相続した土地をそのままにしておくと、固定資産税だけが毎年重くのしかかります。だからこそ「とりあえずアパート経営」という選択肢に引き寄せられる気持ちは、よくわかります。筆者自身、不動産仲介の現場で何十人もの地主を見てきましたし、自分でもその判断を誤った経験があります。今日はその話から始めさせてください。

表面利回り9.2%のアパートで、初年度の手残りが40万円を割った理由

30代後半に副業として始めたアパート経営で、筆者は埼玉県北部の郊外エリアに木造アパートを取得しました。表面利回りは9.2%、管理会社からは「近隣の空室率は低い」と説明を受けていました。ところが実際に運営を始めると、入居者が決まるまでに平均3〜4ヶ月かかり、1年目の実質稼働率は68%程度にとどまりました。

後から調べてわかったのは、その地域では人口が5年で約8%減少していたという事実です。管理会社が提示した「空室率の低さ」は過去のデータに基づいたもので、直近のトレンドとはずれていました。試算上では年間120万円前後の手残りを想定していましたが、設備修繕費も重なり、初年度の手残りは40万円を割り込みました(筆者の実体験。数字の前提条件によって結果は大きく変わります)。

見落としていたのは「空室率の地域差」ではなく、「管理会社が使っているデータの鮮度」でした。これは今でも反省しています。

「固定資産税の節税」だけを理由にアパートを建てると、10年後に何が残るか

土地にアパートを建てると、固定資産税の評価額が下がるのは事実です。住宅用地の特例が適用されるため、更地のままより税負担が軽減されるケースがあります。ただしこれは、アパートが一定の稼働率を維持できている前提の話です。

空室が増えれば家賃収入は落ちます。建物の減価償却が終わると節税効果も薄れます。築10〜15年を超えると、外壁塗装や給湯器の交換といった修繕費が本格化してきます。郊外の遊休地を「固定資産税対策」という動機だけで活用しようとすると、10年後に「税金は減ったが手残りも消えた」という状況に陥るリスクがあります。

郊外の土地が「稼げる資産」に変わるかどうかの見極め方

地方・郊外の土地活用で最初に確認したいのは、需要の質です。人口動態、周辺の競合物件の稼働状況、雇用の受け皿になる企業や施設の有無——この3点を現地と行政データで確認するだけで、判断の精度がかなり変わります。

アパート経営以外にも選択肢はあります。たとえばトレーラーハウスを使った宿泊投資(PACO INVESTが提供するような仕組み)は、建築基準法上の建物に該当しないため、固定資産税の課税対象になりにくいという特性があります(詳細は自治体の判断によります)。建物を定着させないため土地の転用が柔軟にできる点も、将来の相続や売却を考える地主にとって検討の余地がある理由のひとつです。初期投資は1台あたり概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されるケースが多いですが、物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下しますので、あくまで参考値として捉えてください(モデルケース)。

「建てる前に撤退できるか」を考えると、選択肢が広がる

アパートを一度建てると、土地は住宅用地として固定されます。賃貸需要が蒸発しても、建物がある限り更地には戻せません。戻せたとしても解体費用が発生します。一方、モバイル性の高い構造物や定期借地を活用した方法は、状況の変化に応じて出口を設計しやすい特性があります。

55歳で相続した土地を活用するなら、10年後・15年後に「手放したいと思ったとき」にどう動けるかも、初期の計画に組み込んでおくことをおすすめします。筆者の失敗のひとつは、この「出口」を考えずに走り出したことでした。

まず「土地の現状把握」から始めれば、焦る必要はありません

何かを決める前に、まず手元にある土地の固定資産税評価額、用途地域、周辺の人口推移データを確認してみてください。それだけで「アパートが合う土地か、別の活用が合う土地か」のおおよその輪郭が見えてきます。複数の選択肢を並べて比較するだけで、急いで決断しなければならない場面は思ったより少ないことに気づくはずです。投資の判断は、情報を揃えた後にゆっくりでいいと思っています。

よくある質問

郊外の遊休地でアパート経営を始めるとき、最低限確認すべき数字はありますか?

少なくとも「想定空室率を20〜30%に置いたときの手残り」と「築10年時の修繕積立を月1〜2万円/戸で加算したキャッシュフロー」を試算することをおすすめします。表面利回りだけで判断すると、実際の手残りが想定の半分以下になるケースがあります。数字はあくまで前提条件によって変わりますので、複数のシナリオで確認してください。

相続税対策としてアパートを建てることにはどんなリスクがありますか?

アパートを建てると土地・建物の評価額が圧縮され、相続税の負担が軽減されるケースがあります。ただし、相続した次世代が空室だらけのアパートを引き継ぐリスクも現実にあります。節税効果と運営リスクを切り離さずに考える視点が重要で、税理士・不動産の専門家と連携した上での判断をおすすめします。

トレーラーハウス投資は郊外の土地にも向いていますか?

観光需要・自然環境・周辺の宿泊施設の少なさといった条件が揃う郊外であれば、Airbnb等を通じた宿泊運用で一定の稼働が見込まれるケースがあります。ただし立地によって需要の質は大きく異なります。PACOの運用実績(Airbnb評価4.8の案件など)はあくまで特定条件下の事例であり、すべての立地で再現できるものではありません。現地調査と需要仮説の検証を先行させることが、判断の前提になります。