「固定資産税の通知が来るたびに、この土地をどうにかしなければと思うんです」——そういう相談を、50代の地主さんから受けることが増えています。相続で受け継いだ郊外の遊休地。放置するのも忍びないし、かといって何が最善かわからない。中古アパート投資は有力な選択肢の一つですが、飛びつく前に確かめておきたいことがいくつかあります。
「土地を持っている」は、本当に有利な出発点か——担保評価の落とし穴
土地を自分で持っている場合、建物だけを取得すれば済むため、融資総額を抑えやすいと言われることがあります。ただ、これには条件があります。金融機関が「その土地に担保価値を認めるかどうか」です。郊外の遊休地は、路線価がついていても担保評価が低く設定されるケースがあり、想定より融資条件が厳しくなることもあります。
また、「土地がある=コストゼロ」ではありません。土地の取得コストを機会費用として考えると、その土地を売却した場合の手取り額が「投資の比較対象」になります。たとえば郊外の土地が売却時に手取り1,800万円になるなら、中古アパートの累計収益がそれを上回るかどうかを先に試算することが出発点になります。「土地があるから有利」という思い込みで進めると、後から計算が合わなくなるケースがあります。
「固定資産税の節約」だけを目的にすると、どこでつまずくか
住宅用地には固定資産税の軽減措置があります。更地のままより、住宅を建てることで課税評価が下がるケースは確かに存在します。ただ、「節税のために建てた」アパートで空室が続くと、節税額をはるかに超える損失が生じることがあります。
賃貸仲介の現場にいた頃、「節税目的で建てたが入居が決まらない」という大家さんを何人も見てきました。当時、私自身もその深刻さを軽く見ていたことがあり、後から「もっと需要調査の話をすべきだった」と反省した経験があります。郊外エリアは特に、賃貸需要の調査が甘いと悲惨なことになります。固定資産税の圧縮効果は副産物と考え、「そのエリアで本当に入居者が集まるか」を主軸に判断するのが現実的です。
中古アパートと新築アパート、55歳の地主にはどちらが向いているか
中古アパートは取得価格が抑えられる分、表面利回りが高く見えることがあります。一方で、築年数によっては修繕費が重なり、実質手残りが圧縮されるリスクがあります。新築は初期投資が大きいですが、当面の修繕コストが読みやすく、融資も組みやすい傾向があります。
55歳という年齢から逆算すると、融資の返済期間に制約が生じるケースがあります。たとえば30年ローンを組むと完済時は85歳になります。金融機関によっては完済時年齢の上限を設けているところもあり、融資可能な期間が短くなると月々の返済額が増え、手残りが薄くなることがあります。モデルケースとして、築20年の木造アパートを4,000万円で取得し、25年ローン(金利2%)を組んだ場合、月々の返済額は概ね17万円前後になる想定です。表面利回りが8%でも、修繕積立・管理費・空室損を差し引くと実質利回りは4〜5%台になるケースも少なくありません。複数の金融機関に当たり、返済期間と月次キャッシュフローを必ず試算してください。
相続税対策として「アパート」は今でも有効な手段か
アパートを建てると、土地は「貸家建付地」として、建物は「貸家」として相続税評価額が下がる仕組みがあります。現在も有効な手法ですが、2017年以降、相続税対策目的の過剰なアパート建設が問題視され、一部地域では空室率が深刻化しています。「節税になるから」という理由だけで建てた物件が、次の世代への負の遺産になるケースも出ています。
相続税の圧縮効果が出るのは、あくまで賃貸として機能している状態が前提です。空室が増えると評価額の圧縮も限定的になります。税理士との連携のうえで、収益性と相続税対策を両立できる構造かどうかを確認することが、遠回りのようで一番確実な道です。
では、何から始めるのが現実的か
まず「土地の賃貸需要調査」と「複数の融資打診」を先に行うことをおすすめしています。計画を立てる前に、地元の不動産会社数社に賃料相場と空室率を聞いて回るだけで、見えてくるものがあります。提案書の数字は作れますが、現地の感触は現地でしか掴めません。
なお、弊社が扱うPACO INVESTのようなトレーラーハウスを使った投資は、建物の構造や撤退のしやすさが中古アパートとは異なります。ご興味があれば別の記事もご覧いただければと思いますが、今回は中古アパートの文脈でお話ししました。どの選択肢も、まず「その土地で何が機能するか」から逆算することが大切です。小さな一歩として、まず地域の空室率を一つの不動産会社に聞いてみることから始めてみてください。
よくある質問
郊外の遊休地でも、中古アパートの融資は通りますか?
土地の担保評価が低いエリアでは、融資審査が厳しくなるケースがあります。金融機関によって評価基準が異なるため、地方銀行・信用金庫・ノンバンクなど複数の機関に打診することをおすすめします。土地を持っているからといって融資が有利になるとは限らず、収益性の見通しと申込人の属性が重視されることもあります。
相続税対策でアパートを建てる場合、どれくらい節税になりますか?
評価額の圧縮幅は土地の路線価や建物の固定資産税評価額、借地権割合などによって異なります。「何割減る」と一概には言えず、個別の試算が必要です。税理士と連携のうえで、収益シミュレーションと併せて確認することを強くおすすめします。節税効果が出るのは、物件が正常に稼働していることが前提である点もご注意ください。
中古アパートの修繕費は、どのくらいを見込んでおけばよいですか?
築年数や構造によって大きく異なりますが、参考値として年間の修繕費に満室賃料の10〜15%程度を積み立てておくケースが挙げられることがあります(あくまでモデルケースであり、実際の積立額は建物状況によって変動します)。外壁・屋根・設備の状態によっては大きく上振れることがあるため、購入前に建物調査(インスペクション)を行い、10年単位の修繕計画を概算しておくことが重要です。