iDeCoもNISAも始めた。でも、なんとなく物足りない。そう感じている30代は、おそらく少なくないと思います。税制優遇の枠をフル活用しても、老後2,000万円問題へのアプローチとしては、どこか心もとない。そこで浮かんでくる選択肢のひとつが、中古アパート投資です。ただ、飛びつく前に一度、他の選択肢と並べて眺めてみることをおすすめします。

「とりあえず比べてみる」——5つの選択肢を同じ土俵に

資産形成の手段は大きく分けると、現金保有・定期預金・株式・REIT・不動産(アパート経営など)あたりが主な選択肢になります。それぞれ「流動性」「リターンの期待値」「手間」「節税効果」の4軸で整理すると、かなり性格が違うことが見えてきます。

現金保有と定期預金は安全ですが、今の金利水準ではインフレ負けのリスクが拭えません。株式やREITは流動性が高く少額から始めやすい一方、相場の波に感情が揺さぶられやすい。不動産は逆に、動かしにくい代わりに「家賃収入という現金フロー」と「減価償却という税務上の武器」を持っています。

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株・REITと何が違うのか——「税金の動き方」が逆転する

年収550万円の会社員にとって、投資の選択は「手元のキャッシュをどう増やすか」だけでなく、「毎年の所得税・住民税をどう動かすか」という視点でも変わってきます。株式やREITの分配金は基本的に源泉徴収で完結するため、給与所得との損益通算による節税効果はほぼ見込めません。

一方、中古アパートには減価償却という仕組みがあります。建物の取得価額を法定耐用年数に沿って費用計上できるため、実際のキャッシュアウトがなくても帳簿上の損失が生まれることがあります。この「帳簿上の赤字×給与所得の損益通算」によって、所得圧縮効果が想定されるケースがあります。ただし、適用条件や効果の大きさは個人の状況によって大きく異なるため、必ず税理士に確認することをおすすめします。

「中古」の旨みと、見えにくいコストの話

新築アパートと比べると、中古アパートは購入価格を抑えやすく、表面利回りが高く見えやすい傾向があります。編集部が収支シミュレーションを調べていて繰り返し目にするのが、修繕費と空室リスクの読み方の問題です。最初に収支シミュレーションを組む際、修繕積立をゼロで計算してしまい、後から数字を入れ直すと実質利回りが一気に2ポイント近く落ちる——そういったケースが報告されています。築年数が経過した物件ほど、給湯器・外壁・屋根まわりの修繕コストが突然のしかかってくるので、楽観的な前提は禁物です。

たとえば「築22年・木造・8室・満室家賃収入60万円/月」の物件をモデルケース(架空の設定)として試算してみます。表面利回り8%に見えていても、空室率10%・管理費8%・修繕積立5%・固定資産税・保険料を差し引いていくと、実質利回りは5〜6%台に落ちることが珍しくありません。実際の数字は物件・立地・築年数によって変わるため、あくまで参考値として捉えてください。

REITと比べると、「手間」と「コントロール」が逆転する

REITは証券口座から数万円で買えて、管理も不要。その点では圧倒的に手軽です。ただ、物件の選定・売却タイミング・融資条件——こういった意思決定はすべてファンド側に委ねることになります。アパート経営はその逆で、手間はかかるけれど、自分で判断できる余地が大きい。

融資を使って物件を取得する場合、自己資金の使い方や返済スケジュールも自分で設計できます。金利上昇局面では返済負担が変動するリスクも視野に入れておく必要があり、コントロールできる範囲が広いということは、責任の範囲も広いということです。

「自分はどちら向きか」——条件を整理すると見えてくる

中古アパートが候補に挙がりやすいケース

給与所得があり、減価償却を活用した所得圧縮効果を期待したい方。ある程度まとまった自己資金を持ち、10年単位で腰を据えて取り組める方。物件選定や融資条件の読み解きに時間をかけられる方。こういった条件が重なると、中古アパートは比較検討の俎上に載せる価値があるかもしれません。

株式・REITが現実的な選択肢になりやすいケース

まず流動性を確保したい方や、投資に使える時間が限られている方には、株式やREITの方が動きやすい選択肢になることが多いと思います。NISAやiDeCoとの組み合わせで非課税枠を最大活用しながら少額から積み上げていく戦略は、30代前半から始めるには十分に合理的です。

物件を買う前に、まず収支シミュレーションを自分で組んでみる

中古アパート投資に興味が出てきたなら、最初の一歩は「物件を買う」ではなく「収支シミュレーションを自分で組んでみる」ことだと編集部は考えます。表面利回りから出発して、空室・修繕・税金・融資返済を引いていくと、実質的な手残りがどこに落ち着くかが体感できます。「思ったより読み解けるかも」と感じる方もいれば、「自分には合わないかも」と気づく方もいます。どちらの気づきも、判断の精度を上げます。

なお、PACO INVESTではアパートとは異なる特性(動産扱い・固定資産税の扱いなど)を持つ木造2×4構造のトレーラーハウスを活用した投資情報も発信しています。初期投資は物件仕様・サイズ・立地・付帯工事により上下しますが、モデルケースとして概ね990万〜1,500万円のレンジで検討されることが多く、実際の金額は仕様や立地条件によって変動します。比較の参考にしていただければと思います。

よくある質問

年収550万円の会社員でも、中古アパートの融資は通りやすいですか?

一概には言えませんが、正社員・勤続年数・金融資産の状況などが審査に影響するとされています。年収550万円は融資審査の目線で「検討の土台に乗りやすい」水準と言われることはありますが、物件の担保評価や自己資金比率によって結果は変わります。複数の金融機関を比較する姿勢が、現実的な第一歩です。

減価償却による節税効果は、どれくらい見込めますか?

物件の構造・築年数・取得価額・個人の所得状況によって大きく変わります。木造の中古物件は法定耐用年数の残存期間が短いため、短期間で大きく減価償却費を計上できるケースがある一方、その後は効果が薄れます。「所得圧縮効果が想定されるケースがある」という理解にとどめ、具体的な試算は税理士に依頼することをおすすめします。

REITと中古アパートを両方持つことは有効ですか?

流動性の高いREITと、キャッシュフロー・節税効果を狙える実物不動産を組み合わせる考え方は、リスク分散の観点から一定の合理性があります。ただし、実物不動産の取得後は管理・融資返済・修繕の手間が生じるため、REITを積み増しながらアパートへの参入時期を慎重に見極める進め方も選択肢のひとつです。