのが次の4つです。管理委託費(家賃の5〜10%)、修繕積立(築年数によっては月5〜10万円規模)、固定資産税・都市計画税、そして融資を使った場合の元利返済。これらを考慮せずに判断すると、実態との乖離が生じやすくなります。
同じ前提で並べると、手元に残るのは月9万円だった
以下はあくまでモデルケースです。物件差・個人差が大きい点は最初にお断りしておきます。
モデルケースの前提条件
物件:築10年・木造アパート8室、取得価格6,000万円(土地込み)/表面利回り8%(年間満室想定家賃収入480万円)/自己資金1,200万円・借入4,800万円(金利2.0%・返済期間25年)/空室率10%想定/管理委託費:家賃収入の7%
収支の内訳(年間・モデルケース)
実際の家賃収入(空室10%控除後):432万円。ここから管理委託費30万円、修繕積立・保険料などランニングコスト30万円、固定資産税・都市計画税20万円を引くと純収益は352万円程度。借入返済(元利合計)が年約244万円になるため、税引き前のキャッシュフローは年約108万円、月換算で9万円ほどになります。
表面利回り8%でも、融資・空室・コストを乗せると手残りはこの水準に収まることがある、というのが一つのリアルです。空室率が下がれば改善しますし、金利や返済期間次第でも変わります。提案書の数字だけで判断せず、自分の条件を当てはめた試算を先に持っておくことが重要です。
減価償却で「節税できる」は本当か——キャッシュとのズレを先に知っておく
年収1,800万円クラスで不動産投資を検討する理由の一つが、減価償却を活用した所得圧縮です。木造アパートの法定耐用年数は22年。築10年の中古であれば残耐用年数12年で償却でき、短期間に多額の経費計上が可能になるケースがあります。
ただし、減価償却は帳簿上の経費であり、実際にお金が出ていくわけではありません。一方で、元本返済は経費になりません。この「税務と資金繰りの非対称性」を理解せずに節税効果だけで動くと、後年に帳簿黒字・手元薄という状態になることがあります。売却時には減価償却分が譲渡所得として課税される点も含め、税理士との事前シミュレーションは必須です。
出口から逆算しないと、売れない物件を抱えるリスクがある
購入時の利回りだけでなく、「いつ・いくらで売れるか」の試算を先に持っておくことをお勧めします。地方の木造アパートは築古になるほど担保評価が落ち、売却時に残債を下回るリスクが出てきます。スピードと確実性を重視する経営者ほど、出口戦略を先に描いてから購入判断に入る傾向があります。
比較軸の一つとして、トレーラーハウスを活用した宿泊事業型投資(当サイトが扱うPACO INVESTのような事例)があります。1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多く(モデルケース・物件仕様や立地により上下)、Airbnb等の宿泊需要と組み合わせることで異なる利回り構造を持つ選択肢として比較されることがあります。アパート一択ではなく、複数のアセット特性を並べて判断する視点が、資産分散の実効性を高めることがあります。
今すぐできる一手は、自分の数字で試算を一度回すこと
提案を受けた物件があるなら、まず「実質利回り試算」を自分の手でやってみてください。空室率10%・管理費7%・修繕費1%を乗せた上で、借入条件を当てはめる。その手残り額が現在の節税ニーズと手間に見合うかどうか——その判断は、数字を並べた後でないと本質的にはできません。提案書の利回りを鵜呑みにせず、一棟目の試算精度を上げることが、結果として最速の意思決定につながるケースが多いです。
よくある質問
表面利回りと実質利回りの差は、一般的にどのくらいになりますか?
物件や融資条件によって大きく異なりますが、管理費・修繕費・税金・空室損失などを織り込むと、表面利回りから2〜3%程度下がるケースが多く見られます。さらに融資の元利返済を考慮したキャッシュフローベースでは、表面利回り8%の物件でも実効的な手残り率が3〜4%台になることも珍しくありません。あくまで参考値であり、条件次第で上下します。
年収1,800万円の場合、アパート投資の減価償却効果はどの程度見込めますか?
所得税・住民税の実効税率が50%前後になる水準では、減価償却による所得圧縮の効果は相応に大きくなります。ただし、効果の大きさは物件の構造・築年数・取得価格の土地建物比率によって変わるため、購入前に税理士と具体的なシミュレーションを行うことを強くお勧めします。減価償却はあくまで課税繰り延べであり、売却時に譲渡所得として課税される点も含めて判断が必要です。
不動産投資が初めての場合、アパートとトレーラーハウス投資はどう使い分けるとよいですか?
一概には言えませんが、アパートは長期安定・融資活用に向いている反面、管理・修繕・出口戦略が複雑になりやすい側面があります。一方、トレーラーハウスを使った宿泊型投資は初期投資の規模を抑えながらテストできる可能性があるものの、稼働率が収益に直結するため運営の質が問われます。どちらが合うかは投資目的・手間の許容量・出口イメージによって変わるため、双方の試算を並べて比較することが有効です。